冤罪で処刑されたら死に戻り、前世の記憶が戻った悪役令嬢は、元の世界に帰る方法を探す為に婚約破棄と追放を受け入れたら、伯爵子息様に拾われました

ゆうき

文字の大きさ
26 / 60

第二十六話 胸キュン

しおりを挟む
「大変申し訳ございませんでしたー!!」

 同日のお昼、急いでベッドから起き上がったあたしは、同じ部屋で研究をしていたアラン様に、勢いよく土下座をした。

 ああもう、話している時に寝落ちするのも論外だけど、アラン様のベッドを使わせてもらっちゃうなんて!
 ……でも、アラン様のベッド、ほんのりいい匂いがして、アラン様に包み込まれてる感じがして……その……えへぇ……って、これだとあたしが変態みたいだよ!

「立ったまま寝るとは、随分と器用な特技を持っているんだな」
「あ、あたしも自分でビックリしてます……アラン様が、あたしをベッドに運んでくれたんですか?」
「そうだ」

 それってつまり、アラン様に抱えられたってことだよね!? 肩を貸してくれたのか、おんぶしてくれたのか……それとも、お……お姫様だっことか!?

「ちなみにですけど……どうやって運んだんですか?」
「普通に運んだが」
「その普通の内容が知りたいんです!」
「それよりも、そろそろ研究を再開するぞ。手伝ってくれ」
「うぅ……は、はい」

 モヤモヤしつつも、アラン様と一緒に魔法の研究を始める。

「えっと……そういえば、この前は邪魔しないように読書してたので、アラン様の研究しているところをちゃんと見るのは初めてですね。どうやるんですか?」
「大まかに言えば、先人の知識を取り入れて、オリジナルの魔法を作る。例えば……」

 アラン様が軽く手を振ると、床に小さな魔法陣が二つ出てきた。その片方に、一冊本を乗せて見せた。

「知っているだろうが、転移魔法自体は、すでに先人が作り上げたものだ。だが、この魔法で転移できる距離の移動距離は短いし、転移できる物の大きさも限られている。それに、生き物を送ることができないのに、魔力の消費だけは立派に多いときてる」
「はい、それはあたしも知っています。だから、転移魔法は使い勝手の悪いものだって思ってました。現に、使ってる人を見たことがないですし」
「だから、これをベースにして、新たに魔法を作っている。それがこれだ」

 そう言うと、魔法陣の上に乗っていた本が消え、もう一つの魔法陣の上に現れた。
 ただ、その本はビリビリに引き裂かれ、見るも無残な姿に変わり果てていた。

「俺の魔法だと、どんな物でも転移することが可能で、座標がわかっていればどこでも魔法陣を作れるが、魔力による負担が大きくなってしまってな。結果、この程度の大きさでも大きく破損してしまうのが現状だ」
「なるほど……ちなみに、この本よりも小さいものなら大丈夫なんですか?」
「試しに実験用のネズミを転移したら、かなりボロボロになってしまったな」

 ネズミの大きさでそれだと、人間サイズの生き物を転移させたら……うぅ、考えただけでも鳥肌が……。

「もっと大掛かりな研究施設や人員、サンプルがあれば、飛躍的に進むだろうが……」
「バーンズ家の力で、なんとかならないんですか? 他の家と共同研究するとか」
「難しいな。表面上では協力してくれる人間はいるだろうが、裏では何をするかわからないし、どれだけ協力するかもわからない。はっきり言ってしまうと、足手まといにしかならない可能性が大きい」

 そ、そうだよね。アラン様は貴族の悪い部分をたくさん見てるんだから、協力なんて出来ないってわかってるよね。我ながら、なんともバカな質問をしちゃったな……。

「現状はこんな感じだ。一見すると手詰まりに見えるが、先日君が手伝ってくれたおかげで、進展出来そうなんだ」
「あたしのハーフエルフの魔力を注いだ時のですよね?」
「そうだ。あの後、君の魔力で変化した魔法回路を研究していたら、俺の知らないものになっていた。それを研究していけば、進展する可能性がある」

 汗水流して手伝ったことじゃないから、いまいち実感が湧かないけど、アラン様の力になれているなら良かった。

「……そういえば、どうして前々から転移魔法を研究しているんですか? ウィルモンド様から、民を守るための魔法と聞いたんですけど……他にも選択肢はありますよね?」
「そうだな。例えば、敵が何の前触れもなく攻めてきたとしよう。そこには平民しかいなくて、戦うことは到底不可能。そんな状況で、転移魔法があればどうなる?」
「一瞬で逃げられるとか?」
「そうだ。それだけじゃなく、離れた場所にいる兵士を即座に送り込めるし、武器や食料も届けられる。伝来を送ることも可能だし、敵をどこか別の場所に追い返すことも出来る」

 なるほど、そういう考え方は全く思いつかなかった。転移魔法一つでも、いろいろな考え方があるんだね。

「もちろん、もっと攻撃的な魔法にすることも出来たが……いくら敵と言えど、兄上のような怪我を負わせるのは、気が進まなくてな」
「やっぱりアラン様は、とても優しいですね」
「優しい? 違うな。俺はただの小心者だ。敵に情など持っていては、戦争で殺されても文句は言えない」
「あたしはそう思いませんよ。アラン様はお人好しと言われてもおかしくないくらい、優しい人です!」

 胸の前で握り拳を二つ作りながら、身を乗り出して力説すると、僅かながらも、あたしに笑顔を見せてくれた。

 よく見ないとわからないくらいの頬笑みは、あまりにも綺麗で……思わず胸がキュンとしてしまった。

「本当に君は、面白い人間だな。さあ、おしゃべりはここまでにしよう。ミシェル、今から渡すメモに書かれている本を探してくれないか?」
「…………」
「ミシェル? 聞いているか?」
「……あ、はい! なんでしょうか?」
「本を探してくれと頼んだんだ」
「本ですか!? わかりまし……って、何の本でしょうか?」
「今からメモを書いて渡す」

 うぅ……キュンキュンしてたら、完全にアラン様の話をスルーしちゃってたよ……これじゃあ、アラン様の助手失格だ。
 アラン様の目的を達成してもらうために、そしてあたしの目的を達成するためにも、ちゃんとアラン様を支えないと。

 そう思った直後、あたしがプレゼントした羽ペンを使っているアラン様の姿を見て、嬉しくてまたキュンとしてしまったのは、ここだけの秘密。

「この本だ。任せた」
「わかりました。えっと、これとこれと……ん?」

 本棚にしまわれた沢山の本の中から、目的の本を探していると、後ろからドサッ……ドサッ……と、何かが落ちる音が聞こえてきた。
 何となく嫌な予感を感じながら振り向くと、そこではアラン様が本棚から魔法で本を浮かせ、中身をサッと確認しては放り出すということを繰り返していた。

「アラン様! 何をしてるんですか!」
「メモに書き忘れた本で、一つ確認しておきたいものがあったんだが、どの本か覚えていないから、それらしい本を片っ端から調べている」
「調べるのは良いですけど、ちゃんと本は戻してください!」
「その辺りは、助手である君に任せる」
「あたしの動ける量に対して、散らかす速度が早すぎて無理ですよー!」

 どうやって短時間で部屋を散らかすのかと思ってたけど、これじゃあ散らかるのも無理はないよ! ああもう、また片付けないと……!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...