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第二十七話 自ら休息を!?
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バーンズ家で過ごすようになってから数日後。今日はアラン様がイヴァンさんが経営するお店、アルホに顔を出す曜日だ。
あたしがここで生活するようになっても、アラン様は変わらず通い続けるつもりの様で、テキパキと出かける準備をしている。
かくいうあたしも、あの後アルホがどうなってるのか気になったから、一緒に行くために準備を行っている。
「よし、準備オッケー!」
自室で一人準備を終えたあたしは、化粧台の前で、うんっと大きく首を縦に振る。
店を辞めてから数日しか経っていないとはいえ、辞めてから初めて行くということもあり、ちょっぴり緊張している。
「何かお土産を持っていった方がいいかな……でも、元職場に食事をしに行くだけなのにお土産って、ちょっと変かな……うーん、どうしよう……」
頭を抱えて悩んでいると、部屋の扉がノックされる音が聞こえてきた。
「ミシェル、いるか?」
「アラン様? はーい」
「そろそろ出発の時間だが、何か問題でもあったか?」
「えっ」
恐る恐る時計を確認すると、すでに時計は出発する時間を示していた。
ちょっと待って、さっき確認した時は、ニ十分くらい余裕があったはずなのに! もしかして、時間を忘れる程考えてたってこと!? ああもう、あたしのバカー!
「だ、大丈夫です! 今行きますからー!」
もう一度身支度の確認をしてから、急いで部屋の扉を開けようとしたが、ここでちょっとした事件が起きてしまった。
焦り過ぎていたせいで、ドアノブを掴もうとした手が空を切ってしまった。
でも、急ごうとする体を急に止めることなど出来るはずもなく……思いっきり扉に激突してしまった。
「ふぎゃあ!?」
「ミシェル? どうした、凄い音がしたが」
「い、いったぁい……!」
ぶつけた痛みと自分のマヌケさも合わさって、その場でうずくまっていると、アラン様が部屋の中に入ってきた。
「一体何があった?」
「い、急ぎ過ぎて扉にぶつかっちゃって……」
「なにもそこまで急ぐ必要は無かったんだが……大丈夫か?」
「たぶん……大丈夫です」
強くぶつけたおでこはビリビリして痛いけど、それ以上に、こんなマヌケなところをアラン様に見られた恥ずかしさの方がつらい。穴があったら入りたい……。
「なら良かった。動けそうか? 無理そうなら、屋敷で休んでいるといい」
「だ、大丈夫です! 心配してくれて、ありがとうございます」
「礼を言われるようなことはしていない。さあ、行くぞ」
「ま、待ってくださいよ~!」
先に行ってしまったのに、あたしを気遣って、ゆっくり歩くアラン様の隣を、あたしもゆっくりと歩く。
えへへ、やっぱりアラン様って凄く優しい人だなぁ……嫌な貴族達に囲まれていても、民を守ろうとするくらい優しい人なんだから、当たり前なんだけどね。
「足元に気を付けろ」
「はい、ありがとうございます。手を貸してくれるなんて、アラン様は優しいですね」
「君はよくその言葉を言うな。男なら、普通のことだろう?」
外に準備されていた馬車に先に乗ったアラン様の手を取って、ゆっくりと馬車に乗りこんだ。すると、馬車は静かに目的地に向かって出発した。
……よくよく考えると、この時間に出発すると、お店がオープンする前に到着してしまう。それも、何時間も早く。
いくらアラン様が、いつも来店する時はオープンとほぼ同時に来ていたとはいえ、さすがにこれは早すぎる。どうしてこんな早くに出たのだろう?
「店に行く前に、サジェスの大図書館に行こうと思ってな」
「あれ、あたしの考えていることがわかったんですか?」
「顔に書いてあるからな」
あたしって、そんなに顔に出やすいのかな……ちょっぴり恥ずかしいかも。
「何か探している本でもあるんですか? それなら、あたしに言ってくれれば借りてきますよ?」
「それも悪くないが、これは俺達の休息も兼ねている」
「なるほど休息でしたか。うんうん、休息はとっても大切――え、アラン様が自分から休息を!?」
「そこまで驚くことか?」
「驚きますよ! あたしが言わないと、ずっと研究……研究……ってなってたアラン様が、休息を申し出るなんて! 明日は槍が降るかも!?」
「さすがにそれは酷くないか?」
アラン様は、ジトーッとした目であたしを見つめながら、小さな溜息を漏らす。
あたしだって、こんなことを言うのは失礼だという自覚はあるけど、それくらいアラン様の休息発言は衝撃だったんだよ!
「あ、あはは……ごめんなさい、驚きすぎてつい……」
「まったく、君のような使用人は、世界中を探しても一人もいないだろうな……」
「でも、どうして急に休息を取ろうと思ったんですか?」
「君が言われて、ここ数日は食事をしっかり摂って、それなりに休息を入れるようにしてから、研究が少しずつ捗るようになったんだ。それに、休息をしないと君が変に心配するだろう?」
「あたしに心配をかけないように……ふふっ、やっぱりアラン様は優しいですね」
「君に変に心配をされるのが、面倒なだけだ」
いつものように優しいことを伝えると、アラン様は、ふいっと視線を横に逸らした。
口もほんの少しだけへの字になっていて、どことなく照れているようにも見える。
……さっき心配してくれた時や、今までの言動から考えるとアラン様って実はツンデレっぽい性格なんじゃないだろうか?
別に漫画に出てくるような、いつも棘のあるツンツンした言葉を頻繁に使ったり、そういう態度を取るわけじゃないから、明確には違うかもしれないけど、それと似たような感じなんだよね。特に素直じゃないところとか。
前世の友達から、ツンデレは漫画だからいいのであって、実際にいたら面倒でうざいだけだよーって聞いてたけど、そんなことは思わない。
むしろ、なんだか可愛いなーって思えるし、ドキドキしちゃうよ。
あたしがここで生活するようになっても、アラン様は変わらず通い続けるつもりの様で、テキパキと出かける準備をしている。
かくいうあたしも、あの後アルホがどうなってるのか気になったから、一緒に行くために準備を行っている。
「よし、準備オッケー!」
自室で一人準備を終えたあたしは、化粧台の前で、うんっと大きく首を縦に振る。
店を辞めてから数日しか経っていないとはいえ、辞めてから初めて行くということもあり、ちょっぴり緊張している。
「何かお土産を持っていった方がいいかな……でも、元職場に食事をしに行くだけなのにお土産って、ちょっと変かな……うーん、どうしよう……」
頭を抱えて悩んでいると、部屋の扉がノックされる音が聞こえてきた。
「ミシェル、いるか?」
「アラン様? はーい」
「そろそろ出発の時間だが、何か問題でもあったか?」
「えっ」
恐る恐る時計を確認すると、すでに時計は出発する時間を示していた。
ちょっと待って、さっき確認した時は、ニ十分くらい余裕があったはずなのに! もしかして、時間を忘れる程考えてたってこと!? ああもう、あたしのバカー!
「だ、大丈夫です! 今行きますからー!」
もう一度身支度の確認をしてから、急いで部屋の扉を開けようとしたが、ここでちょっとした事件が起きてしまった。
焦り過ぎていたせいで、ドアノブを掴もうとした手が空を切ってしまった。
でも、急ごうとする体を急に止めることなど出来るはずもなく……思いっきり扉に激突してしまった。
「ふぎゃあ!?」
「ミシェル? どうした、凄い音がしたが」
「い、いったぁい……!」
ぶつけた痛みと自分のマヌケさも合わさって、その場でうずくまっていると、アラン様が部屋の中に入ってきた。
「一体何があった?」
「い、急ぎ過ぎて扉にぶつかっちゃって……」
「なにもそこまで急ぐ必要は無かったんだが……大丈夫か?」
「たぶん……大丈夫です」
強くぶつけたおでこはビリビリして痛いけど、それ以上に、こんなマヌケなところをアラン様に見られた恥ずかしさの方がつらい。穴があったら入りたい……。
「なら良かった。動けそうか? 無理そうなら、屋敷で休んでいるといい」
「だ、大丈夫です! 心配してくれて、ありがとうございます」
「礼を言われるようなことはしていない。さあ、行くぞ」
「ま、待ってくださいよ~!」
先に行ってしまったのに、あたしを気遣って、ゆっくり歩くアラン様の隣を、あたしもゆっくりと歩く。
えへへ、やっぱりアラン様って凄く優しい人だなぁ……嫌な貴族達に囲まれていても、民を守ろうとするくらい優しい人なんだから、当たり前なんだけどね。
「足元に気を付けろ」
「はい、ありがとうございます。手を貸してくれるなんて、アラン様は優しいですね」
「君はよくその言葉を言うな。男なら、普通のことだろう?」
外に準備されていた馬車に先に乗ったアラン様の手を取って、ゆっくりと馬車に乗りこんだ。すると、馬車は静かに目的地に向かって出発した。
……よくよく考えると、この時間に出発すると、お店がオープンする前に到着してしまう。それも、何時間も早く。
いくらアラン様が、いつも来店する時はオープンとほぼ同時に来ていたとはいえ、さすがにこれは早すぎる。どうしてこんな早くに出たのだろう?
「店に行く前に、サジェスの大図書館に行こうと思ってな」
「あれ、あたしの考えていることがわかったんですか?」
「顔に書いてあるからな」
あたしって、そんなに顔に出やすいのかな……ちょっぴり恥ずかしいかも。
「何か探している本でもあるんですか? それなら、あたしに言ってくれれば借りてきますよ?」
「それも悪くないが、これは俺達の休息も兼ねている」
「なるほど休息でしたか。うんうん、休息はとっても大切――え、アラン様が自分から休息を!?」
「そこまで驚くことか?」
「驚きますよ! あたしが言わないと、ずっと研究……研究……ってなってたアラン様が、休息を申し出るなんて! 明日は槍が降るかも!?」
「さすがにそれは酷くないか?」
アラン様は、ジトーッとした目であたしを見つめながら、小さな溜息を漏らす。
あたしだって、こんなことを言うのは失礼だという自覚はあるけど、それくらいアラン様の休息発言は衝撃だったんだよ!
「あ、あはは……ごめんなさい、驚きすぎてつい……」
「まったく、君のような使用人は、世界中を探しても一人もいないだろうな……」
「でも、どうして急に休息を取ろうと思ったんですか?」
「君が言われて、ここ数日は食事をしっかり摂って、それなりに休息を入れるようにしてから、研究が少しずつ捗るようになったんだ。それに、休息をしないと君が変に心配するだろう?」
「あたしに心配をかけないように……ふふっ、やっぱりアラン様は優しいですね」
「君に変に心配をされるのが、面倒なだけだ」
いつものように優しいことを伝えると、アラン様は、ふいっと視線を横に逸らした。
口もほんの少しだけへの字になっていて、どことなく照れているようにも見える。
……さっき心配してくれた時や、今までの言動から考えるとアラン様って実はツンデレっぽい性格なんじゃないだろうか?
別に漫画に出てくるような、いつも棘のあるツンツンした言葉を頻繁に使ったり、そういう態度を取るわけじゃないから、明確には違うかもしれないけど、それと似たような感じなんだよね。特に素直じゃないところとか。
前世の友達から、ツンデレは漫画だからいいのであって、実際にいたら面倒でうざいだけだよーって聞いてたけど、そんなことは思わない。
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