冤罪で処刑されたら死に戻り、前世の記憶が戻った悪役令嬢は、元の世界に帰る方法を探す為に婚約破棄と追放を受け入れたら、伯爵子息様に拾われました

ゆうき

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第二十八話 近い距離間

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 バーンズ家を出発してから馬車に揺れること数十分後。あたしとアラン様は、無事にサジェスの町にある大図書館へとやってきた。

 この図書館は、世界的に有名な規模を誇る図書館だ。その本の多さは、何百人もの人が毎日読んだとしても、全て読破するのは無理なんじゃないかな?

「アラン様は、普段図書館に来るんですか?」
「普段はあまり来ないな。だが、先程も言ったように、休息も兼ねて屋敷に無い本を探すのも悪くないだろう?」
「はい、とても良いことだと思います」

 アラン様が自主的に休むことをしてくれるのは、とても嬉しい。あたしみたいなことになってからでは、全てが遅いもんね。

「本当に、ここに来るといつも圧倒されるなぁ……」

 首が痛くなるほど高い天井、壁一面が本棚となり、天井にまで伸びているその光景は、ただただ凄いという言葉以外の表現が思いつかないくらい、凄いものだ。

 確か、階層は十三階あるんだったかな……? 建物の真ん中が吹き抜けになっているおかげで、一階のロビーから圧巻の本棚を見ることが出来る仕組みだ。

 悠と芽衣がこれを見たら、きっと大喜びするだろうなぁ……見せてあげられないのが残念……二人共、ちゃんとご飯を食べて、元気にしてるかな……。
 それ以前に、二人はどこでどうやって生活しているのだろう。施設に送られたのか、親戚の家に預けられたのか……考えても意味が無いことだけど、心配で考えずにはいられない。

「ミシェル、俺は目的の本を探してくる。君も適当に回っていてくれて構わない」
「…………」
「ミシェル?」
「あ、はい! えっと、あたしも一緒に行きます」
「それは構わないが、別に来る必要は無いぞ」
「アラン様のことだから、読んでは放り出すのを繰り返しそうなので、ちゃんと近くで見張っておかないといけませんからね」
「いや、さすがに外でそれはしない」

 少しだけムスッとしているアラン様が想像以上に可愛くて、思わず笑みが零れた。

 今まで自覚は無かったけど、あたしってギャップに人一倍弱いのかもしれない。だって、いつもクールなアラン様が、ちょっと笑ったり拗ねるのを見るだけで、胸がキュンッとしちゃうんだ。

「冗談ですよ。あたしがアラン様と一緒にいたいだけです。ダメですか?」
「……君がそうしたいなら、好きにするといい」
「じゃあ、好きにしますね」

 またツンデレっぽいことを言うアラン様の隣を陣取り、上の階まで階段で上がっていく。

 お、思ったより階段を上るのが早い……いつも運動していないアラン様の、どこにそんな体力と筋力があるの?

「ん……? ああ、すまない。俺としたことが、早く本を探したい欲求が表に出てしまった。ほら、つかまれ」
「あっ……ありがとうございます」

 なんとかついていくあたしを見かねたアラン様は、あたしに手を差し伸べてくれた。その手を取ると、さっきとは打って変わり、あたしに合わせたゆっくりとした歩みになった。

 これでも一応元貴族だから、こうやって男性にエスコートをされる事自体は何度も経験があるけど、アラン様にエスコートされると、凄くドキドキしちゃうんだよね。

「足元に気を付けろ」
「は、はい」

 目線は真っ直ぐのままだったけど、あたしの心配をしてくれるアラン様の横顔を、ジッと見つめる。
 何回見ても、アラン様は綺麗で、とてもカッコイイなぁ……そのうえ、いつもクールだけど実は凄く優しくて、努力家で、でもちょっと残念なところもあって……こんな魅力的な人は、見たことがないよ。

「確か、この階層に転移魔法関連の本があるはずだが」
「タイトルはわかるんですか?」
「これに書いてきた」

 アラン様は、ポケットからタイトルが書かれた紙を出して、あたしに見せてくれた……のはいいんだけど、お世辞にも綺麗な字とは言えなくて、読むのに苦労してしまった。

「もしかして、今日もあれを使ってくれたんですか?」
「そうだ。魔力をインクに出来るのは、想像以上に便利だな」
「ふふっ、喜んでもらえて良かったです」
「正当な評価を言っているだけだ」
「アラン様ってば、照れちゃって……可愛いなぁ」
「何か言ったか?」
「いえ、なにも」

 優しいって言われてちょっとだけデレた後、すぐにツンを入れるアラン様、とっても可愛い! カッコいいアラン様に、優しさと可愛いがブレンドされてるとか、もう無敵だよね。

 って、そんなことを考えてないで、目的の本を探さないと……あ、これかな?

「アラン様、これじゃないですか?」
「ああ、これだな」
「ぴゃっ!?」

 本が間違えてないか確認をしに来たアラン様は、あたしの後ろに立ったまま、目的の本をひょいっと取った。
 その時の形が、あたしを後ろから抱きしめているみたいな形になってて……驚きで変な声が出てしまった。

 ち、近い! 近すぎるよ! 壁ドンの時も凄く近くてドキドキしたけど、これも同じくらい近いって! 男性経験が皆無なあたしには、刺激が強すぎて心臓が持たないよー!

「これか。相当古い本だから、大図書館といえど無いと思っていたが、決めつけは良くないな……ミシェルどうした?」
「ふぇっ!? ななな、なにがでしょうか?」
「顔が赤い。耳まで真っ赤だぞ。熱でもあるのか?」

 うそっ、顔が赤くなってる自覚はあったけど、耳まで赤くなってるの!?
 アラン様は後ろに立ってるから、赤くなってる顔を見られない位置だと思ってたのに、これじゃあバレバレだよ!

「だ、大丈夫です! 心配してくれて、ありがとうございます!」
「目の前で倒れられたら困るからな」

 照れてるところに、追いツンデレは破壊力が高すぎるから、勘弁してほしいんだけどー!? このままだと、キュン死にするー!

「あと、図書館であまり大きな声は出さないように」
「あっ……ご、ごめんなさい……」

 だ、誰のせいだと思ってるの……もう少し、アラン様は自分が類を見ないくらい美形で、距離感が近いってことを意識してほしい……。


 ****


「……ふむ、一冊は見つかったけど、他の物が何一つ見つからない」
「これだけあるのに、おかしな話ですね」
「もしかしたら、既に誰かが借りているのかもしれない。司書に聞いてみるとしよう」

 図書館に来てから一時間経っても、目的の本は最初の一冊以外は見つけられなかった。
 こんなにたくさんあるのに、目的の本が無いなんてね……。

「失礼。これに書いてあるタイトルの本を探しているのですが」
「拝見いたしますね。えーっと……」

 一階にある受付にいた司書の方に確認をお願いすると、少し奥に置かれた水晶を使って、今あるか調べてくれた。

「申し訳ございません、これらの本は、丁度先日借りられてしまったものでして」
「これ全部ですか? 十冊以上はあるのに……」
「記録には、同じ人が同日に借りていったようです」
「俺達の他にも、もしかしたらオリジナルの転移魔法の研究をしている人間がいるのかもしれないな」

 えぇ……そんな偶然あるのかな? ただでさえオリジナルの魔法の開発って難しいのに、それが同時期で、研究している魔法も同じだなんて……偶然って怖い。

「今度あたしだけ来て、借りておきますよ」
「その必要は無い。また休息を兼ねて来ればいい」
「休んでくれるのは嬉しいですけど、そういう雑務って、助手であり、使用人でもあるあたしの仕事じゃ……?」

 あたしの勝手なイメージだけど、そういうのら主人がやるんじゃなくて、周りの人達がやるものなんだよね。

「休息もあるが、君だけでは間違える可能性があるだろう。それに、重い物なんて持たせられない」
「メモがあるんですから、間違えませんよ~。もう、あたしのことを心配してくれるんですか?」
「違う。いや、全く違うわけではないが……全ては研究を円滑に進めるためだ」

 ちょっと本音が漏れてるツンデレアラン様とか、キュンキュンしない方が無理だって! ギャップに弱いあたしには、効果てきめんすぎる!

「ふふっ、お二人はとても仲良しなのですね。お付き合いされているのですか?」
「ふひょ!? お、おひゅきあい!? そ、そんにゃことは……!」
「ミシェル、図書館では静かに」
「す、すみましぇん……」

 いきなり付き合ってるのかって聞かれたら、動揺するなって方が無理だよ……どうしてアラン様は、そんなに平然としていられるんだろう。

「無い物を探しても仕方がない。それに、そろそろオープンの時間だ」
「も、もうそんな時間なんですね。はやく行きましょう。調べてくれてありがとうございました」
「いえいえ。お幸せに~」

 だ、だから付き合ったりとかはしてないからー! べ、別にあたしは付き合いたくないわけじゃないけどさ……なんなら、アラン様みたいな人だったら、お付き合いしてもいいなーなんて思ったり……。

 って、あたしは元の世界に帰るために、アラン様に協力してもらって、その見返りとして助手や使用人をしているんだから、浮かれたことを考えている場合じゃないよね!

 さあ、早く馬車に乗って、イヴァンさんのお店に――

「なんか、最近行方不明になってる人が増えてるそうね」
「らしいわねぇ。それも平民だったり貴族だったり、色んな人がいなくなってるそうじゃない」
「わたし達も気を付けないとね~」
「……物騒な世の中だなぁ」
「ミシェル、どうした。早く乗れ」
「あ、はーい! 今行きますー!」

 馬車に乗りこむ直前に、近くで井戸端会議をしていた女性達の話の内容が、なぜか気になって聞いてしまっていた。

 人がいなくなる、かぁ……アラン様やウィルモンド様、それに屋敷の人達もイヴァンさん夫婦も、変なことに巻き込まれませんように――
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