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第十七話 愛する言葉に暇なし
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同日のお昼頃、私は自室で借りてきた本を読み終わり、その本をパタンっと閉じた。
濡れ場が結構多かったのがアレだったけど、読んでて面白い恋愛小説だった。身分違いの恋で、周りに反対されながらも愛し合い、でも自分には相応しくないんじゃないかって葛藤するのが、読んでて応援したくなった。
私も、ある意味身分違いの恋になるんだろうか? 元貴族とはいえ、今は家を出たからね。
なんにせよ、この物語では恋心はよくわからなかった。もちろん恋心の描写自体は出てきたんだけど、自分のにうまくあてはめられなかった。
「シエル様、あまり根を詰めていると、体調を崩してしまいますよ。そうだ、良い天気なので、気分転換に出掛けませんか?」
「いいね! それって二人で?」
「もちろん二人です」
「なんかそれだと、デートみたいじゃない?」
「はい、デートですよ」
改めてラルフにデートと言われると、それはそれで緊張しちゃうよ。二人で出かけることなんて、何度も経験しているはずなんだけどなぁ……。
「そ、そうだよね。それで、どこに行くの?」
「港町に、お気に入りのカフェがございまして、そこにシエル様をご案内したいと考えております。いかがでしょうか?」
「ラルフのお気に入りか……気になる! 行ってみよう!」
ラルフとお出かけもするのも嬉しいけど、ラルフが好きなものが一つ知れるのは、とても大きな収穫だ。だって、ラルフのことなら何でも知りたいって思うもん。
こういう気持ちも、恋心の一つだったりするのかな? 答えが載っている本があるわけじゃないから、わからないけどね。
「ラルフは、今日はもうずっと空いてるの?」
「ええ、特に予定はございません。強いて言うなら、あなたの執事としてお供をするくらいでしょうか」
「そっか。それならさ、馬車じゃなくてのんびり歩いて行かない?」
「名案ですね。そうしましょう」
こうしてお散歩兼カフェデートが決まった私は、使用人達に見送られながら屋敷を出発した。
港町にまで続く道は、緩やかな下り坂になっている。私の故郷ほどではないけど、この辺りも自然が豊かだ。それに、高台ということもあって、湖が一望できて気持ちがいい。
「こうしてお散歩するのって気持ちいいね。実家にいる時は、自由に外なんて歩けなかったから、なおさら良いと思っちゃうよ」
「シエル様さえよろしければ、今後もまた一緒にデートをしましょう」
「か、考えておくよ!」
だから、そうやってデートを強調されて謂われると、照れちゃうって! 一緒にお出かけしたい気持ちは山々なのに、恥ずかしくてはぐらかしちゃったよ!
「ところでラルフ、どうしてずっと私の手を握っているの?」
「エスコートでございますよ。この辺りは、緩やかとはいえ坂ですので、転ばないようにと」
「うん、それは本当にありがとうね。でも……」
私は繋がれている手に視線を移す。そこには、恋愛小説の中で行われていた、指を絡める繋ぎ方をされていた。
この繋ぎ方は、俗にいう恋人繋ぎというやつだよね?
「実は、私もあなたに倣い、恋愛小説を読み始めたのです。そこに出てきた恋人達が、この繋ぎ方をしていたので、実践をしてみた次第です」
「そ、そうなんだ。ラルフも恋愛小説を読み始めたなんて、ちょっと驚きだよ」
ラルフが読書をしているのは見たことがあるけど、読んでいるのは推理小説が多かった。だから、ラルフが恋愛小説に手を出したのは、少し意外だった。
「こういう行動をすれば、もしかしたら恋心についての学びが深まるかもしれませんよ」
「ラルフ……あなた、私のために?」
「もちろんです。私は常にあなたのことを考えておりますから」
フッと笑うラルフの言葉に、私の胸の奥が大きく跳ねた。顔も熱いし、ちょっとだけ息も苦しい。
「ほ、本当かな? ラルフがしたかっただけじゃないの?」
「否定はしません」
「そこは否定しようよ!?」
「本当のことを否定するのは、よろしくありませんからね」
「やっぱりラルフ、最近そういうことを言うのに抵抗が無くなってるよね!」
「抵抗もなにも、元々はずっと伝えたかったことですから。立場上、言うのを控えていたにすぎません」
「う、うぅ~~!!」
終始ラルフに翻弄されっぱなしになりながらも、なんとか港町にあるカフェに到着した。落ち着いた色合いと雰囲気の建物で、まさにゆっくりお茶をするのに適している。
特に一番特徴的だったのは、内装だった。普通ならいくつかテーブルが並べられている大広間だと思うんだけど、中に入ってすぐ目に入ったのは、いくつかの個室と、その個室に行くための廊下だった。
「このカフェは個室なんですよ。周りを気にせずに、お茶を楽しむことが出来るのです」
「へぇ~! それは珍しいね!」
「いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました」
店の中に入ると、それなりにお年を召した男性に歓迎された。胸元にある名札には、店主という文字が書かれている。
「お二人様でいらっしゃいますか?」
「……? あ、はい!」
「では、こちらにどうぞ」
私とラルフは奥の席に通された。そこには、小さなテーブルと椅子、そして大きな窓が自らの存在を主張していた。窓からは日差しが入っていて、とても明るい雰囲気だ。
良い感じの場所なのはいいんだけど……店主の人、どこかで見たことがあるような気がする……気のせいかな?
「こちらがメニューでございます。お決まりになられたら、テーブルに置かれているベルを鳴らしてください」
「わかりました」
メニュー表を置いた店主は、お辞儀を残して私達の元を去っていった。それを見送った私は、先程感じた疑問を解決するために、ラルフに質問を投げかけた。
「ねえラルフ、さっきの人ってどこかで会ったことないかな? 何か見覚えがある気がするんだよね」
「……? いえ、覚えはありません。私の知っている店主は、別の方でしたので」
「そうなの?」
「ええ。私が来た時には既に高齢でしたので、引退されて別の方が店を引き継いだのでしょう」
ラルフが来た時っていうと、何年も前の話になる。その時で既に高齢なら、続けるのは無理があるよね。
「ちなみにそれは、マーチャント家にいる時のお話ですよね?」
「うん、もちろん」
「申し訳ございませんが、記憶にございません。マーチャント家にいる時は、あなたばかりを見ていたので」
「そ、そういうのはいいから~!」
「ふふっ、そうやって照れるシエル様はとても可愛らしいですね。あ、ここはケーキが絶品ですよ」
またしても直球な言葉から逃げるように、私はメニュー表に視線を移すと、ラルフはおススメをいくつか教えてくれた。
ラルフに散々恥ずかしい思いをさせられてしまったせいで、お腹がペコペコだよ! 今日はたくさん食べてやるんだから!
濡れ場が結構多かったのがアレだったけど、読んでて面白い恋愛小説だった。身分違いの恋で、周りに反対されながらも愛し合い、でも自分には相応しくないんじゃないかって葛藤するのが、読んでて応援したくなった。
私も、ある意味身分違いの恋になるんだろうか? 元貴族とはいえ、今は家を出たからね。
なんにせよ、この物語では恋心はよくわからなかった。もちろん恋心の描写自体は出てきたんだけど、自分のにうまくあてはめられなかった。
「シエル様、あまり根を詰めていると、体調を崩してしまいますよ。そうだ、良い天気なので、気分転換に出掛けませんか?」
「いいね! それって二人で?」
「もちろん二人です」
「なんかそれだと、デートみたいじゃない?」
「はい、デートですよ」
改めてラルフにデートと言われると、それはそれで緊張しちゃうよ。二人で出かけることなんて、何度も経験しているはずなんだけどなぁ……。
「そ、そうだよね。それで、どこに行くの?」
「港町に、お気に入りのカフェがございまして、そこにシエル様をご案内したいと考えております。いかがでしょうか?」
「ラルフのお気に入りか……気になる! 行ってみよう!」
ラルフとお出かけもするのも嬉しいけど、ラルフが好きなものが一つ知れるのは、とても大きな収穫だ。だって、ラルフのことなら何でも知りたいって思うもん。
こういう気持ちも、恋心の一つだったりするのかな? 答えが載っている本があるわけじゃないから、わからないけどね。
「ラルフは、今日はもうずっと空いてるの?」
「ええ、特に予定はございません。強いて言うなら、あなたの執事としてお供をするくらいでしょうか」
「そっか。それならさ、馬車じゃなくてのんびり歩いて行かない?」
「名案ですね。そうしましょう」
こうしてお散歩兼カフェデートが決まった私は、使用人達に見送られながら屋敷を出発した。
港町にまで続く道は、緩やかな下り坂になっている。私の故郷ほどではないけど、この辺りも自然が豊かだ。それに、高台ということもあって、湖が一望できて気持ちがいい。
「こうしてお散歩するのって気持ちいいね。実家にいる時は、自由に外なんて歩けなかったから、なおさら良いと思っちゃうよ」
「シエル様さえよろしければ、今後もまた一緒にデートをしましょう」
「か、考えておくよ!」
だから、そうやってデートを強調されて謂われると、照れちゃうって! 一緒にお出かけしたい気持ちは山々なのに、恥ずかしくてはぐらかしちゃったよ!
「ところでラルフ、どうしてずっと私の手を握っているの?」
「エスコートでございますよ。この辺りは、緩やかとはいえ坂ですので、転ばないようにと」
「うん、それは本当にありがとうね。でも……」
私は繋がれている手に視線を移す。そこには、恋愛小説の中で行われていた、指を絡める繋ぎ方をされていた。
この繋ぎ方は、俗にいう恋人繋ぎというやつだよね?
「実は、私もあなたに倣い、恋愛小説を読み始めたのです。そこに出てきた恋人達が、この繋ぎ方をしていたので、実践をしてみた次第です」
「そ、そうなんだ。ラルフも恋愛小説を読み始めたなんて、ちょっと驚きだよ」
ラルフが読書をしているのは見たことがあるけど、読んでいるのは推理小説が多かった。だから、ラルフが恋愛小説に手を出したのは、少し意外だった。
「こういう行動をすれば、もしかしたら恋心についての学びが深まるかもしれませんよ」
「ラルフ……あなた、私のために?」
「もちろんです。私は常にあなたのことを考えておりますから」
フッと笑うラルフの言葉に、私の胸の奥が大きく跳ねた。顔も熱いし、ちょっとだけ息も苦しい。
「ほ、本当かな? ラルフがしたかっただけじゃないの?」
「否定はしません」
「そこは否定しようよ!?」
「本当のことを否定するのは、よろしくありませんからね」
「やっぱりラルフ、最近そういうことを言うのに抵抗が無くなってるよね!」
「抵抗もなにも、元々はずっと伝えたかったことですから。立場上、言うのを控えていたにすぎません」
「う、うぅ~~!!」
終始ラルフに翻弄されっぱなしになりながらも、なんとか港町にあるカフェに到着した。落ち着いた色合いと雰囲気の建物で、まさにゆっくりお茶をするのに適している。
特に一番特徴的だったのは、内装だった。普通ならいくつかテーブルが並べられている大広間だと思うんだけど、中に入ってすぐ目に入ったのは、いくつかの個室と、その個室に行くための廊下だった。
「このカフェは個室なんですよ。周りを気にせずに、お茶を楽しむことが出来るのです」
「へぇ~! それは珍しいね!」
「いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました」
店の中に入ると、それなりにお年を召した男性に歓迎された。胸元にある名札には、店主という文字が書かれている。
「お二人様でいらっしゃいますか?」
「……? あ、はい!」
「では、こちらにどうぞ」
私とラルフは奥の席に通された。そこには、小さなテーブルと椅子、そして大きな窓が自らの存在を主張していた。窓からは日差しが入っていて、とても明るい雰囲気だ。
良い感じの場所なのはいいんだけど……店主の人、どこかで見たことがあるような気がする……気のせいかな?
「こちらがメニューでございます。お決まりになられたら、テーブルに置かれているベルを鳴らしてください」
「わかりました」
メニュー表を置いた店主は、お辞儀を残して私達の元を去っていった。それを見送った私は、先程感じた疑問を解決するために、ラルフに質問を投げかけた。
「ねえラルフ、さっきの人ってどこかで会ったことないかな? 何か見覚えがある気がするんだよね」
「……? いえ、覚えはありません。私の知っている店主は、別の方でしたので」
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「うん、もちろん」
「申し訳ございませんが、記憶にございません。マーチャント家にいる時は、あなたばかりを見ていたので」
「そ、そういうのはいいから~!」
「ふふっ、そうやって照れるシエル様はとても可愛らしいですね。あ、ここはケーキが絶品ですよ」
またしても直球な言葉から逃げるように、私はメニュー表に視線を移すと、ラルフはおススメをいくつか教えてくれた。
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どうぞ、最後までお付き合いくださいませ。
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