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第六話 私の理解者
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「さて、どうしようかな……」
翌日の夕方、近くの町にやってきた私は、仕事の求人が張られている掲示板の前で、うなり声を上げていた。
実家に帰ってきたのはいいけど、私がいたらその分食費が増えてしまうから、たくさん稼がないとさらに貧乏になってしまう。
帰ってきたはいいものの、それで家族が飢え死にでもしたら、笑い話にもならない。
「近くの森や川で食材を採りに行くのもいいけど、どうしても限りがあるしなぁ……」
「やあ、アイリーン。そんなむすっとした顔でどうしたんだい?」
「あ、エルヴィン様! こんにちは!」
昨日も会ったエルヴィン様は、にこやかな表情を浮かべていた。
そうだ、今日はエルヴィン様とお会いできる曜日だった。屋敷を出たり今後のことを考えていたせいで、すっかり頭から抜け落ちていた。
「こんにちは。昨日のことはもう解決したのかい?」
「はい、なんとか。エルヴィン様は?」
「僕は学園が終わって、少し散歩をしてから、いつもの図書館に行こうと思ってね。そうしたら、君の姿を見つけたんだ」
エルヴィン様は、ゲオルク様達と同じセレクディエ学園に通っていると、以前聞いたことがある。
正式名称は、セレクディエ王立魔法学園というんだけど、この世界で一番有名な魔法学園で、多くの国から貴族の子供やお金持ちの子供が通っている。
私もそこに通って、凄い魔法使いになって、宮廷魔術師になるのが夢なんだけど……うちには多額の学費を払えるほどのお金なんて無いから、叶わない夢だ。
だから、我流でいろんなことを勉強しているんだよ。
「いつもお散歩してるって、前にお話してましたものね」
「あれ、覚えていてくれたのかい? 嬉しいな! これは今日一日、素晴らしいことが起きそうだね」
「もう、大げさですよ」
ただ趣味を覚えていただけで、エルヴィン様はこんなに喜んでくれるのが、少しだけおかしくて、クスクスと笑ってしまった。
この人とお話していると、なんだかとても心が穏やかになる。でも同時に、少しドキドキしているのがちょっぴり不思議だ。
「そうだ、今日も一緒に勉強をするだろう?」
「はい、その予定でした」
……目の前の求人を探すことで頭がいっぱいで、いつもの図書館に行くことが頭から抜けていたことは、黙っておこう。
「君がよければ、勉強の後、運命的な出会いを祝して食事でもどうかな? もちろん、僕のおごりだから心配しないで」
「運命的って……」
なんだかその言い方だと、とてもロマンティックなように聞こえる……嬉しいような、恥ずかしいような……あ、ダメ……嬉しいって思っちゃうと、尻尾が勝手に揺れちゃう!
「あ、あの! お誘いは嬉しいですけど、おごってもらうのは申し訳ないです!」
「お金の心配はいらないよ。むしろ、君に払わせるという選択は、自分の身を引き裂く痛みよりもつらいものだ」
「お、大げさですよ~!」
屋敷を出て、ゲオルク様達から解放されて心に余裕が出来たからなのかな……エルヴィン様とこうして会えることが、嬉しくて仕方がない。思わず小躍りしそうなくらいだ。
「全然大げさではないんだけどね。まあいい、とりあえずいつもの図書館に行こうか」
「はいっ……って、どうしてわざわざ手を繋ぐんですか!?」
「男性が女性をエスコートするのは当然だろう? それに、いつもしているじゃないか」
「そ、それはそうですけど!」
確かにエルヴィン様は、私とどこか行く時は、こうして私を優しくエスコートしてくれる。
それはとても嬉しいことなのだけど、実は私……男性に対しての免疫が無いというか……指先が触れるだけでドキッとして、顔が赤くなってしまう。
そんな私が、優しくてカッコいい人にリードなんてされた日には……もう耳まで真っ赤だ。
「あはは、今日も照れて赤くなるアイリーンは可愛いね」
「う、うぅぅぅぅぅ……!!」
わ、わかってる。エルヴィン様は、出会った時からこうして私のことを簡単に褒めたり、可愛いと言ってくれるのは。
でも……は、恥ずかしいものは恥ずかしいの! ああもう、熱湯を頭から被ったみたいに体が熱いし、汗も凄いし、尻尾は勝手に振っちゃうし! 恥ずかしすぎて死んじゃうー!
****
照れながらも向かった図書館で勉強を終えた私は、エルヴィン様の案内のもと、良い雰囲気のレストランへと連れて来てもらった。
小高い丘の上に店を構えていて、町を一望できるレストランとして有名だったりする。
「いらっしゃいませ、エルヴィン・シャムル様。ご注文は何になさいますか?」
「このフルコースを二人分お願いします」
「かしこまりました」
すでに何度も来ているのか、お店の人に名前を覚えてもらっていることに驚きつつ、ジッとエルヴィン様の顔を見つめていると、頬笑みを返してくれた。
「よく君と行くカフェでも良かったんだけど、今日はちょっと事情があってね。静かな雰囲気の方が話しやすいかなと思って、ここにしたんだ」
「事情、ですか?」
「昨日、何があったんだい?」
いつにもまして真剣な表情をするエルヴィン様に、思わずドキッとしてしまった。
それは、真剣なエルヴィン様がカッコイイからというのもあるが、それ以上に核心を突かれたからだ。
「昨日の君は、いつもと明らかに違ったからね。それに、今日の君も……だから、静かに話せるところを確保したのさ」
「凄い……エルヴィン様には全てお見通しなんですね」
「こんなことが出来るのは、君を相手にした時だけさ」
わ、私ってそんなにわかりやすいのかな……? ちょっとだけショックかもしれない。
「実は、昨日色々ありまして……」
「ゆっくりでいいから、話してごらん。もちろん、嫌なら無理にとは言わない」
「いえ、大丈夫です。エルヴィン様には、今まで色々と聞いてもらってるので、今回のことも聞いてほしいです」
自分で行っておきながら、随分とエルヴィン様に甘えてるなと思いつつも、婚約破棄をされたことや、屋敷を出ていったことといった、全てのことを話した。
とはいっても、エルヴィン様には、知り合ってから少し経った頃に、ゲオルク様のところで生活していることとか、あまり良い待遇をされてないことは伝えているから、こと細かに話す必要はない。
「なるほど、全く仕方のない人達だ。さすがの僕でも、怒って暴れてしまうかもしれないね。手荒な真似はしないけど」
「……エルヴィン様、今の言葉、本当ですか?」
最後の言葉から嘘の臭いがしたから聞いたら、エルヴィン様はふいっと私から視線をそらした。
「ふふ、相変わらず君の勘は鋭いね。暴れてしまうというのは、本当だよ。今すぐにでも屋敷ごと消し飛ばすか、磔にしてアイリーンに謝罪させ続けるか、どっちがいいかな?」
「ちょっ!? ここ、公共の場ですから!」
「これでもだいぶ譲歩しているんだけどね」
私のために、それほど怒ってくれるのは嬉しいけど、明らかに内容が危なすぎる!
いくらなんでも、さすがにそんなことはしないと思いたいけど、このエルヴィン様の屈託のない笑顔は、本当にやりかねないかも!?
「それで、これからどうするつもりだい?」
「え? えっと……そうですね……お仕事をしながら勉強をして、いつかは凄い魔法使いになって、宮廷魔術師になりたいです」
「前からずっと言ってたことだね。今もその夢は変わらないのかい?」
「もちろんです! あっ、追い出されて外出の縛りがなくなったから、勉強しやすくなったかも?」
基本的に屋敷の仕事ばかりをさせられていたから、勉強をする時間を確保するのが難しかった。
そう考えると、婚約破棄をされて良かったのかもしれない。
「一つ提案なんだけど……セレクディエ学園に受験してみないかい?」
翌日の夕方、近くの町にやってきた私は、仕事の求人が張られている掲示板の前で、うなり声を上げていた。
実家に帰ってきたのはいいけど、私がいたらその分食費が増えてしまうから、たくさん稼がないとさらに貧乏になってしまう。
帰ってきたはいいものの、それで家族が飢え死にでもしたら、笑い話にもならない。
「近くの森や川で食材を採りに行くのもいいけど、どうしても限りがあるしなぁ……」
「やあ、アイリーン。そんなむすっとした顔でどうしたんだい?」
「あ、エルヴィン様! こんにちは!」
昨日も会ったエルヴィン様は、にこやかな表情を浮かべていた。
そうだ、今日はエルヴィン様とお会いできる曜日だった。屋敷を出たり今後のことを考えていたせいで、すっかり頭から抜け落ちていた。
「こんにちは。昨日のことはもう解決したのかい?」
「はい、なんとか。エルヴィン様は?」
「僕は学園が終わって、少し散歩をしてから、いつもの図書館に行こうと思ってね。そうしたら、君の姿を見つけたんだ」
エルヴィン様は、ゲオルク様達と同じセレクディエ学園に通っていると、以前聞いたことがある。
正式名称は、セレクディエ王立魔法学園というんだけど、この世界で一番有名な魔法学園で、多くの国から貴族の子供やお金持ちの子供が通っている。
私もそこに通って、凄い魔法使いになって、宮廷魔術師になるのが夢なんだけど……うちには多額の学費を払えるほどのお金なんて無いから、叶わない夢だ。
だから、我流でいろんなことを勉強しているんだよ。
「いつもお散歩してるって、前にお話してましたものね」
「あれ、覚えていてくれたのかい? 嬉しいな! これは今日一日、素晴らしいことが起きそうだね」
「もう、大げさですよ」
ただ趣味を覚えていただけで、エルヴィン様はこんなに喜んでくれるのが、少しだけおかしくて、クスクスと笑ってしまった。
この人とお話していると、なんだかとても心が穏やかになる。でも同時に、少しドキドキしているのがちょっぴり不思議だ。
「そうだ、今日も一緒に勉強をするだろう?」
「はい、その予定でした」
……目の前の求人を探すことで頭がいっぱいで、いつもの図書館に行くことが頭から抜けていたことは、黙っておこう。
「君がよければ、勉強の後、運命的な出会いを祝して食事でもどうかな? もちろん、僕のおごりだから心配しないで」
「運命的って……」
なんだかその言い方だと、とてもロマンティックなように聞こえる……嬉しいような、恥ずかしいような……あ、ダメ……嬉しいって思っちゃうと、尻尾が勝手に揺れちゃう!
「あ、あの! お誘いは嬉しいですけど、おごってもらうのは申し訳ないです!」
「お金の心配はいらないよ。むしろ、君に払わせるという選択は、自分の身を引き裂く痛みよりもつらいものだ」
「お、大げさですよ~!」
屋敷を出て、ゲオルク様達から解放されて心に余裕が出来たからなのかな……エルヴィン様とこうして会えることが、嬉しくて仕方がない。思わず小躍りしそうなくらいだ。
「全然大げさではないんだけどね。まあいい、とりあえずいつもの図書館に行こうか」
「はいっ……って、どうしてわざわざ手を繋ぐんですか!?」
「男性が女性をエスコートするのは当然だろう? それに、いつもしているじゃないか」
「そ、それはそうですけど!」
確かにエルヴィン様は、私とどこか行く時は、こうして私を優しくエスコートしてくれる。
それはとても嬉しいことなのだけど、実は私……男性に対しての免疫が無いというか……指先が触れるだけでドキッとして、顔が赤くなってしまう。
そんな私が、優しくてカッコいい人にリードなんてされた日には……もう耳まで真っ赤だ。
「あはは、今日も照れて赤くなるアイリーンは可愛いね」
「う、うぅぅぅぅぅ……!!」
わ、わかってる。エルヴィン様は、出会った時からこうして私のことを簡単に褒めたり、可愛いと言ってくれるのは。
でも……は、恥ずかしいものは恥ずかしいの! ああもう、熱湯を頭から被ったみたいに体が熱いし、汗も凄いし、尻尾は勝手に振っちゃうし! 恥ずかしすぎて死んじゃうー!
****
照れながらも向かった図書館で勉強を終えた私は、エルヴィン様の案内のもと、良い雰囲気のレストランへと連れて来てもらった。
小高い丘の上に店を構えていて、町を一望できるレストランとして有名だったりする。
「いらっしゃいませ、エルヴィン・シャムル様。ご注文は何になさいますか?」
「このフルコースを二人分お願いします」
「かしこまりました」
すでに何度も来ているのか、お店の人に名前を覚えてもらっていることに驚きつつ、ジッとエルヴィン様の顔を見つめていると、頬笑みを返してくれた。
「よく君と行くカフェでも良かったんだけど、今日はちょっと事情があってね。静かな雰囲気の方が話しやすいかなと思って、ここにしたんだ」
「事情、ですか?」
「昨日、何があったんだい?」
いつにもまして真剣な表情をするエルヴィン様に、思わずドキッとしてしまった。
それは、真剣なエルヴィン様がカッコイイからというのもあるが、それ以上に核心を突かれたからだ。
「昨日の君は、いつもと明らかに違ったからね。それに、今日の君も……だから、静かに話せるところを確保したのさ」
「凄い……エルヴィン様には全てお見通しなんですね」
「こんなことが出来るのは、君を相手にした時だけさ」
わ、私ってそんなにわかりやすいのかな……? ちょっとだけショックかもしれない。
「実は、昨日色々ありまして……」
「ゆっくりでいいから、話してごらん。もちろん、嫌なら無理にとは言わない」
「いえ、大丈夫です。エルヴィン様には、今まで色々と聞いてもらってるので、今回のことも聞いてほしいです」
自分で行っておきながら、随分とエルヴィン様に甘えてるなと思いつつも、婚約破棄をされたことや、屋敷を出ていったことといった、全てのことを話した。
とはいっても、エルヴィン様には、知り合ってから少し経った頃に、ゲオルク様のところで生活していることとか、あまり良い待遇をされてないことは伝えているから、こと細かに話す必要はない。
「なるほど、全く仕方のない人達だ。さすがの僕でも、怒って暴れてしまうかもしれないね。手荒な真似はしないけど」
「……エルヴィン様、今の言葉、本当ですか?」
最後の言葉から嘘の臭いがしたから聞いたら、エルヴィン様はふいっと私から視線をそらした。
「ふふ、相変わらず君の勘は鋭いね。暴れてしまうというのは、本当だよ。今すぐにでも屋敷ごと消し飛ばすか、磔にしてアイリーンに謝罪させ続けるか、どっちがいいかな?」
「ちょっ!? ここ、公共の場ですから!」
「これでもだいぶ譲歩しているんだけどね」
私のために、それほど怒ってくれるのは嬉しいけど、明らかに内容が危なすぎる!
いくらなんでも、さすがにそんなことはしないと思いたいけど、このエルヴィン様の屈託のない笑顔は、本当にやりかねないかも!?
「それで、これからどうするつもりだい?」
「え? えっと……そうですね……お仕事をしながら勉強をして、いつかは凄い魔法使いになって、宮廷魔術師になりたいです」
「前からずっと言ってたことだね。今もその夢は変わらないのかい?」
「もちろんです! あっ、追い出されて外出の縛りがなくなったから、勉強しやすくなったかも?」
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