【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき

文字の大きさ
21 / 74

第二十一話 噂の出所

しおりを挟む
 マズイ、あの三人がそろってところに出くわしてしまうのは、面倒極まりない。気づかれないうちに、さっさと三人から離れた方が良さそうだ。

 そう思った私は、エルヴィン様に声をかけようとしたが、わかっていると言わんばかりに、私にチラッと視線を向けながら頷き、私の手を引っ張って離れようとしたが――

「あーっ! お兄様の言った通り、本当にアイリーンが学園にいるー!」

 時すでに遅し。私達の背中に、ミア様の無駄に大きくて甲高い声が、綺麗な中庭の雰囲気を壊した。

 ……見つかってしまった以上、無視をしたら後でどんな因縁をつけられるか、わかったものじゃない。適当にあしらって、この場を去ろう。

「……こんにちは」

「まさか、本当にアイリーンがいるとは思ってなかったよ! ってことは、やっぱり例の噂は本当だったんだね~ミア、ビックリ~!」

「ミアちゃん可愛い~!」

「えへっ! ありがとう~!」

 ……なんだろう、ぶりっ子ってこういうのを言うんだろうか? 屋敷であんな姿を見たことないんだけど……なんていうか、すごく……きつい。
 まだ見た目が幼いから良いけど、私があれをやったら、確実に学園で危ない人として過ごす羽目になっちゃうよ。

「ミア様、ビックリとは、どういうことでしょう?」

「エルヴィンくんじゃん、終業式以来だね~。どういうことって、エルヴィンくんなら知ってるでしょ? この子が編入する際に、不正をしたとか、弱みを握ったとか、上層部と寝たとか」

 根も葉もない噂って、こういうことを言うのね。出元がどこかは知らないけど、随分と妄想が得意で、いじわるな人が広めたのだろう。

「セレクディエ学園は、歴史ある由緒正しい学園です。そんな偉大な学園に、私が色々したところで、どうしようもできないのは、すこしでも考えればわかるでしょう?」

「うっ……い、言うようになったじゃん……あの時も思ったけどさ……」

「ええ。もう我慢する必要は無いですからね。あの頃の私とは違います」

 ミア様は、頬を引きつらせながら、ピクピクと肩を震わせている。

 出ていく時にも驚いていたけど、ずっと黙ってされるがままだった私が、こんな感じに変わるだなんて、まだ実感がわかないのだろう。

「はあ、バカバカしいですわ。男なんて、所詮はその程度の存在よ。ちょっと良い気にさせれば、試験の不正なんて余裕ですわよ」

「ああ、まったくだな妹よ。そうでなければ、アイリーンが合格だなんて、絶対にあり得ないだろうからな」

「……なるほど。あなた達が噂の発端でしたか」

 ゲオルク様の前に、エルヴィン様が静かに立つ。互いににこやかではあるが、まさに一触即発と表現するのが一番しっくりくるような、妙な緊張感がある。

 それが辺りにも伝わっているのか、イケメンが並んでいるって喜んでいる女子生徒以外は、みんな固唾を飲んで見守っている。

「噂? エルヴィン、一体なんのことだ?」

「わからないなら、教えて差し上げます。アイリーンに対する噂のことですよ。それに、今日は随分と校門に僕のファンを自称する生徒が多かったのも、あなた方の誰かが、僕達が一緒に登校するという情報を流したのでしょう」

「あらあら、随分と妄想が逞しいお方ですこと。ワタクシ達は、何も知りませんわ」

 シンシア様の言っていることは、全てが嘘だ。ということは、この三つ子が揃って私の学園生活の邪魔をしに来ているということか。

 散々屋敷で私のことをいじめていたくせに、ここでも続けるだなんて、本当に骨の髄まで最低な人達だ。

「改めて言っておきますが、私は実力で入学したんです。私の夢……宮廷魔術師になるために、寝る間も惜しんで勉強をして、手に入れた合格なんです。裕福な家に生まれて、何不自由なく生活していたあなた達には、この苦労はわからないでしょう」

 ちょっと嫌味っぽいことを言うと、あからさまに妹二人がイライラしているような顔をした。

 外野達からも、シンシア様を侮辱するな女狐~! とか、ミアちゃんをいじめるなんて万死に値するぞ女狐~! とか、いろんな言葉が聞こえてくる。

 中には、超一流の中でも、さらに一部の人間しかなれない、宮廷魔術師なんかなれるはずがないと、私の夢を笑う人までいる始末だ。

 確かに宮廷魔術師になるには、並大抵の努力では不可能だろう。だからといって、努力もしないで投げ出すような恥ずかしい真似なんて、私はするつもりはない。

「実施試験では散々だった特待生様には、少々荷が重すぎるのではないか?」

「魔法が一度も発動していなかったんだっけ? そんな情けない人がいるなんてぇ……信じられな~い!」

「やはり、何かの間違いがあったのではなくて? 魔法もろくに使えない落ちこぼれが、セレクディエ学園の生徒……ましてや特待生だなんて、信じられませんわ」

 私だって、正直どうして選ばれたのかはわからない。
 でも、何も不正なんて無かったと信じたいし、私自身がなにか汚い手を使ったわけじゃない。

 だから、ここで黙っていれば、彼らの思うツボ……それはわかってるけど、上層部で何もなかったと言い切れるほど、私には力も情報も持ち合わせてない。

 一体何で反論すればいいのか考えていると、エルヴィン様が助け舟を出してくれた。

「学園長をはじめとした、上層部によって決められた合格者を侮辱するのは、我らの学園を侮辱するに等しい。いくら生徒会長だからいって、やっていいことと悪いことの線引きくらいはしていただかないと」

「ふん、真実はどうだかな。そのうちわかるだろう! それまで、束の間の学園生活を楽しむと良い! はっはっはっ!!」

 いつもなら、もっとねちっこく私の嫌がるようなことを言う三人なのに、今日は思ったより早く帰っていった。

 さすがにここは外だし、過剰に目立つのを避けたかったのかもしれない。今のところは三人共、男女ともに人気がありそうだから、これを壊して優越感に浸れなくなるのが嫌ってところかな?

 なんでわかるのかって? 伊達に何年も一緒に住んでいないってことだよ。あの三つ子の魂胆なんて、すごくわかりやすいしね。

 ……まあ、まさか援助をほとんどしてなかった件については、すっかり騙されてたけど。

「まったく、困った人達だ……」

「巻き込んでしまってごめんなさい、エルヴィン様」

「気にしなくていいよ。ここにいたら悪目立ちしそうだし、一旦ここを離れよう」

 エルヴィン様に手を引かれて、私達はその場を後にする。
 その際に、外野の人達から心の無い言葉をぶつけられたけど、一切気にしなかった。

「ここまでくれば大丈夫だろう。アイリーン、すまないが少し用事を思い出した。案内はまた今度でも良いかな?」

 一旦学園を後にして、外で待っていた馬車の元に来たのも束の間、エルヴィン様は申し訳なさそうに口を開いた。

「あ、はい。大丈夫です。でも、急にどうしたのですか? 何か手伝えることがあれば、なんでもしますよ」

「その気持ちだけで十分だよ。ちょっと話をしてくるだけだから。それじゃあ、馬車の中で待っててくれ」

「わかりました。お気をつけて」

 話って、まさかさっきのことでゲオルク様達と話してくるなんてことはない……よね? 今の言葉から、嘘の臭いはしなかったし……大丈夫だと思いたい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 双子として生まれたエレナとエレン。 かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。 だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。 エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。 両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。 そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。 療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。 エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。 だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。 自分がニセモノだと知っている。 だから、この1年限りの恋をしよう。 そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。 ※※※※※※※※※※※※※ 異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。 現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦) ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦

【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~

猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」 王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。 王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。 しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。 迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。 かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。 故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり── “冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。 皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。 冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」 一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。 追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、 ようやく正当に愛され、報われる物語。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした

ごろごろみかん。
恋愛
前世の記憶を取り戻した伯爵令嬢のリンシア。 自分の婚約者は、最近現れた聖女様につききっきりである。 そんなある日、彼女は見てしまう。 婚約者に詰め寄る聖女の姿を。 「いつになったら婚約破棄するの!?」 「もうすぐだよ。リンシアの有責で婚約は破棄される」 なんと、リンシアは聖女への嫌がらせ(やってない)で婚約破棄されるらしい。 それを目撃したリンシアは、決意する。 「婚約破棄される前に、こちらから破棄してしてさしあげるわ」 もう泣いていた過去の自分はいない。 前世の記憶を取り戻したリンシアは強い。吹っ切れた彼女は、魔法道具を作ったり、文官を目指したりと、勝手に幸せになることにした。 ☆ご心配なく、婚約者様。の修正版です。詳しくは近況ボードをご確認くださいm(_ _)m ☆10万文字前後完結予定です

私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。  読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。 「私は君を愛することはないだろう。  しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。  これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」  結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。  この人は何を言っているのかしら?  そんなことは言われなくても分かっている。  私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。  私も貴方を愛さない……  侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。  そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。  記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。  この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。  それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。  そんな私は初夜を迎えることになる。  その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……    よくある記憶喪失の話です。  誤字脱字、申し訳ありません。  ご都合主義です。  

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...