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私のことはお気になさらず《最終話》
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それからのヴィル様は、再びお忙しい日々を過ごされている。
隣国のことだから、たとえ元我が国の国民だったとしても口出しするつもりはないけど、詳細や一緒に逃げた船員のことも調べなくてはならない。
その上で、東の国とは脱走防止の案を練らなければならないし、この春には領地にヴァイスと向かうから、その準備もある。
お体がひとつでは足りないくらいに、お忙しくされている。
「すまない、ティア。もう少しすれば落ち着くと思う」
「いいえ、私のことはお気になさらず。ヴァイスと大人しく待っていますわ。ね?ヴァイス」
「あう~」
私のことより、ヴィル様がお体を壊さないかの方が心配だわ。
私のことはお気になさらず、か。
かつて、同じような言葉をケレス様に投げかけたけど、根底が全く違うわ。
ケレス様に関しては、全く、全然、ちっとも興味がないから、私に関わらないでいてくれるならそっちはそっちで好きにして、という意味で言ったけど、今回は違う。
ヴィル様のことは信頼しているし、叶うことなら常に私を気にしていて欲しいけど、ヴィル様は筆頭公爵。
私を一番に考えることができない時もあるわ。
ヴィル様が私を気にして動けなくなるようなことがないように、お仕事の時は私のことは気になさらなくていいの。
背中合わせだったとしても、手を触れ合っていなくても、ヴィル様が私を想ってくれていることを信じられる。
だから、そんなお顔をなさらないで?
「ヴィル様、愛していますわ。こんな気持ちになった人はヴィル様だけです。離れていても、ヴィル様のお気持ちを疑うことはありませんわ。それにもしもヴィル様が私のことを愛していなかったとしても、それは良いのです。私がヴィル様を愛していますの。そしてヴィル様も私を大切にしてくださっている。それだけで十分ですわ」
「・・・愛している。まさか、ひと回りも年下の令嬢にこんな気持ちになるとは思わなかった。ティアを失えば、俺はただの抜け殻になるだろう。だから、もっと願いを言ってくれ。いつも側にいてくれと願ってくれ。いつも叶えられるわけではない。だが、俺はそれを言われても我儘とは思わない」
嬉しい。嬉しい。嬉しい。
ヴィル様の麗しいお顔を両手で包む。
こんな素敵で精悍な方が、私の言動で不安そうにして下さる。
ヴィル様の少し乾いた唇を受け入れながら、心が満たされていくのを感じた。
この方と出会えて本当に良かった。
その点だけは、ケレス様とミネルバさんに感謝するわ。
「あぅぅ~」
ヴァイスが、抱き合う私たちの足に掴まり立ち上がる。
その様子に、私たちは顔を合わせて微笑みあった。
大丈夫。この先なにがあっても、ヴィル様のお気持ちを信じられるし、私の気持ちも信じていただけると思うわ。
だからね、私のことはお気になさらず公爵としてのお仕事をなさって。
でも、ヴィル・グリフォン個人としては、私のことを好きでいてくださいね。
***おしまい***
隣国のことだから、たとえ元我が国の国民だったとしても口出しするつもりはないけど、詳細や一緒に逃げた船員のことも調べなくてはならない。
その上で、東の国とは脱走防止の案を練らなければならないし、この春には領地にヴァイスと向かうから、その準備もある。
お体がひとつでは足りないくらいに、お忙しくされている。
「すまない、ティア。もう少しすれば落ち着くと思う」
「いいえ、私のことはお気になさらず。ヴァイスと大人しく待っていますわ。ね?ヴァイス」
「あう~」
私のことより、ヴィル様がお体を壊さないかの方が心配だわ。
私のことはお気になさらず、か。
かつて、同じような言葉をケレス様に投げかけたけど、根底が全く違うわ。
ケレス様に関しては、全く、全然、ちっとも興味がないから、私に関わらないでいてくれるならそっちはそっちで好きにして、という意味で言ったけど、今回は違う。
ヴィル様のことは信頼しているし、叶うことなら常に私を気にしていて欲しいけど、ヴィル様は筆頭公爵。
私を一番に考えることができない時もあるわ。
ヴィル様が私を気にして動けなくなるようなことがないように、お仕事の時は私のことは気になさらなくていいの。
背中合わせだったとしても、手を触れ合っていなくても、ヴィル様が私を想ってくれていることを信じられる。
だから、そんなお顔をなさらないで?
「ヴィル様、愛していますわ。こんな気持ちになった人はヴィル様だけです。離れていても、ヴィル様のお気持ちを疑うことはありませんわ。それにもしもヴィル様が私のことを愛していなかったとしても、それは良いのです。私がヴィル様を愛していますの。そしてヴィル様も私を大切にしてくださっている。それだけで十分ですわ」
「・・・愛している。まさか、ひと回りも年下の令嬢にこんな気持ちになるとは思わなかった。ティアを失えば、俺はただの抜け殻になるだろう。だから、もっと願いを言ってくれ。いつも側にいてくれと願ってくれ。いつも叶えられるわけではない。だが、俺はそれを言われても我儘とは思わない」
嬉しい。嬉しい。嬉しい。
ヴィル様の麗しいお顔を両手で包む。
こんな素敵で精悍な方が、私の言動で不安そうにして下さる。
ヴィル様の少し乾いた唇を受け入れながら、心が満たされていくのを感じた。
この方と出会えて本当に良かった。
その点だけは、ケレス様とミネルバさんに感謝するわ。
「あぅぅ~」
ヴァイスが、抱き合う私たちの足に掴まり立ち上がる。
その様子に、私たちは顔を合わせて微笑みあった。
大丈夫。この先なにがあっても、ヴィル様のお気持ちを信じられるし、私の気持ちも信じていただけると思うわ。
だからね、私のことはお気になさらず公爵としてのお仕事をなさって。
でも、ヴィル・グリフォン個人としては、私のことを好きでいてくださいね。
***おしまい***
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