嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな

文字の大きさ
91 / 215

よろしくお願いします

しおりを挟む
「あの、ウェルズ様。ご迷惑をおかけいたします。ご無理でしたらそうおっしゃって下さい」

 リビエラ伯爵家にいらしてくださったウェルズ様と、お庭でお茶をいただくことになった。

 その際、婚約の件を切り出す。

 エレメンタル帝国には行きたいけど、ウェルズ様に嫌な思いをさせてまで行くのは違う気がする。

 ウェルズ様は、持っていたカップをテーブルに戻すと、首を横に振った。

「大丈夫だ。ちゃんと対価はいただくし、納得の上だ。リビエラ嬢こそ嫌ではないか?ルークとの契約では、周囲には婚約者と思われるように振る舞うことになる。もちろん、リビエラ嬢が誰か想う相手ができれば契約は終了するが」

「い、嫌だなんて、そんなことありません。ウェルズ様こそ、ウェルズ様をお慕いしている方に誤解されてしまうことになりますわ」

 私の我儘で、ウェルズ様とお好きな女性との関係が悪くなったら・・・

 そこまで考えて、チクン!と胸が痛んだ。

 ルークお兄様の言葉が頭をよぎる。

 私、本当にウェルズ様のことを好きなのかしら?
 だから、ウェルズ様に他にお好きな人がいるかもと考えたら胸が痛むの?

「それこそ心配いらない。俺はエレメンタル帝国では平民として暮らしているから、結婚したいと言ってくる相手なんていない」

 多分だけど・・・
もし本当に平民として暮らしているのなら、平民の方の中にウェルズ様をお好きな女性はいらっしゃると思う。

 ウェルズ様はとても・・・素敵な方だから。

 そういう方々に、私は敵対視されることになる。

 本当にそれでも、エレメンタル帝国に行きたい?

 自分に問いかける。

 エレメンタル帝国には、お父様やお母様、お姉様もいない。

 私を守ってくれる人たちのいない場所で、ちゃんと私はやっていける?

 甘い考えであちらに行ったら、契約を結んでくれたウェルズ様にも迷惑をかけることになる。

 人の悪意を向けられても、ウェルズ様の婚約者のふりをすることが出来るのか。

 ちゃんと立ち向かうことが出来るのか。

 何度も自問自答する。

 そんな私の頭の中に、ウィングバード公爵閣下の言葉が浮かんだ。

「君は自分が思っているよりも、価値のある人間だ。だから自分を卑下する考えはしない方がいい」

 あの頃、私はシリウス殿下のことで、結局身分には勝てないと考えていた。

 でも、そうじゃないと閣下は教えて下さった。

 ウェルズ様が私の婚約者のふりをしてくださるのは、王太子妃教育を終えた私を婚約者にと望む貴族がいるかもしれないから。

 私が今度は自分が想う相手と結婚したいと考えていると、理解してくれているから。

 そう。
ちゃんと顔を上げて生きていこうと決めたんじゃない。

 ウェルズ様がどうとか、言い訳ばかりしていないで、自分がどうしたいかちゃんと考えなきゃ。

 私はウェルズ様に頭を下げた。

「よろしくお願いします」

しおりを挟む
感想 577

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

あなたの愛はもう要りません。

たろ
恋愛
15歳の時にニ歳年上のダイガットと結婚したビアンカ。 この結婚には愛などなかった。 16歳になったビアンカはできるだけ目立たないように学校でも侯爵家でも大人しくしていた。 侯爵家で肩身の狭い思いをしながらも行くところがないビアンカはできるだけ問題を起こさないように過ごすしかなかった。 でも夫であるダイガットには恋人がいた。 その恋人にちょっかいをかけられ、ビアンカは我慢の限界を超える。 そして学園を卒業さえすればさっさと離縁して外国で暮らす。 その目標だけを頼りになんとか今の暮らしに耐えていた。 そして、卒業を控え「離縁して欲しい」その言葉を何度となく夫に告げた。 ✴︎今回は短めの話を投稿していく予定です。 (作者の時間の都合により)

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

処理中です...