嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな

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天と地ほどの

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「あなた、ハデス様の婚約者の座を辞退しなさい!あの方は私のものよ」

 こんなことを言う方は、過去にたくさんいたわ。

 そして揃いも揃って、言葉が通じないのよ。

「・・・どちら様でしょうか?」

 名前くらい名乗ってから話して欲しいわ。
 最低限の常識がないのよね、こういう方々って。

 私が理解ってて当たり前という前提で、話し出すんだもの。

「私は、ラティエラ伯母様の姪のロロナよ!私の顔も知らないなんて、これだから田舎者は嫌なのよ」

「・・・」

 別にローゼン王国は田舎じゃないわ。
私も、他国の王族までなら覚えているけど、皇妃様の妹様のお子様のことまでは知らないわ。

 エレメンタル帝国と国交してたのなら、調べてたと思うけど。

 こういう方々って、話せば話すほど疲れるのよね。

 でも・・・

 チラリとハンナを見ると、小さく頷かれた。

 ああ。やっぱりね。
私からハデス様を離したのね。

 ということは、ここでカタをつけるということかしら。

 まぁ、いつまでも関わられても面倒だし、の策略に乗るとしましょうか。

「ああ。契約結婚だというのに、その契約を無視して離縁されて出戻られたという侯爵家のご令嬢ですか?」

「!」

 ロロナ様は、扇を持った手を私に向かって振り上げる。

 私に振り下ろされようとした扇は、私に当たる前にバシッという音と共に折れ曲がって床に転がった。

「きゃあああ?」

 よほどの衝撃だったのか、ロロナ様が床に倒れている。

 だけど、ロロナ様も何が起きたのか分からないみたいだ。

 今、この場には私とハンナ、そしてロロナ様とロロナ様の侍女しかいない。

 ということは、ハンナかしら。

 ハデス様がおっしゃった通りに、ハンナが何かしたということ?

「な、な、何をしたのよっ・・・何で扇が・・・」

「大丈夫ですか?突然転ばれたからびっくりしましたわ。手をお貸ししましょうか?」

「けっ、結構よ!ちょっと!ボサっとしてないで、手を貸しなさい!」

 後ろに立つ侍女を怒鳴りつけて、立ち上がるロロナ様。

「それで、何とおっしゃられましたかしら?ハデス様との婚約を解消しろと?何故でしょう?お慕いしている方からの婚約の申し出を、何故お断りしなければなりませんの?」

「なっ、な、なんて図々しい女なのっ!伯爵令嬢風情がっ!身分不相応だと分からないの?身分も教養も容姿も、私とあなたとでは天と地ほどの差があるのよっ!」

「ああ。ジュエルが天で令嬢が地だな」

 後ろから伸びて来た手に、振り返らなくても誰か分かる。

「図々しいのはどちらだ。教養も容姿もジュエルの足元にも及ばないくせに」

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