拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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令嬢たちの怒りは物凄い。

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「ええ!ええ!サマンサ様のおっしゃる通りですわ。あの非常識な方は、私の婚約者にも」

「勝手に名前を呼び、腕に胸を押し付けますのよ。またそれをまんざらでもない顔で!」

「あら。シンシア様の婚約者は、ちゃんと拒んでらっしゃったではないですか。うちの婚約者など、言葉も優しく拒んでいるとは思えませんでしたわ」

 まあ、出るわ、出るわ。

 お茶会に招ばれていた、高位貴族のご令嬢たちの不満。

 どうやら彼女たちの婚約者は、そのお花畑ご令嬢にすり寄られている様子で、令嬢たちは治まりそうにない。

 まぁ、彼女たちは高位貴族のご令嬢。
 普段は、どれだけ不満に思っても口汚く相手を叱咤したりしない。

 扇子で口元を隠し、表情も変えず、やんわりと相手を嗜める程度。

 婚約者相手だからといって、他の目がある前で淑女としてのお面を外したりしない。

 婚約者はまだ他人だもの。
何かがあって婚約解消になった時に「アイツは素はああなんだ」とか変な噂を流されたら困るもの。

 相手が信用に値すると分かるまでは、内面は明かさないわ。

「本当に!甘えてくる相手にデレデレして!」

「殿方はみんな、あのような令嬢がお好きなのかしら!まるで娼婦ではないですか」

「そんなことを言ったら娼婦の方に失礼よ。あの方々はお仕事でなさっているのだもの。単に貞操観念のない人と一緒にしたら失礼ですわ」

 ああ。とうとう、婚約者への不満に話が変わってきたわ。

 そろそろ止めた方が良さそうね。

「皆様、そのあたりになさって?しばらく国を離れていた私には、皆様方と婚約者様の仲は分かりませんが、非常識な相手にこちらがまともに相手をしても無駄ですわ。彼らには人の言葉は通じませんのよ」

「も、申し訳ございません。クロエ様のご帰国をするために催したお茶会だというのに、私事でお耳汚しを」

「尋ねたのは私ですから、気になさらないで。それに、少しは不満も吐き出さないといけませんものね。私たちの婚約は、家と家の契約で政略結婚。よほどのことがない限り、解消されるものではありません。でも、だからこそ、お互い敬愛できる存在でありたいものです。ですから、もし・・・そのご令嬢に心を寄せるような婚約者がいらっしゃるようでしたら、後で教えてくださいませ。そのような方は、メルキオール帝国の高位貴族にはから」

「「「はい。クロエ様の御心のままに」」」

 元婚約者様やファンティーヌ様のような方が、次期メルキオール帝国の高位貴族として権力を持つなんて、あってはならないことだものね。


 
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