拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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気持ちに寄り添いたいですわ。

 私の発言の後、お茶会はお開きとなった。

 そして、誰ひとり帰らないところへ私の元へ歩み寄って来たのは、侯爵家と伯爵家のご令嬢だった。

「確か、ソルティア侯爵家のアグネス様と、フォレスコム伯爵家のドロシー様、でしたわね」

「「はい、クロエ様」」

「お二人の婚約者が?」

 誰も帰らなかったのは、情報を共有するためだ。

 私の問いかけに、二人は目線で頷き合い、先にアグネス様が口を開いた。

「私の婚約者は、ブッセ伯爵家の次男であるトーマス様と言います。私はソルティア侯爵家の嫡女なので、トーマス様は入婿になる予定なのですが・・・最近のトーマス様は、レグディア男爵令嬢のキティ様に傾倒しているのです」

「私はターナー伯爵家に嫁入り予定なのですが、婚約者であり嫡男のサリマン様がキティ様にご執心で」

 あら、まぁ。
まさか帝国にも、貴族としての義務を理解していない令息がいるとは思わなかったわ。

 元婚約者様の時は、伯母様の国だから穏便に済ませたけど、帝国の次代を担う方の場合は見逃すわけにはいかないわ。

「ブッセ伯爵家とターナー伯爵家ですわね。それでお二人は、その婚約はどうなさりたいのかしら」

 婚約を継続したいのか、解消したいのかによって、対応が変わるもの。

 アグネス様とドロシー様は顔を見合わせた後、それぞれ違う答えを私に返した。

「私は、婚約解消を望むつもりです。もちろん、両親が認めてくれなければ侯爵家の娘として政略結婚を受け入れるつもりですが、結婚しなければならないなら、白い結婚を希望しますわ。閨どころか触れられるのも嫌ですの」

「私は叶うならターナー伯爵家に嫁入りしたいですが、サリマン様は私と婚約解消しようとすると思います。でも、最後まで諦めたくないんです」

 私は、アグネス様の気持ちも、ドロシー様の気持ちも理解できる気がした。

 相手を政略結婚相手としてしか見ていなかったなら、婚約者がいながら他の令嬢にデレデレする男など婿に欲しくはないだろう。

 私だって、元婚約者様に触れられるのなんて絶対ごめんだもの。

 だけど、もし政略結婚相手としてでなく、好意を持った相手だったとしたら、自分が納得出来るまで諦められないと思うわ。

「お二人のお気持ちは分かりましたわ。とりあえずお二人とも、ご両親に実情をお話しください。残念ながら、私たちの結婚は家と家の契約です。私たちの希望だけで決められるものではありません。ただ・・・お二人のお気持ちに沿えるよう、私も微力ながらお手伝いいたしますわ」

「「クロエ様・・・ありがとうございます」」

 さて。
まずはその、お花畑令嬢とやらを見てみましょうか。

 
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