拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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捕縛するための?

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 ダンスが終わり、シリルとレグディア男爵令嬢が礼をとる。

 このあと女性のことを気に入れば、男性は歓談に誘い、そうでなければその場を去る。

 ダンスに誘ったのは女性側なので、男性のことをどう思おうと、誘われれば従わなければならない。

 シリルは片手で給仕からグラスを取ると、それをレグディア男爵令嬢に差し出した。

「王宮の果実水はとても美味しいんだ。どうぞ」

 そう言って、自分もグラスを取り口をつける。

 レグディア男爵令嬢は、シリルから受け取ったグラスに口をつけるわけでもなく、シリルを見つめていた。

 随分と、警戒心が強い。

 その様子に、シリルは彼女からグラスを取り上げた。

「飲みたくなかったのに、失礼したね」

 そのままグラスを給仕に手渡し、レグディア男爵令嬢から離れようとする。

 このままでは、せっかく知り合った令息を逃してしまう。

 そう思ったのだろう。

 彼女は、シリルが給仕に渡したグラスではなく、違うグラスを自らトレーから取り上げた。

「いえっ!いただきます」

「・・・無理しなくていいよ?」

「すみません!そんなつもりはなかったのです。あのっ・・・す、素敵な方だと思って、見惚れていて」

「ははっ。それは光栄だな」

 シリルの反応にホッとしたのか、彼女は手にしたグラスの果実水を飲み干した。

 綺麗なピンク色の果実水。
グラスの底にはチェリーが沈んでいた。

 トレーの上の他のグラスも、水色だったり、淡いグリーンだったりと色は違うが、全てに果実が沈んでいる。

 飲み干し果実も口にしたレグディア男爵令嬢は、にっこりとシリルに微笑みかけた。

「そういえば、まだお名前も伺っていませんでした」

 身分を聞いてから、シリルを手に入れよう。

 おそらくそう考えたのだろう。

 シリルはそんな彼女に、そっと手を差し出す。

『あちらで話をしよう』

「!」

 シリルに促されるままに動く体に、レグディア男爵令嬢の愛らしい顔が引きつったように見える。

 彼女は、何かを言おうと口を開こうとするけど、それが声にはならない。

 シリルはそんな彼女の手を引いて、スタスタと会場の外へ繋がる扉に向かう。

 そしてそのまま扉を出て行った。

「ルーファスお兄様。あれは?」

「ん?ああ、アレはマキシミリオン王国で新たに開発された相手の意思を奪う薬だ。もっとも薬の持続時間は三分だけどね」

「そんなものが?」

 そんな危険な薬が開発されたの?
一体、どういうつもりで?

「目的は、闇組織を捕まえるためだけど、秘密裏に捕縛したい時とかには役立つだろう?」

 それはそうかもしれないけど。

 
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