3 / 79
シリル・イグリットの場合
マーガレット・カイサル公爵令嬢
しおりを挟む
マーガレットは、公爵邸に戻り着替えを済ませると、目の前に座るシリルに視線を向けた。
精巧に作られた人形のように、この世のものではないほどの美貌のご令嬢。
それがシリル・イグリット伯爵令嬢である。
マーガレットの一番大切な友人だ。
マーガレットは、ガーデンプレイス王国筆頭公爵家の長女である。
三歳年上の兄と、二歳年下の弟がいる。
ルビーのような瞳と深紅の緩やかにウェーブした髪のマーガレットは、公爵令嬢である矜持を持って生きていた。
だから、学園にも首席入学するつもりで勉強した。
だが、いざ入学してみると、満点首席は見知らぬ令嬢で、自分は次点であった。
その令嬢が、シリルである。
それ以来、どうにかシリルを超えようと努力するものの、満点を常に取られては並び立つ事はできても超える事はできない。
シリルに欠点があるとするならば、婚約者がアレなことくらいだろう。
表情が変わらないことも、シリルならば欠点にすらならない。
婚約者に何を言われても淡々としているシリルに代わり、ウォルターに文句を言っているうちに、マーガレットはシリルと親しくなっていった。
「セレーネ様とベルモット様がおいでになるまで、お茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
「しかし、あのアルトガン様の腹立たしいこと!シリル様も、文句を言ってやればよろしいのに」
紅茶のカップを手に持ったまま、マーガレットはプンプンと怒っている。
その様子に、シリルは僅かに表情を変えた。
「私は気にしておりません。それに、マーガレット様が代わりに怒ってくださるので。私はそれで十分ですわ」
「もう!シリル様は寛大過ぎますわ。アルトガン様にシリル様はもったいないですわ。陛下もどうしてアルトガン様なんかと!」
「マーガレット様」
「・・・ッ!申し訳ありません。言葉が過ぎましたわ」
眉を顰めながらも、マーガレットは己の言葉を恥じた。
いくら好きではないからと、このように相手を貶す言葉を口にしていては、ウォルターと同じになってしまう。
そもそも当人であるシリルが何も言わないのに、第三者にしか過ぎない自分がどうこう言うべきではないのだ。
マーガレットはこのままいけば、いずれ王太子妃、王妃となる。
そんな自分が、感情に左右されて他者を貶すような言葉を口にするようではいけない。
マーガレットは、ガーデンプレイス王国の王太子であるアンドリューの婚約者なのだから。
精巧に作られた人形のように、この世のものではないほどの美貌のご令嬢。
それがシリル・イグリット伯爵令嬢である。
マーガレットの一番大切な友人だ。
マーガレットは、ガーデンプレイス王国筆頭公爵家の長女である。
三歳年上の兄と、二歳年下の弟がいる。
ルビーのような瞳と深紅の緩やかにウェーブした髪のマーガレットは、公爵令嬢である矜持を持って生きていた。
だから、学園にも首席入学するつもりで勉強した。
だが、いざ入学してみると、満点首席は見知らぬ令嬢で、自分は次点であった。
その令嬢が、シリルである。
それ以来、どうにかシリルを超えようと努力するものの、満点を常に取られては並び立つ事はできても超える事はできない。
シリルに欠点があるとするならば、婚約者がアレなことくらいだろう。
表情が変わらないことも、シリルならば欠点にすらならない。
婚約者に何を言われても淡々としているシリルに代わり、ウォルターに文句を言っているうちに、マーガレットはシリルと親しくなっていった。
「セレーネ様とベルモット様がおいでになるまで、お茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
「しかし、あのアルトガン様の腹立たしいこと!シリル様も、文句を言ってやればよろしいのに」
紅茶のカップを手に持ったまま、マーガレットはプンプンと怒っている。
その様子に、シリルは僅かに表情を変えた。
「私は気にしておりません。それに、マーガレット様が代わりに怒ってくださるので。私はそれで十分ですわ」
「もう!シリル様は寛大過ぎますわ。アルトガン様にシリル様はもったいないですわ。陛下もどうしてアルトガン様なんかと!」
「マーガレット様」
「・・・ッ!申し訳ありません。言葉が過ぎましたわ」
眉を顰めながらも、マーガレットは己の言葉を恥じた。
いくら好きではないからと、このように相手を貶す言葉を口にしていては、ウォルターと同じになってしまう。
そもそも当人であるシリルが何も言わないのに、第三者にしか過ぎない自分がどうこう言うべきではないのだ。
マーガレットはこのままいけば、いずれ王太子妃、王妃となる。
そんな自分が、感情に左右されて他者を貶すような言葉を口にするようではいけない。
マーガレットは、ガーデンプレイス王国の王太子であるアンドリューの婚約者なのだから。
604
あなたにおすすめの小説
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした
ごろごろみかん。
恋愛
前世の記憶を取り戻した伯爵令嬢のリンシア。
自分の婚約者は、最近現れた聖女様につききっきりである。
そんなある日、彼女は見てしまう。
婚約者に詰め寄る聖女の姿を。
「いつになったら婚約破棄するの!?」
「もうすぐだよ。リンシアの有責で婚約は破棄される」
なんと、リンシアは聖女への嫌がらせ(やってない)で婚約破棄されるらしい。
それを目撃したリンシアは、決意する。
「婚約破棄される前に、こちらから破棄してしてさしあげるわ」
もう泣いていた過去の自分はいない。
前世の記憶を取り戻したリンシアは強い。吹っ切れた彼女は、魔法道具を作ったり、文官を目指したりと、勝手に幸せになることにした。
☆ご心配なく、婚約者様。の修正版です。詳しくは近況ボードをご確認くださいm(_ _)m
☆10万文字前後完結予定です
(完結)家族にも婚約者にも愛されなかった私は・・・・・・従姉妹がそんなに大事ですか?
青空一夏
恋愛
私はラバジェ伯爵家のソフィ。婚約者はクランシー・ブリス侯爵子息だ。彼はとても優しい、優しすぎるかもしれないほどに。けれど、その優しさが向けられているのは私ではない。
私には従姉妹のココ・バークレー男爵令嬢がいるのだけれど、病弱な彼女を必ずクランシー様は夜会でエスコートする。それを私の家族も当然のように考えていた。私はパーティ会場で心ない噂話の餌食になる。それは愛し合う二人を私が邪魔しているというような話だったり、私に落ち度があってクランシー様から大事にされていないのではないか、という憶測だったり。だから私は・・・・・・
これは家族にも婚約者にも愛されなかった私が、自らの意思で成功を勝ち取る物語。
※貴族のいる異世界。歴史的配慮はないですし、いろいろご都合主義です。
※途中タグの追加や削除もありえます。
※表紙は青空作成AIイラストです。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる