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シリル・イグリットの場合
アンドリュー・ガーデンプレイス王太子殿下
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アンドリュー・ガーデンプレイス。
ガーデンプレイス王国の王太子殿下で、現在十八歳である。
金髪を襟元で束ね、夏空のような青い瞳をしているアンドリューは、マーガレット・カイサル公爵令嬢の婚約者だ。
いわゆる幼馴染の二人は、アンドリューが十歳の時に婚約した。
勝気な発言の多いマーガレットの、実は寂しがりやで友人を思いやれる優しいところを、アンドリューは誰よりもよくわかっていて、マーガレットを溺愛している。
「それで、シリル様が美味しいお茶のお礼にと刺繍したハンカチをくださいましたの!」
嬉しそうに薔薇の刺繍入りのハンカチを自分に見せるマーガレットを、アンドリューは愛おしく思った。
マーガレットはシリル・イグリット伯爵令嬢を、大切な、大切な友人と思っている。
シリル・イグリット伯爵令嬢。
氷姫の別名を待つ、とても容姿の優れた令嬢だ。
あの無表情がアルカイックスマイルで固まっていたとしたら、彼女を王太子妃にと望む貴族もいただろう。
それほどまでに、彼女は優秀である。
王立学園入学時、首席入学を目指していたマーガレットは、次点であることをとても悔しがっていた。
アンドリューとしては、たとえ表情があろうと、どれだけ美しかろうと、どれだけ優秀であろうと、シリルを婚約者にと願うつもりはない。
アンドリューが望むのは、マーガレットだけであり、相手が誰であろうと婚約者の挿げ替えをするつもりもない。
「良かったね、メグ」
「はい!リュー様」
大切そうにハンカチを抱きしめるマーガレットのことを、アンドリューは可愛くて仕方ない。
「ウォルター・アルトガン。あまり、おいたが過ぎるようなら、罰を与えないとな」
「リュー様?何かおっしゃいましたか?」
「いや、何でもないよ。それよりそのハンカチ、使うのかい?それとも宝物にするのかな?飾るのなら、額を用意しようか?」
アンドリューは、マーガレットが刺繍してプレゼントしてくれたハンカチは、毎年一枚は額に入れて飾ってある。
あの部屋はアンドリュー個人の寝室なので、掃除のメイド以外は入ることはない。
マーガレットと結婚しても、使うのは夫婦の寝室なので、マーガレットの目に触れることもない。
使わなければマーガレットが悲しむので、保存しておくのは毎年一枚だけと我慢している。
そのせいで、思わず額と言ってしまったわけだが・・・
「でも、使わないとシリル様が悲しまれるかも。そうだわ。私のハンカチで包んで、汚れないようにしておきましょう。使わなくても持っているのを見せればいいのよね」
「そうだね。メグは賢いね」
どこかズレた二人である。
ガーデンプレイス王国の王太子殿下で、現在十八歳である。
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「それで、シリル様が美味しいお茶のお礼にと刺繍したハンカチをくださいましたの!」
嬉しそうに薔薇の刺繍入りのハンカチを自分に見せるマーガレットを、アンドリューは愛おしく思った。
マーガレットはシリル・イグリット伯爵令嬢を、大切な、大切な友人と思っている。
シリル・イグリット伯爵令嬢。
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あの無表情がアルカイックスマイルで固まっていたとしたら、彼女を王太子妃にと望む貴族もいただろう。
それほどまでに、彼女は優秀である。
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アンドリューとしては、たとえ表情があろうと、どれだけ美しかろうと、どれだけ優秀であろうと、シリルを婚約者にと願うつもりはない。
アンドリューが望むのは、マーガレットだけであり、相手が誰であろうと婚約者の挿げ替えをするつもりもない。
「良かったね、メグ」
「はい!リュー様」
大切そうにハンカチを抱きしめるマーガレットのことを、アンドリューは可愛くて仕方ない。
「ウォルター・アルトガン。あまり、おいたが過ぎるようなら、罰を与えないとな」
「リュー様?何かおっしゃいましたか?」
「いや、何でもないよ。それよりそのハンカチ、使うのかい?それとも宝物にするのかな?飾るのなら、額を用意しようか?」
アンドリューは、マーガレットが刺繍してプレゼントしてくれたハンカチは、毎年一枚は額に入れて飾ってある。
あの部屋はアンドリュー個人の寝室なので、掃除のメイド以外は入ることはない。
マーガレットと結婚しても、使うのは夫婦の寝室なので、マーガレットの目に触れることもない。
使わなければマーガレットが悲しむので、保存しておくのは毎年一枚だけと我慢している。
そのせいで、思わず額と言ってしまったわけだが・・・
「でも、使わないとシリル様が悲しまれるかも。そうだわ。私のハンカチで包んで、汚れないようにしておきましょう。使わなくても持っているのを見せればいいのよね」
「そうだね。メグは賢いね」
どこかズレた二人である。
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