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シリル・イグリットの場合
マーガレット・カイサル公爵令嬢
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マーガレットは、公爵邸に戻り着替えを済ませると、目の前に座るシリルに視線を向けた。
精巧に作られた人形のように、この世のものではないほどの美貌のご令嬢。
それがシリル・イグリット伯爵令嬢である。
マーガレットの一番大切な友人だ。
マーガレットは、ガーデンプレイス王国筆頭公爵家の長女である。
三歳年上の兄と、二歳年下の弟がいる。
ルビーのような瞳と深紅の緩やかにウェーブした髪のマーガレットは、公爵令嬢である矜持を持って生きていた。
だから、学園にも首席入学するつもりで勉強した。
だが、いざ入学してみると、満点首席は見知らぬ令嬢で、自分は次点であった。
その令嬢が、シリルである。
それ以来、どうにかシリルを超えようと努力するものの、満点を常に取られては並び立つ事はできても超える事はできない。
シリルに欠点があるとするならば、婚約者がアレなことくらいだろう。
表情が変わらないことも、シリルならば欠点にすらならない。
婚約者に何を言われても淡々としているシリルに代わり、ウォルターに文句を言っているうちに、マーガレットはシリルと親しくなっていった。
「セレーネ様とベルモット様がおいでになるまで、お茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
「しかし、あのアルトガン様の腹立たしいこと!シリル様も、文句を言ってやればよろしいのに」
紅茶のカップを手に持ったまま、マーガレットはプンプンと怒っている。
その様子に、シリルは僅かに表情を変えた。
「私は気にしておりません。それに、マーガレット様が代わりに怒ってくださるので。私はそれで十分ですわ」
「もう!シリル様は寛大過ぎますわ。アルトガン様にシリル様はもったいないですわ。陛下もどうしてアルトガン様なんかと!」
「マーガレット様」
「・・・ッ!申し訳ありません。言葉が過ぎましたわ」
眉を顰めながらも、マーガレットは己の言葉を恥じた。
いくら好きではないからと、このように相手を貶す言葉を口にしていては、ウォルターと同じになってしまう。
そもそも当人であるシリルが何も言わないのに、第三者にしか過ぎない自分がどうこう言うべきではないのだ。
マーガレットはこのままいけば、いずれ王太子妃、王妃となる。
そんな自分が、感情に左右されて他者を貶すような言葉を口にするようではいけない。
マーガレットは、ガーデンプレイス王国の王太子であるアンドリューの婚約者なのだから。
精巧に作られた人形のように、この世のものではないほどの美貌のご令嬢。
それがシリル・イグリット伯爵令嬢である。
マーガレットの一番大切な友人だ。
マーガレットは、ガーデンプレイス王国筆頭公爵家の長女である。
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ルビーのような瞳と深紅の緩やかにウェーブした髪のマーガレットは、公爵令嬢である矜持を持って生きていた。
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それ以来、どうにかシリルを超えようと努力するものの、満点を常に取られては並び立つ事はできても超える事はできない。
シリルに欠点があるとするならば、婚約者がアレなことくらいだろう。
表情が変わらないことも、シリルならば欠点にすらならない。
婚約者に何を言われても淡々としているシリルに代わり、ウォルターに文句を言っているうちに、マーガレットはシリルと親しくなっていった。
「セレーネ様とベルモット様がおいでになるまで、お茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
「しかし、あのアルトガン様の腹立たしいこと!シリル様も、文句を言ってやればよろしいのに」
紅茶のカップを手に持ったまま、マーガレットはプンプンと怒っている。
その様子に、シリルは僅かに表情を変えた。
「私は気にしておりません。それに、マーガレット様が代わりに怒ってくださるので。私はそれで十分ですわ」
「もう!シリル様は寛大過ぎますわ。アルトガン様にシリル様はもったいないですわ。陛下もどうしてアルトガン様なんかと!」
「マーガレット様」
「・・・ッ!申し訳ありません。言葉が過ぎましたわ」
眉を顰めながらも、マーガレットは己の言葉を恥じた。
いくら好きではないからと、このように相手を貶す言葉を口にしていては、ウォルターと同じになってしまう。
そもそも当人であるシリルが何も言わないのに、第三者にしか過ぎない自分がどうこう言うべきではないのだ。
マーガレットはこのままいけば、いずれ王太子妃、王妃となる。
そんな自分が、感情に左右されて他者を貶すような言葉を口にするようではいけない。
マーガレットは、ガーデンプレイス王国の王太子であるアンドリューの婚約者なのだから。
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