はい!喜んで!

みおな

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シリル・イグリットの場合

ベルモット・ラックス侯爵令嬢

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 ベルモット・ラックス侯爵令嬢。

 ラックス侯爵家の三女で、二十五歳の嫡男、二十一歳の長女、十八歳の次女がいる。

 すでに嫡男は妻を迎え子も授かり、長女も別の侯爵家に嫁に行っている。

 次女は、若くして子爵を継いだ学園時代の学友と婚約していて、半年後に婚姻する予定だ。

 三女のベルモットは、しっかり者の姉二人と優しい兄に大切にされて育った大人しい性格だ。

 侯爵家の娘として、キチンとマナーを身につけて勉強も特別クラスに入れるほどだが、本人は一人部屋で本を読んだり刺繍をしたりするのが好きなタイプだ。

 柔らかな蜂蜜色の髪と瞳をしていて、小柄で容姿も年齢よりも幼く見える。

 そんなベルモットがシリルと知り合ったのは、入学してから一週間後。

 正確に言うならば、同じクラスなので顔と名前は知っていたのだが、会話を交わしたのが一週間後なのである。

 その日、ベルモットは嫁いだ姉からもらったハンカチを落として探していた。

 そして、噴水に落ちていたそれを水に浸かってまで拾ってくれたのがシリルである。

 膝ほどの深さの噴水とはいえ、貴族令嬢が制服を濡らしてまで噴水に入ってくれたこと。

 まだ水も冷たい時期なこと。

 涙ながらにお礼を言うベルモットに、シリルは「大切なものだから」と言ってくれた。

 その時から、ベルモットはシリルのことが大好きになった。

 他人に言わせれば、たかがハンカチかもしれない。

 だけど、ベルモットにとっては姉からもらった宝物だ。

 嫁ぐ時に姉が、ウェディングドレスと共布に姉自ら刺繍をして、ベルモットが幸せな結婚をできるようにと願ってくれたハンカチなのだ。

 シリルは無口だし、ベルモットも自分からどんどん話すタイプではない。

 だけど、マーガレットやセレーネの話に相槌を打ちながら、シリルと共に過ごすことがベルモットにとって大切な時間となった。

 シリルに、おすすめの本を教えてもらったり逆におすすめしたり、刺繍の図案の相談をしたり。

 どちらかといえば一人を好むベルモットが、シリルやマーガレット、セレーネとだけは共に過ごすことが楽しかった。

 ベルモットの家族も、ベルモットが以前よりも明るくなり、友人を得たことをとても喜んだ。

 ベルモットの婚約者である隣国の公爵令息も、離れて過ごしている婚約者が、楽しそうに過ごしていることを嬉しく思った。

 送られてくる手紙の内容が、シエルを筆頭に友人のことばかりなことには少々ヤキモチを焼いたが。

 概ね、幸せな悩みである。
 
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