はい!喜んで!

みおな

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シリル・イグリットの場合

ラルフ・フロスト伯爵令息

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 ラルフ・フロスト伯爵令息。

 セレーネ・ギュンター侯爵令嬢の婚約者である。

 キール・トーラス伯爵令息、今はギュンター侯爵家の婿養子だが、彼の従弟になる。

 トーラス伯爵は、ラルフの父フロスト伯爵の兄だ。

 ラルフの父は、フロスト伯爵家の嫡女であった母と結婚して、フロスト伯爵の爵位を継いだ。

 ガーデンプレイス王国は、女性が爵位を継ぐことは出来ない。

 だから後継のいない貴族家は、自家を任せられる相応しい婿を早いうちから探す。

 ラルフの従兄は、能力だけでなく愛情をもってギュンター侯爵家の令嬢と婚姻した。

 その婚姻式で出会ったのが、セレーネ・ギュンター侯爵令嬢、従兄の妻の妹だ。

 鳶色の髪と瞳をしたセレーネは、周囲から『淑女の鑑』と呼ばれていた。

 綺麗な所作に、完璧なマナー。

 だが、婚姻式で姉の幸せを願って涙を流した姿を見た時、ラルフの心が震えた。

 彼女の涙を拭うのは自分でありたい、そう思った。

 だから、釣書を送った。

 ラルフは、自分のことを平凡だと思っている。

 焦茶色の髪にエメラルド色の瞳。
中肉中背で、悪くはないが特別整った容姿だとも思っていない。

 実際、令嬢たちとは普通に会話もするが、特別視されることもないという程度である。

 勉強の方は、それなりには出来た。
伯爵家とはいえ、嫡男である。

 家を継ぐという責任は自覚していて、領地経営の勉強もしっかりと取り組んだ。

 トップクラスではなかったものの、特別クラスには在籍し卒業した。

 現在は、伯爵である父に付いて領地経営や伯爵としての仕事を手伝いながら学んでいる。

 総評すると、ラルフはとても真面目な男である。

 それが良かったのか、セレーネはラルフを選んでくれた。

「僕を選んでくれた理由を聞きても?」

「なら、私に釣書を送ってくださった理由を聞いてもよろしいですか?それともフロスト伯爵様が?」

「いや、僕が父に頼んだんだ。格上のご令嬢だから断られるのを覚悟しろと言われたよ。でも、送らなければ僕にチャンスなんてないと思った。選ばれなくてもちゃんと自分の気持ちを示したいと思った。釣書を送ったのは、君が悲しい時、苦しい時に支えたいと思ったから。嬉しい時、楽しい時に笑顔を見せて欲しいと思ったから」

 つまりは、ラルフはセレーネのことが好きなのである。

「ありがとうございます。私も同じですわ。お義兄様からお話は伺っておりましたの。婚姻式でお姿をお見かけして、胸が高まりましたの。だからお受けしましたのよ」

 セレーネはにっこりと微笑んだ。
淑女の笑みでなく、心から嬉しそうに。
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