はい!喜んで!

みおな

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シリル・イグリットの場合

キャンディ・ワッケインの思惑

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「お疲れ様、サリー」

 サリーと呼ばれた少女は、シリル・イグリットの前で跪いていた。

 真っ白な髪を襟元で束ね、グレーの瞳をした少女をウォルターが見ても、それがキャンディ・ワッケイン男爵令嬢と同一人物だとは気付かないだろう。

「シリル様、ただいま戻りました」

「ありがとう、サリー。サリーのおかげで無理矢理結ばれた婚約を撤回することができたわ」

「あのような男に、シリル様のお相手が務まるわけがありません。少しでもお役に立てたなら良かったです」

 ピンク色の髪をツインテールにして、ウォルターに甘えていた面影はそこにはない。

 そこにいるのは、シリル・イグリットという主君に忠実な臣下である。

の方は順調かしら?」

「まだ連絡は届いていませんが、問題ないかと」

「そうね。ならこちらも行きましょうか」

「はい。次はスティングレイ王国になります」

 二人はそのまま屋敷を後にする。

 数日後、学園にシリルが来ないことにマーガレットは父親と婚約者に不安を訴えた。

 婚約者の願いを聞き、何かあったのでは?と王家が動く。

 イグリット伯爵家の屋敷に王家の騎士が訪ねてきたときには、屋敷には誰も存在せず、当主の部屋の机の上に手紙が残されていただけだった。

 王家に宛てた手紙には、伯爵位の返上と書かれていて、屋敷の中には使用人ひとり残っていなかった。

 同じように残されていた手紙は三通。

 カイサル公爵家のマーガレット宛て。

 ギュンター侯爵家のセレーネ宛て。

 ラックス侯爵家のベルモット宛て。

 友人として共に過ごした三人には、別れの挨拶もなくいなくなることの詫びと、これまでの礼、そして婚約者と共に幸せになって欲しいという願いが書かれていた。

 マーガレットたちは父親に頼み、シリルの行方を探したが、その足取りは全く掴むことが出来ず、しかもキャンディ・ワッケイン男爵家もイグリット伯爵家と同じように、もぬけの殻となっていた。

 こうして、アルトガン公爵家の嫡男の不貞による後継交代は、その元婚約者と不貞相手の家族を含めての失踪という、想像もできない結末を迎えた。
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