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第2章
婚約者の怒り《サイード視点》
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どうしてこうなった?
目の前で、僕を責め立てるように話す婚約者に戸惑いが隠せない。
庭園で待ち合わせをしていたキャンディが転んでいた。
そして、その目の前にリティカ・クラランス伯爵令嬢の姿があった。
キャンディに慌てて駆け寄り、何があったのかと問いかけたら、植物に足を掴まれたと言って涙をこぼした。
リティカ・クラランス伯爵令嬢は、魔術師団副団長の息女だ。
キャンディの言葉を聞いた途端、僕は彼女が犯人だと思った。
キャンディの涙に、僕は気づいたらクラランス嬢の頬を張っていた。
目の前で倒れたクラランス嬢に、彼女の婚約者であるブラン・ビゼット侯爵令息が駆け寄った。
そしてー
「何をなさったのですか?第2王子殿下」
冷ややかな、それでいて凛とした声が響いたのだった。
ヴィヴィ・ヴァレリア公爵令嬢。
僕の婚約者である彼女と会うのは、いつぶりだろうか。
キャンディに出会ってから、僕は彼女とほとんど会っていない。
お茶会もキャンセルし、学園に入学してからはクラスも違うこともあって、全くといっていいほど会っていなかった。
入学式で彼女を責めて、それをユサールたちに責められた時も、ヴィヴィは僕に対して何も言わなかった。
学園に通うようになって、お昼も帰りも全く、共にしようとしない僕に苦言すら言ってくることもなかった。
彼女は完璧な淑女で、感情をあらわにすることなど1度もなかった。
そのヴィヴィが、目の前で怒りを見せている。
「ヴァレリア嬢。ちょっといいかな?」
クラランス嬢の肩を抱いて立ち上がったブランが、ヴィヴィにクラランス嬢を任せながら僕の目の前に立った。
その、僕を睨みつける瞳に、ユサールとラグヌスを思い出した。
「何故、リティカを殴った?」
「・・・キャンディが、植物に足を掴まれたと・・・そんなことができるのは魔術師団の人間くらいで・・・」
「だから、目の前にいたリティカを犯人だと?また確認もせずに責めたのか?」
また・・・
そうだ。僕はユサールの時も、ラグヌスの時も、証拠もなく相手を責めた。
いや。ヴィヴィの時も、ヴィヴィが転ばせたのではないのに、彼女を責め立てた。
そして、ユサールもラグヌスも僕から離れていった。
「ブラン・・・」
「僕はそんな愚かな王子付きになりたくない。それに、どんな賢王であろうと、大切な婚約者に手をあげた相手に傅くつもりはない。側近候補は他をあたってもらいたい」
ブランも、僕から離れていってしまうのか。どうして・・・
いや。今回のことは手をあげた僕が悪いことは分かっている。
だけど、どうしてこんなことになってしまったんだ?
目の前で、僕を責め立てるように話す婚約者に戸惑いが隠せない。
庭園で待ち合わせをしていたキャンディが転んでいた。
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リティカ・クラランス伯爵令嬢は、魔術師団副団長の息女だ。
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キャンディの涙に、僕は気づいたらクラランス嬢の頬を張っていた。
目の前で倒れたクラランス嬢に、彼女の婚約者であるブラン・ビゼット侯爵令息が駆け寄った。
そしてー
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冷ややかな、それでいて凛とした声が響いたのだった。
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キャンディに出会ってから、僕は彼女とほとんど会っていない。
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その、僕を睨みつける瞳に、ユサールとラグヌスを思い出した。
「何故、リティカを殴った?」
「・・・キャンディが、植物に足を掴まれたと・・・そんなことができるのは魔術師団の人間くらいで・・・」
「だから、目の前にいたリティカを犯人だと?また確認もせずに責めたのか?」
また・・・
そうだ。僕はユサールの時も、ラグヌスの時も、証拠もなく相手を責めた。
いや。ヴィヴィの時も、ヴィヴィが転ばせたのではないのに、彼女を責め立てた。
そして、ユサールもラグヌスも僕から離れていった。
「ブラン・・・」
「僕はそんな愚かな王子付きになりたくない。それに、どんな賢王であろうと、大切な婚約者に手をあげた相手に傅くつもりはない。側近候補は他をあたってもらいたい」
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だけど、どうしてこんなことになってしまったんだ?
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