気弱令嬢の悪役令嬢化計画

マズイです！逃げなければ！

「ぜ、全属性の上にこの魔力量は！」

　慌てた教会の担当者が、教会のお偉いさんである神官長を呼んで来てしまった。

　うわーん。マズい。マズい。逃げられなくなってしまった。

　水晶柱が劣化してたで押し通すつもりだったのに！

　フィラデルフィア公爵家は、兄ズも二属性も持ちだし、姉のエリーゼに至っては聖女。

　そうでなくても、他の貴族より魔法に関して適合性がある。

　あ。聖女の魔力である聖の魔力はないと思うけど。

　白金にキラキラ光ったりはしてないし。

　あの魔力は特殊だから、普通の、よく聞く精霊魔法的な？魔力とは一線を画している。

　にしても、全属性って。
そういうヤバいやつって、教会とか王家とかに保護？されるやつじゃん。

「お・・・お父様！お母様！怖いっ」

　お母様に抱きつき、ガクブルと震えて見せる。

　お父様、お母様、兄ズ、エリーゼ！
　今こそ、アイリーン溺愛の成果を見せる時！

「まぁぁ！かわいそうに、こんなに震えて！旦那様、早く屋敷に戻りましょう！」

「え、あ、ちょ、ちょっとお待ちください、フィラデルフィア公爵夫人！お嬢様にはもっと詳しく調査を・・・」

「水晶柱が壊れましたのに、どうやって調べ直すのです？詳しく調べることのできる魔道具を準備するにも時間がかかるでしょう。準備が出来たら、フィラデルフィア公爵邸に連絡を。アイリーン、魔法が使えるようになるのは、もう少し待ちましょうね？」  

　ストッパーを外してもらわないと、魔法は使えない。

　でも、キチンとした測定ができていない私のストッパーを外すべきではない。

　お母様はそう判断したみたい。

　私としても、さすがに全属性とか、転生チートにもほどがあると思うし、魔力量に関しても問題ありまくりである。

　軟禁？されかねない。
ここは逃げるが勝ちな気がする。

「はい、お母様」

「いい子ね、アイリーン。さ、旦那様、帰りましょう。王家には、旦那様からもお知らせしてくださいませね」

「あ、ああ。分かった」

　こういう場合、お母様に逆らうのは愚者のすることである。

　なので、いそいそとお父様に兄ズ、エリーゼも帰ろうとするのだけど、教会の担当者も神官長も、空気が読めなかった。

「お待ち下され！全属性など王国創立後、初めてのこと！徹底的に調べなければなりません！お嬢様は教会にてお預かりいたします！」

「・・・ふふっ。ふふふっ。ふふふふふっ」

「お、お母様？」

　え？お母様から冷気が漂って来てるんだけど？

　いやいやいや。その笑顔もめっちゃ怖いんですけどっ？