気弱令嬢の悪役令嬢化計画

私はアイリーン・フィラデルフィア！

　カイン様のことを、恋愛的な意味で好きだと気付いた。

　私、恋してもいいのかな。

　アイリーンになって、ランディに殺される運命を覆したくて、そしたら家族がアイリーンのことを愛してくれていることが分かって・・・

　ランディも両親のせいで歪んでたことも分かって、ちゃんとお互いが幸せになれる相手と出会えて。

　兄ズたちもエリーゼも、ちゃんと幸せな結婚をして、魅了魔法を使うキララも幸せになって・・・

　魔法も使えるようになって、こんなふうに魔法を使って旅が出来て。

　偽装婚約だったはずなのに、一緒にいるのが楽しくて。

　いつのまにか、恋をしていた。

「カイン様。私、色んなところに行ってみたいんです」

「うん。たくさん旅をしよう」

「カイン様って、王族のままでいるんですか？」

「アイリーンは、どうしたい？爵位をもらうと責務が発生するけど、アイリーンが自由に過ごせるようにするよ」

　カイン様は私を横抱きにしたまま、ちゃんと答えてくれた。

「私は自由でいたいけど、どこかへ行くならカイン様と一緒がいいです」

「アイリーン？」

「カイン様となら、ずっと楽しくて、もし辛いことや悲しいことがあっても支え合って乗り越えていける気がするんです。カイン様、私をお嫁さんにしてくれますか？」

「・・・」

　カイン様の無言が苦しい。

　やっぱり、駄目なのかな？歳の差あり過ぎるし、ちょっと難しいのかな。

　と、カイン様がギュッと私のことを抱きしめた。

「カイン様？」

「夢みたいだ・・・」

「そんな大袈裟な」

「だって、アイリーンは僕のことを別に恋愛対象として見ていなかっただろ？サンセット公爵令息との婚約を回避できれば、僕はお役御免になると思ってた。アイリーンといると色んなことが楽しくて、もっと一緒にいたいと思った。兄上のことも感謝してる。でも兄上のことがなくても、アイリーンのことをもっともっと好きになったと思うよ」

　カイン様は私を抱きしめたまま、そう言った。

　確かに最初は、偽装婚約だった。

　私もカイン様に恋愛感情なんて持ってなくて、でも一緒にいると楽しいからこのまま政略結婚してもいいと思ってた。

　カイン様となら。

　この先もきっと楽しい。

　ドラゴンを発見して、背中に乗って旅に出ようと言ったらきっと笑いながら付き合ってくれる。

「カイン様、大好きです。浮気したら、お仕置きしますからね」

「ははっ。そんな日が来たら、ちょんぎっていいよ」

　もう私は、自分の言いたいことも言えない気弱令嬢じゃない。

　言いたいことははっきり言うし、したいことは全部やる。

　大切な家族も、大切な友人も、大切な婚約者も、みんなみんな私が守ってみせる。

　私は、アイリーン・フィラデルフィア。

　誰にも負けない。


◇◇◇◇◇end◇◇◇◇◇

　これにて完結です。
これからのアイリーンは、カインと共に楽しい毎日を過ごしていくでしょう。

　ドラゴンを、新たなペットにしたのかは、皆様の夢の中でお確かめ下さい。