35 / 51
34
しおりを挟む
当然のことながら、シスルは顔をしかめた。
婚約者の自分が離れることを是としない、と言いたそうだった。
だから、シスルが口を開く前に、再度重ねた。
「シスル・フロックス公爵令息様。我が兄エルムを諭し連れ戻して下さい。それが貴方のお役目でしょう?」
婚約者のアイリスとしてでなく、王女アイリスとして告げた。
そして、シスルはそれを理解できないほど、愚かな人ではなかった。
「かしこまりました、アイリス王女殿下」
そう言って立ち去って行くシスルに、胸が痛まないわけではない。
大好きな推しだ。
本当は恋人同士のように過ごしたい。
でもゲーム内のシスルは、あんな風にヤンデレではなかった。
私を婚約者に選んだ事といい、私の転生が影響しているのかもしれない。
いずれは公爵となり、宰相となる予定のシスル。
シスルが私の転生のせいで、悪く言われるようなことにしたくない。
二人きりの時には甘々でも、人の目のあるところでは節度ある態度になるように、優先順位を間違わないように、修正しなきゃいけない。
そして、それはエルム兄様にも言える。
私の転生のせいで、アイリスは家族との関係を修復した。
それを悪いことだとは思わないけど、エルム兄様がシスコンになってしまったのは問題だ。
少なくとも、シスコンでも婚約者候補に対しては、王太子としてキチンと向き合わなければならない。
私が、家族との関係修復に気を取られすぎたせいかもしれない。
だから、兄様の軌道修正をするのも私の義務だ。
私の言動に、カトレア様は複雑そうな顔をしていたけど「行きましょうか?」と何も言わずにいてくれた。
綺麗な金色の髪がくるくるとカールした、カトレア様の背中を追う。
カトレア様は、十二歳のウィロウ侯爵家の次女だ。
少し気の強いというか、まぁ妹特性のあるご令嬢だ。
少し行くと、薔薇の香りに満ちた広い薔薇園に着いた。
「あら?アイリス様。フロックス様はどうなさいましたの?」
サフィニア様が私に気付いた。
サフィニア様は水色の髪と瞳の十一歳の公爵令嬢だ。
「兄を呼びに行っていただきました。婚約者候補のご令嬢様たちと交流をするべきですのに」
「ふふっ。殿下はアイリス様が可愛くて可愛くて、婚約者なんかまだ作りたくないんでしょうね」
サフィニア様の言葉に、私は首を横に振る。
ある程度、交流が進んでいるなら、別行動もアリだろうが、まだ決まったばかりでろくに会話もしていないというのに。
「妹として可愛がってもらえるのは嬉しいですが、側近候補の方々の婚約者事情もあります。キチンと交流して方向性を決めることは必要だと思います」
「あれは兄としてなのかしら」
サフィニア様の呟きは小さくて、私の耳には届かなかった。
婚約者の自分が離れることを是としない、と言いたそうだった。
だから、シスルが口を開く前に、再度重ねた。
「シスル・フロックス公爵令息様。我が兄エルムを諭し連れ戻して下さい。それが貴方のお役目でしょう?」
婚約者のアイリスとしてでなく、王女アイリスとして告げた。
そして、シスルはそれを理解できないほど、愚かな人ではなかった。
「かしこまりました、アイリス王女殿下」
そう言って立ち去って行くシスルに、胸が痛まないわけではない。
大好きな推しだ。
本当は恋人同士のように過ごしたい。
でもゲーム内のシスルは、あんな風にヤンデレではなかった。
私を婚約者に選んだ事といい、私の転生が影響しているのかもしれない。
いずれは公爵となり、宰相となる予定のシスル。
シスルが私の転生のせいで、悪く言われるようなことにしたくない。
二人きりの時には甘々でも、人の目のあるところでは節度ある態度になるように、優先順位を間違わないように、修正しなきゃいけない。
そして、それはエルム兄様にも言える。
私の転生のせいで、アイリスは家族との関係を修復した。
それを悪いことだとは思わないけど、エルム兄様がシスコンになってしまったのは問題だ。
少なくとも、シスコンでも婚約者候補に対しては、王太子としてキチンと向き合わなければならない。
私が、家族との関係修復に気を取られすぎたせいかもしれない。
だから、兄様の軌道修正をするのも私の義務だ。
私の言動に、カトレア様は複雑そうな顔をしていたけど「行きましょうか?」と何も言わずにいてくれた。
綺麗な金色の髪がくるくるとカールした、カトレア様の背中を追う。
カトレア様は、十二歳のウィロウ侯爵家の次女だ。
少し気の強いというか、まぁ妹特性のあるご令嬢だ。
少し行くと、薔薇の香りに満ちた広い薔薇園に着いた。
「あら?アイリス様。フロックス様はどうなさいましたの?」
サフィニア様が私に気付いた。
サフィニア様は水色の髪と瞳の十一歳の公爵令嬢だ。
「兄を呼びに行っていただきました。婚約者候補のご令嬢様たちと交流をするべきですのに」
「ふふっ。殿下はアイリス様が可愛くて可愛くて、婚約者なんかまだ作りたくないんでしょうね」
サフィニア様の言葉に、私は首を横に振る。
ある程度、交流が進んでいるなら、別行動もアリだろうが、まだ決まったばかりでろくに会話もしていないというのに。
「妹として可愛がってもらえるのは嬉しいですが、側近候補の方々の婚約者事情もあります。キチンと交流して方向性を決めることは必要だと思います」
「あれは兄としてなのかしら」
サフィニア様の呟きは小さくて、私の耳には届かなかった。
202
あなたにおすすめの小説
どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~
クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。
同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。
ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した…
誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
死を望まれた王女は敵国で白い結婚を望む。「ご安心ください、私もあなたを愛するつもりはありません」
千紫万紅
恋愛
次期女王として王位継承が内定していたフランツェスカ。
だが戦況の悪化を理由に父王に争いの最前線に送られた。
それから一年、命からがら王都へ戻った彼女を待っていたのは労いの言葉ではなく、敵国・シュヴァルツヴァルトの王太子への輿入れ命令。
しかも父王は病弱な異母妹アリーシアを王妃に据え、フランツェスカの婚約者レナードを王にするという。
怒りと絶望の中フランツェスカはかつて敵将であったシュヴァルツヴァルト王太子・フリードのもとへお飾りの妻として嫁ぐことを決意する。
戦地での過去を封じ、王族としての最後の務めを果たすために。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
悪役令息(冤罪)が婿に来た
花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー
結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!?
王女が婚約破棄した相手は公爵令息?
王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした?
あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。
その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。
彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。
そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。
彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。
その数日後王家から正式な手紙がくる。
ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」
イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。
「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」
心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ!
※ざまぁ要素はあると思います。
※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる