乙女ゲームの正しい進め方

みおな

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「美味しいです」

 カルルの実は甘酸っぱくて、みずみずしくて、とてもおいしい。

 隣ではシスルが甲斐甲斐しく、私の食べるカルルの実をナイフでカットしてくれている。

 最初はエルム兄様が私の世話をやこうとしたんだけど、丁重にお断りした。

 決定するまでには一年の猶予があるけど、普段は学園に通っていることもあって時間に余裕があるわけでもないんだから、婚約者候補のご令嬢方と交流するべきである。

 側近候補たちにもまだ婚約者はいない。
エルム兄様の婚約者候補ではあるけれど、兄様の婚約者になったご令嬢以外は、側近候補たちの婚約者になるのがほぼ確定なのだ。

 側近候補は全部で四人。

 アスター・クリサンセマム侯爵令息は、王太子殿下の執務補助候補。
 シーダ・ウォールナット伯爵令息は、護衛魔法師候補。
 トリヤ・ダフォディル伯爵令息は、護衛騎士候補。

 そしてシスルは、エルム兄様と対等な、宰相候補。

 側近たちを束ね、時には王となるエルム兄様を叱責する役目を負う。

 それぞれの家はそれぞれの役目を、嫡男が負ってきた。
 もちろん相応しくなければ、次男や親戚筋、それでも無理なら他家に役目を奪われる。

 そのために彼らは切磋琢磨している。
だからこそのなのだ。

 王太子であるエルム兄様でなくても、誰もがヒロインに相応しい存在。

 そんな彼らの婚約者になる令嬢も、当然相応しい存在でなければならない。

 だから、基本的に王太子の婚約者候補の中から婚約者が決まることが多いらしい。

 今の、シスルやアスターたちの母親がそうだったように。

 だからこその五人の候補なんだけど、今回は私がシスルと婚約したことにより四人になったそうだ。

 他が『なんだかなぁ』だったから、というわけでもないらしい。

「フロックス様は、本当にアイリス様のことがお好きなのですね」

 黙々とカルルの実をいただいていると、カトレア侯爵令嬢がやって来た。

「カトレア様。他の皆様は?」

 他のみんなの姿が見えない。

「ジニア様とサフィニア様は、アゼリア様に薔薇園を見せていただくそうです」

「・・・あの、エルム兄様たちは」

「殿下は・・・領内を散策するとおっしゃって・・・殿下ひとりで行かせるわけにはいきませんから、クリサンセマム様たちがご一緒に」

「・・・・・・」

 あんのシスコン兄は何をしてるんだか!
婚約者候補のご令嬢たちを放置して、領地散策?

「シスル様」

「ん?」

「シスル様のお役目はエルム兄様が間違った行動を行った時に、叱責することですよね?なら、お役目を全うして下さい」

 私は椅子から立ち上がった。

「私は、ジニア様たちと薔薇園に参ります。ですから、シスル様、兄様を連れ戻してきてください」
 
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