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本当に大切なこと《ソル視点》
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鎖に繋がれたリアナ様の上にのしかかった男の姿を見た途端、怒りが全身を支配した。
殴り飛ばし、息を止めるためにその体を踏みつける。
「そいつは俺が引き受けるから、姫君を救出しろ」
カイの言葉に、渋々足を上げた。
血で濡れた手でリアナ様に触れるわけにはいかない。
ベッドに固定されたリアナ様の鎖を外していく。
細い手首に残る傷痕に胸が痛む。相当、抵抗したのだろう。血が滲んでいた。
「ソル」
震える声に、我慢ができなかった。
キツく、キツくリアナ様を抱きしめる。リアナ様の手が、おずおずと俺の背に回される。
間に合った。失わずにすんだ。
その安堵に体が震えた。
直後に現れたシオン様の指示で、俺はリアナ様を抱えたまま、王宮へと戻った。
国王陛下も王妃様も、涙を流してリアナ様の無事を喜んでいた。
侍女にリアナ様の湯あみと着替えを頼んで、陛下に事の顛末を報告する。
あとは、シオン様が戻られたら、話を詰めるから、俺はリアナ様の元にいるようにと言われた。
リアナ様の着替えが終わったのを聞いてから、扉をノックする。
「どうぞ」
「失礼いたします。リアナ様、少しお休み下さい。ホットミルクを飲まれますか?」
「・・・うん」
準備しておいたミルクを、ベッド脇のテーブルへと運ぶ。ベッドに腰掛けたリアナ様は俯きがちで、夜着の上に羽織った薄いガウンの袖から覗く手首には、包帯が巻かれていた。
「大丈夫ですか?」
見ると、足首にも包帯が巻かれている。傷が痛むのだろうか。
リアナ様の足元に跪いて見上げると、リアナ様はその黒曜石の瞳いっぱいに涙をためていて、今にも溢れてしまいそうだった。
「リアナ様」
「ふっ・・・うっ・・う」
必死に泣くのをこらえるリアナ様の瞳から、ぼろぼろと涙が溢れて、膝の上に握りしめた手の甲を濡らしていく。
俺は、爪が食い込みそうなほど握りしめた手をゆっくりと解いていく。
「爪が食い込んでしまいます。傷が痛みますか?ベッドへ横に・・・」
ベッドへ横たえようとした俺は、そのまま動けなくなった。
リアナ様が、跪いている俺に抱きついていた。
「リアナ様?」
「・・・」
俺の首筋に顔を埋め、離れようとしないリアナ様に困惑する。
湯あみを終えたばかりの甘い香りと、ほんのりと温かい体が、俺の忍耐力を試している。
心頭滅却すれば火もまた涼し。心頭滅却すれば火もまた涼し。心頭・・・いや、無理だ。
俺は、勢いよくリアナ様を引き剥がした。
目に映ったリアナ様の目が大きく見開いて・・・悲しそうに閉じられるのを見て、俺は自分が間違ったことを知った。
「ごめんなさい。休みます」
「ま、待っ・・・」
「ごめんなさい」
駄目だ。このまま離れてしまえば、リアナ様はきっと俺との婚約を解消するようシオン様にお願いする。
それこそ、解消してくれないなら王家から出て行くとでも言って。
そうしたら、リアナ様の婚約者は他の誰かになる。
俺がリアナ様の婚約者になれたのは・・・シオン様が俺の気持ちに気付いていたから。
でなければ、貴族でもない、しかも暗殺者であった孤児などを、大切な妹姫の婚約者にするわけがない。
ベッドへと体を横たえようとするリアナ様を後ろから抱きしめた。
ピクリと体が震え、その体が強張るのを感じる。
「はな・・・して」
「嫌です」
絶対に、離したくない。
殴り飛ばし、息を止めるためにその体を踏みつける。
「そいつは俺が引き受けるから、姫君を救出しろ」
カイの言葉に、渋々足を上げた。
血で濡れた手でリアナ様に触れるわけにはいかない。
ベッドに固定されたリアナ様の鎖を外していく。
細い手首に残る傷痕に胸が痛む。相当、抵抗したのだろう。血が滲んでいた。
「ソル」
震える声に、我慢ができなかった。
キツく、キツくリアナ様を抱きしめる。リアナ様の手が、おずおずと俺の背に回される。
間に合った。失わずにすんだ。
その安堵に体が震えた。
直後に現れたシオン様の指示で、俺はリアナ様を抱えたまま、王宮へと戻った。
国王陛下も王妃様も、涙を流してリアナ様の無事を喜んでいた。
侍女にリアナ様の湯あみと着替えを頼んで、陛下に事の顛末を報告する。
あとは、シオン様が戻られたら、話を詰めるから、俺はリアナ様の元にいるようにと言われた。
リアナ様の着替えが終わったのを聞いてから、扉をノックする。
「どうぞ」
「失礼いたします。リアナ様、少しお休み下さい。ホットミルクを飲まれますか?」
「・・・うん」
準備しておいたミルクを、ベッド脇のテーブルへと運ぶ。ベッドに腰掛けたリアナ様は俯きがちで、夜着の上に羽織った薄いガウンの袖から覗く手首には、包帯が巻かれていた。
「大丈夫ですか?」
見ると、足首にも包帯が巻かれている。傷が痛むのだろうか。
リアナ様の足元に跪いて見上げると、リアナ様はその黒曜石の瞳いっぱいに涙をためていて、今にも溢れてしまいそうだった。
「リアナ様」
「ふっ・・・うっ・・う」
必死に泣くのをこらえるリアナ様の瞳から、ぼろぼろと涙が溢れて、膝の上に握りしめた手の甲を濡らしていく。
俺は、爪が食い込みそうなほど握りしめた手をゆっくりと解いていく。
「爪が食い込んでしまいます。傷が痛みますか?ベッドへ横に・・・」
ベッドへ横たえようとした俺は、そのまま動けなくなった。
リアナ様が、跪いている俺に抱きついていた。
「リアナ様?」
「・・・」
俺の首筋に顔を埋め、離れようとしないリアナ様に困惑する。
湯あみを終えたばかりの甘い香りと、ほんのりと温かい体が、俺の忍耐力を試している。
心頭滅却すれば火もまた涼し。心頭滅却すれば火もまた涼し。心頭・・・いや、無理だ。
俺は、勢いよくリアナ様を引き剥がした。
目に映ったリアナ様の目が大きく見開いて・・・悲しそうに閉じられるのを見て、俺は自分が間違ったことを知った。
「ごめんなさい。休みます」
「ま、待っ・・・」
「ごめんなさい」
駄目だ。このまま離れてしまえば、リアナ様はきっと俺との婚約を解消するようシオン様にお願いする。
それこそ、解消してくれないなら王家から出て行くとでも言って。
そうしたら、リアナ様の婚約者は他の誰かになる。
俺がリアナ様の婚約者になれたのは・・・シオン様が俺の気持ちに気付いていたから。
でなければ、貴族でもない、しかも暗殺者であった孤児などを、大切な妹姫の婚約者にするわけがない。
ベッドへと体を横たえようとするリアナ様を後ろから抱きしめた。
ピクリと体が震え、その体が強張るのを感じる。
「はな・・・して」
「嫌です」
絶対に、離したくない。
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