42 / 57
溺愛という名の心配
しおりを挟む
王宮に会いに来てくれたアリスティア様と、私の部屋でお茶を飲む。
2ヶ月前、フローラから婚姻が早まると聞いた日から、私が学院に通ったのは10日だけだ。しかも、魔術の実技がある時間のみ。
さすがに、シオンお兄様に抗議した。
これでは学院に通っている意味がないと。
友達も出来ないし、学院の行事にも全く参加できない。
だけど、それならもう通う必要はないと言われた。魔術のことは、魔術団長の子息のイリアスに指導させると。
ソルと結婚して、王宮に残るのだから、学院を卒業しなければならないという義務も気にしなくていいとまで言われた。
シオンお兄様は、私を溺愛してくれていて、大抵のことは仕方ないねと甘やかしてくれた。
そのお兄様が、初めて私の言うことに耳を傾けてくれなかった。
「そんなひどいこと言うお兄様なんて、嫌いっ!」
そう言った私を、私に会いに王宮に訪れてくれたアリスティア様は嗜めた。
「シオン殿下は、リアナ様のことを大切に思われているのですよ?」
「でも」
「私に、リアナ様に会いに、こまめに王宮へと訪れて欲しいとお願いされましたわ。リアナ様が寂しくないようにと。リアナ様、どれだけ気をつけていても危険があることは否めません。大切な方をどんなことをしても守りたいと思うことは、そんなにいけないことですか?」
アリスティア様の言うことは分かる。わかるけど、そんなにまで神経質にならないといけないこと?
納得していない表情の私に、アリスティア様は息をついた。
「リアナ様。入学式で倒れ、リリー様に絡まれ階段から落ち、そしてアクツート伯爵に攫われましたわね。たった半年です。たった半年で、これだけのことがあったのに、それでもシオン殿下が心配されることは間違いですか?」
「アリスティア様」
「シオン殿下だけではありません。婚約者であるソル様も、聖女であるフローラ様も、そしてハロルド様も私も、リアナ様のことが心配で仕方ありません。不安で仕方ありません。そんな私達の気持ちは、リアナ様にとってご迷惑でしかありませんか?」
アリスティア様に諭され、私は口をつぐんだ。私は、自分が言ったことが間違いだとは思わない。2ヶ月で10日しか通わない学院など、何の意味もない。
だけど、だからといって、シオンお兄様やソル、フローラ様やアリスティア様の心配を無碍にする権利が私にあるのだろうか。
この世界に転生して、攻略対象たちや、ヒロインに大切にされて、私は思い上がっているんじゃないのか。
前世で、社畜として働いていた頃、もっと人の気持ちに寄り添えていたのではなかったか。
自分を心配してくれる後輩や同僚の気持ちに、もっと向き合えて感謝していたのではなかったか。
こんな、思い上がった考えをしていたら、ゲームの中の悪役令嬢のリアナそのものではないのか。
「・・・お兄様に謝ります」
「それが宜しいと思いますわ。やっぱり、リアナ様は優しい方ですわね」
そんなことはない。アリスティア様の方が、シオンお兄様やソル、フローラ様の方が、私の何倍も優しい。
私は、その優しさに甘えていたのだー
2ヶ月前、フローラから婚姻が早まると聞いた日から、私が学院に通ったのは10日だけだ。しかも、魔術の実技がある時間のみ。
さすがに、シオンお兄様に抗議した。
これでは学院に通っている意味がないと。
友達も出来ないし、学院の行事にも全く参加できない。
だけど、それならもう通う必要はないと言われた。魔術のことは、魔術団長の子息のイリアスに指導させると。
ソルと結婚して、王宮に残るのだから、学院を卒業しなければならないという義務も気にしなくていいとまで言われた。
シオンお兄様は、私を溺愛してくれていて、大抵のことは仕方ないねと甘やかしてくれた。
そのお兄様が、初めて私の言うことに耳を傾けてくれなかった。
「そんなひどいこと言うお兄様なんて、嫌いっ!」
そう言った私を、私に会いに王宮に訪れてくれたアリスティア様は嗜めた。
「シオン殿下は、リアナ様のことを大切に思われているのですよ?」
「でも」
「私に、リアナ様に会いに、こまめに王宮へと訪れて欲しいとお願いされましたわ。リアナ様が寂しくないようにと。リアナ様、どれだけ気をつけていても危険があることは否めません。大切な方をどんなことをしても守りたいと思うことは、そんなにいけないことですか?」
アリスティア様の言うことは分かる。わかるけど、そんなにまで神経質にならないといけないこと?
納得していない表情の私に、アリスティア様は息をついた。
「リアナ様。入学式で倒れ、リリー様に絡まれ階段から落ち、そしてアクツート伯爵に攫われましたわね。たった半年です。たった半年で、これだけのことがあったのに、それでもシオン殿下が心配されることは間違いですか?」
「アリスティア様」
「シオン殿下だけではありません。婚約者であるソル様も、聖女であるフローラ様も、そしてハロルド様も私も、リアナ様のことが心配で仕方ありません。不安で仕方ありません。そんな私達の気持ちは、リアナ様にとってご迷惑でしかありませんか?」
アリスティア様に諭され、私は口をつぐんだ。私は、自分が言ったことが間違いだとは思わない。2ヶ月で10日しか通わない学院など、何の意味もない。
だけど、だからといって、シオンお兄様やソル、フローラ様やアリスティア様の心配を無碍にする権利が私にあるのだろうか。
この世界に転生して、攻略対象たちや、ヒロインに大切にされて、私は思い上がっているんじゃないのか。
前世で、社畜として働いていた頃、もっと人の気持ちに寄り添えていたのではなかったか。
自分を心配してくれる後輩や同僚の気持ちに、もっと向き合えて感謝していたのではなかったか。
こんな、思い上がった考えをしていたら、ゲームの中の悪役令嬢のリアナそのものではないのか。
「・・・お兄様に謝ります」
「それが宜しいと思いますわ。やっぱり、リアナ様は優しい方ですわね」
そんなことはない。アリスティア様の方が、シオンお兄様やソル、フローラ様の方が、私の何倍も優しい。
私は、その優しさに甘えていたのだー
81
あなたにおすすめの小説
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
悪役令嬢は断罪イベントから逃げ出してのんびり暮らしたい
花見 有
恋愛
乙女ゲームの断罪エンドしかない悪役令嬢リスティアに転生してしまった。どうにか断罪イベントを回避すべく努力したが、それも無駄でどうやら断罪イベントは決行される模様。
仕方がないので最終手段として断罪イベントから逃げ出します!
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない
櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。
手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。
大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。
成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで?
歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった!
出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。
騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる?
5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。
ハッピーエンドです。
完結しています。
小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。
婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話
ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。
リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。
婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。
どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。
死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて……
※正常な人があまりいない話です。
【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!
たまこ
恋愛
エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。
だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。
嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる