悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな

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親友の宝物《カイ視点》

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 部屋の中で、僅かな物音がした。

「リアナ姫?」

 声をかけてみるが返答がない。俺は躊躇わず扉を開けた。

 俺たち暗部の人間は、音に敏感だ。小さな音にも反応し、対処できなければ、諜報も暗殺も出来ない。

 だから、扉の向こうで何かあったことを確信していた。そして、窓際に置かれた椅子の上、テーブルにもたれかかるように倒れた姫君の姿を見つける。

 窓は・・・開いてない。誰かが侵入した気配はない。

「姫君?」

 意識を失っている体を支え、ふと窓の外に視線をやった。

 鳶色の髪をした少女と話している、黒髪の青年。

 これか!

 俺は、窓を開けると、その音に見上げた親友に、一言鋭く叫んだ。

「ソル!来い!」

 親友が、機敏に身を翻したのを確認して、俺は姫君を抱き上げベッドへと運んだ。
 血の気を失った顔は白く、息すらしていないのではと疑うほどだった。

 扉の外、侍女を呼び付け、シオン殿下と聖女様への連絡、あと医師の手配を終えた時、ソルの姿が廊下の端に見えたー



「リアナ様・・・一体なにがあったんだ」

「俺が物音に気付いて入室した時には、すでに倒れられていた。なぁ、ソル。お前、さっきの女は何だ?」

「女?あ、ああ。彼女は宝飾のデザイナーだそうだ。リリウム公爵令嬢に紹介してもらった」

 宝飾デザイナー?あの少女が?
大体、何の目的・・・目的は、リアナ姫に贈るためか。だが。

「お前は、なんでそんな迂闊なんだ?」

「?」

 ソルは俺が言いたいことを今ひとつ理解していないようだ。仕方ない。この際だ。事細かく言ってやる。

「はぁぁ。あのなぁ。よーく、考えてみろ。見たことのない女と話してる婚約者を見て、平気な女がいるか?ましてや、リアナ姫は自分に全然自信がない。お前のことだから、ヤキモチ妬かせようとかじゃないんだろ」

「当たり前だ。でも、そんな・・・」

 まぁ、こいつのことだから、姫君に内緒で何かを贈ろうと考えていたんだろうが、その現場を肝心の姫君に見られてどうするって話だ。

 しかも、今の姫君は精神的に不安定だ。不安要素は欠片も作るべきじゃなかったんだよ。



 医師の診察では、昏睡状態だと言われた。体も弱っているし、このままずっと眠りから覚めない可能性もある、と。

 慌てて学院から戻ってきたシオン殿下も聖女様も、ベッドに横たわるリアナ姫に縋るようなソルに何も言えなかった。

 その日から、ソルはリアナ姫の側を離れなくなった。
 ろくに食事も摂らず、あいつの方が生きているのか死んでいるのか分からない有様だった。

 もし、この世界に神様がいるのならー
どうか姫君を親友に返してやって欲しい。アイツにとって、リアナ姫は宝物なんだ・・・

 
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