悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな

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リアナ・アイリーン

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 ドクン!ドクン!!
血液が沸き立つ音がする。耳の奥がずきりと痛んだ。

 目の前が真っ暗になり、立っているのか座っているのかさえわからなくなった。
 昏い昏い深淵に沈んでいくような、そんな感覚にある種の安堵さえ抱いた。

《しっかりして!!》

 頭の中に、澄んだ声が聞こえた気がした。
 聞いたことのない、フローラ様やアリスティア様とも違う声。聞いたことがないはずなのに、どこか懐かしい声。

(だ、れ?)

《闇に呑まれては駄目!しっかり意識を保って》

 だけど、気持ちがいいの。このまま眠ってしまいたい・・・

《失ってしまうわよ?》

(失う?何を・・・?)

 このまま眠ってしまいたいのに、この声と話すことをやめたいとは思わなかった。この声は、心地いい。私の中に染み渡っていくみたいだ。

《シオン兄様を!フローラ・ダイアンサスを!アリスティア・リリウムを!そしてーソル・フィルズを!!》

 その名前に、私はその重い瞼をピクリと震わせた。

(失う?シオンお兄様を?フローラ様を?アリスティア様を?)

(ソル・・・)

 私と同じ、濡羽色の髪と黒曜石の瞳の、私より1歳年上の青年。
 口数は少なくて、融通が効かなくて、だけど、誰よりも、私を想ってくれていた。

 いつも体を張って私を守ってくれて、助けてくれて、そして、抱きしめてくれた。

(失う?ソルを?)

 胸の奥が酷く痛んで、私はようやくその重い瞼を上げた。

《闇に呑まれては駄目よ》

(あな・・・た)

 目の前に立っていたのは、
いや、そうではない。彼女は、リアナ。本当のリアナ・アイリーン。

 濡羽色の髪と黒曜石の瞳の、アイリーン王家の姫君。

(リアナ・アイリーン)

 まるで鏡を見ているような感覚だった。だけど、それは私であって私ではない。ゲームの中のスチルそのもののリアナ。

(リアナ、生きて・・・?)

《あなたが転生したことで、私はあなたに溶け込んでしまうはずだったのに、闇の聖女が宿ってることが分かったから眠れなかったのよ?》

(闇の聖女)

《そう。アレは覚醒したら世界を混沌に沈めてしまう存在なの。そして、覚醒のキーがあなた》

 リアナの言葉に、理解が追いつかない。闇の聖女が覚醒したら世界が滅びる?覚醒のきっかけが私?

《あなたが絶望したら、あなたの自我は消えて闇の聖女となるの。だから、シオン兄様はそれを防ぐために学院を辞めさせたのよ》

(私が覚醒しないように・・・)

《覚醒したらリアナ・アイリーンはいなくなってしまうから。を失わないため。あなただってわかってるのでしょう?自分がどれだけみんなに愛されていたのか》

 そう。わかっていた。
シオンお兄様も、フローラ様も、ソルも。みんな私を大切にしてくれていた。

《羨ましいわ。私は・・・シオン兄様に嫌われていたから》

(そ、そんなことない)

《ふふっ。いいの。あなたと1つになればシオン兄様に愛してもらえる。欲しかったシオン兄様の妻にはなれないけど、誰よりも誰よりも特別な存在で、側に居られる》

(それで・・・いいの?)

 シオンお兄様の隣に立つのが、自分でなくてフローラ様で。それを側で見ていても辛くない?

《兄様は私・・・ううん、のことをフローラよりも愛しているもの。そしてフローラもそう。だから、いいの。だって、私、あなたの中でいて幸せだったわ。きっとこれからも、幸せよ?》

 そう・・・ならいい。リアナが幸せでいてくれるなら。ずっと、私の中にいてくれるなら。

 だって、幸せだと言ったリアナは綺麗だった。ゲーム内の、絶望と嫉妬に歪んだ顔ではなく、本当に、綺麗だったから。



 

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