ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら

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3、首輪

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 この少年は危険だ。
 平然と首輪を差し出すマルセル。
 レオンは本能で理解した。
 少年は本気で自分に首輪をつけようとしている。

 目の前に座るマルセルから逃げようと身体をよじる。

 ジャラッ

 冷たい鎖の音。  
 恐怖が背筋を這う。

 出口は鍵がかかった窓と、騎士が立つドア。
 目の前の少年をどうにかできても、騎士がいるからさっきみたいに取り押さえられるだけ。

 無理だ。  
 腕の鎖を外さなければ、逃げられない。
 
 レオンは部屋の中に視線を走らせ、顔をこわばらせる。

「かわいいなぁ」
「なにを……」

 かわいいなど言われてたのは幼い頃の遠い記憶にしかない。
 この場に不釣り合いな言葉にレオンは狼狽える。

「レオンさんの怯える姿も素敵です」

 甘く愛でるような声。うっとりとした表情。
 レオンはグッと唇を噛む。
 逃げ場などない。

 マルセルはレオンの怯える姿を楽しんでいる。

 温室育ちの子犬のような見た目。  
 だが、その本性は――悪趣味な支配者。

「やっぱり欲しくなっちゃうなぁ……」
「自分がなにを言っているか分かってるのか?」
「レオンさんこそ――自分がどんな状況か、分かってますか?」

 子供が玩具をねだるような無邪気な笑顔。
 質問を質問で返され、レオンは沈黙する。

 言われなくたって分かってる。  
 鎖で繋がれた俺は逃げることなどできない。
 要求を呑むことしかできないということも。

「レオンさんが欲しいからと言って、安全までは保証できないかもしれませんよ?」
「――!?」
「冗談ですよ。だから、そんなに警戒しないで。僕はレオンさんを傷付けたいわけではないので」

 マルセルは無邪気に笑う。  
 いつでもレオンに危害を与えることができた。
 数週間の間、レオンは見られていることに気付いてから、誘き出そうと何度も一人になった。
 けれど、マルセルはレオンに接触するどころかただ見てただけ。

 俺を誘拐して何になる?
 お金か?いや、お金が欲しいなら貴族を誘拐するなんてリスクがあり過ぎる。

 俺に、何の価値がある……?

「レオンさん?」

 足の上で強く握られた拳を見て固まっていると、レオンは自分の名前を呼ぶ声にハッと顔をあげる。
 余計なことは考えるな。
 レオンは頭を振ってマルセルの目を見つめかえす。
 
「俺に何を求める」

 レオンの言葉にマルセルは大人びた笑顔を浮かべた。

「僕のモノになってください」

 
 先程とは言葉尻が変わったことに、レオンは拒否できないと悟る。

 レオンが首元を寛げると、意図を理解したマルセルは笑みを深める。

 首輪をつけるためにレオンの横に移動したマルセルは、レオンの首に手をかける。

 近づいた距離に身体が緊張を帯びる。

 大丈夫だ。
 家に帰らない俺を、家族が心配して探すはず。それまで待っていたら、監禁し続けることはできないはず。

 革でできた首輪が身体に触れ、キュッとベルトが締められる。レオンの身体はビクッと震える。

 マルセルは首輪を愛おしそうに撫でると、レオンに微笑みかけた。
 
「よく似合っていますよ」
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