ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら

文字の大きさ
2 / 10

2、囚われる男

しおりを挟む
「どうして起きないの?」
「心配はいりません。医師が疲労がたまっているだけだと言っていたではありませんか。時間が経てば目覚めます」
「そう……早く起きてね、レオンさん」

 二人の声に意識が揺れる。  
 誰だ……?

 名前を呼ぶ声に、まぶたは固く閉じたまま。  
 レオンは再び深い眠りに落ちた。

 まぶしい……。

 顔を照らす光に目が覚める。
 寝返りをしようとすると何かに阻まれる。

 グッと引っ張られる身体に「ウッ」と声が漏れる。

 左腕に冷たい感触。  
 違和感を覚えて重い瞼を上げると、鎖が繋がれていた。
 
「なん、だこれ……」

 数年ぶりに話したような、枯れた声。  
 レオンは眠りから覚め、自分がどんな状況に置かれているのか周囲を見渡した。

 ベッドに繋がれている鎖。
 レオンが寝ているベッドを中心に配置された家具。
 狭いとまでは言わないが、家具は鎖の届く範囲に配置されている。  
 まるで檻の中の獣――それが今の自分だった。

ガチャッ

 ノックなしに開かれたドア。
 レオンは身構える。

 入ってきたのは――、あの碧い瞳の少年。
 
 少年はレオンを見ると、驚いた顔の後、パッと笑顔を浮かべた。

「体調は大丈夫ですか?」
「…………」
 
 ソファに座って無視するレオンを、気絶させ誘拐した張本人である少年が心配そうに見ている。

 正確には、ドア脇に立つ騎士が実行犯だろう。 レオンは痛む腕を無意識に触った。

 少年が部屋に入ってきた時。
 レオンは少年に襲いかかった。けれど、レオンの腕は少年に届くことなく騎士によって取り押さえられる。

 ベッドに押さえつけられるレオンを少年が騎士を止めたことにより、レオンは拘束から解放される。
 一度ならず二度までも騎士の気配に気付けなかった自分に、レオンはショックを受けていた。

 少年はマルセルと名乗った。 
 そして、自分はレオンが酒場で見たローブを着た人物であると告げた。

 線が細く、中性的な儚さ。  
 一度見たら忘れられない美貌。
 淡い金髪。  宝石のような碧い瞳。

 水を差し出すマルセルを、レオンは警戒しながら受け取る。  
 水を飲むレオンを心配そうに見る、毒気のない無垢な顔。レオンは誘拐された身でありながら不思議と警戒心が薄れていった。

 だが、この瞳――、どこかで見たことがあるような……。

「…………俺たちどこかで会ったことがあるか?」

 マルセルの動きがピタッと止まる。  
 主人の異変に反応してか、ドアの前で静かに立っている騎士の目が鋭くなったのを感じた。

 何かまずいことを言ったか?

 部屋の雰囲気が変わったことに混乱していると――。

「レオンさん」

 先程までの純粋な笑顔が嘘のように、マルセルは妖艶な笑みを浮かべた。

 レオンは動揺を悟られないように冷静を装いながら、生唾を飲んだ。

「なんだ?」

 レオンの緊張を知ってか知らずか、マルセルはクスッと笑う。そして、どこからか取り出したモノを手に持つ。

 欲を孕んだ目でレオンを見つめ――。

「僕のモノになってくれますか?」

 ご飯を誘うような軽さと自然さ。

 黒革に銀の金具。鎖と繋がるリングが揺れる。
 マルセルは首輪を差し出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

従者は知らない間に外堀を埋められていた

SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL 転生先は悪役令息の従者でした でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません だから知らんけど精神で人生歩みます

使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。

ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と 主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り 狂いに狂ったダンスを踊ろう。 ▲▲▲ なんでも許せる方向けの物語り 人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)

ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子 天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。 可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている 天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。 水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。 イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする 好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた 自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

処理中です...