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第15話 拉致 ②
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私は一体何をどうしたいのかしら?
馬車が動き出すとアレクシアは思案にくれた。
これまでずっと王太子妃教育を受け、ユクトルの妃となることだけを目指してきたし、それ以外の選択肢などつい最近まで現れなかったのだ。
『婚約破棄をして俺と婚約してほしい』
ユージーンの顔が脳裏に浮かんだアレクシアは頬が熱くなるのを感じ、慌てて首を振った。
まだそうなるかも分からないのに。
だが幾らオリビアが改心したとは言ってもこのまま婚約を継続するには躊躇うものがあり、それは今夜の舞踏会で決定的なものになった。
ユクトルの婚約破棄宣言は王族としても有り得ないものであり、王太子の地位から降ろされるのは目に見えている。
そうなると必然的にアレクシアとの婚約も解消となるのだが。
まさかオリビアが王弟サンダルフォン様と聖女様の御子だなんて。
あの珍しい髪色からもしかして聖女様の血をひくのでは、と思ったことはあったが本当だったとは。
このコントワーズ王国では血筋は絶対的なものがある。
今の王が王太子だった頃、次期王妃となる者が伯爵令嬢では示しがつかないのでは、と反対意見が出たことがあった。
王弟のサンダルフォン様が優秀な方であるていど人気もあったことから、サンダルフォン様を推す勢力もあったのだが、それはいつの間にか立ち消えになっていた。
いつだったかしら?
確かサンダルフォン様が流行り病を患った頃だったかしら、とアレクシアが記憶を爪繰っていると、馬車の車体が大きく揺れ、そこでようやくアレクシアは異変に気付いた。
振動は一度では終わらず、いつもより揺れがひどい。
こんな道なんてあったかしら?
思わずヨハンに確認しようとしてアレクシアははっとした。
ヨハンはこんな荒い馬の御しかたをしていただろうか?
そう言えば、と思い返すとアレクシアは乗り込む際にヨハンの顔を確認していなかったことに気付いた。
確かめようと小窓から御者の姿を見ようとしたとき、蹄の音が耳に届く。
思わず外を窺うと、そこにはマントを頭からすっぽり被った男達を乗せた騎馬が数頭、馬車を囲むように並走しているのが分かった。
男達は鍛え上げられた体躯をしているものの、騎士団のような清廉さは感じられずどこか無頼者を思わせる雰囲気を持っている。
――誘拐。
考えたくない単語が脳裏に浮かび、アレクシアの体が硬直したとき、馬車が更に速度を上げる。
それはまるで何も考えるな、とでも言っているようだった。
馬車が停まり、扉が開けられたときアレクシアは半ば覚悟を決めていた。
こうした場合犯人は身代金のみを受け取り、被害者が無事に戻ることは少ないと聞く。
どうしてこうなったかは分からないが、せっかく二度目の人生を与えられたのに、とアレクシアが諦観の念を抱いていると侍従らしい人物が古びた館から現れた。
「こちらへ」
邸内は外観とは違い、手入れがされているようで誇りなどが積もっている様子はみられない。
廊下の装飾も地味な印象を受けるがそれとなく質のいい物を使っているようだった。
少なくとも伯爵家以上の家格がないと立てられない規模の邸のように思える。
従僕の所作も品があり、これだけの材料で推測するのは拙速だが、金目当ての誘拐ではないのでは、とアレクシアが思案を巡らせていると奥まった一室へ従僕に案内された。
扉を軽く叩き、従僕が告げる。
「フォンデル公爵令嬢がお見えです」
従僕の言葉を思わず否定しそうになってアレクシアは慌てて口を閉じた。
自ら望んで来た訳ではないが、相手を怒らせるのはよくない。
「入れ」
その声にアレクシアは既視感を覚えた。
それは先ほど舞踏会が開かれた大広間で聞いたものであり、有り得ない者の声だった。
まさか。
室内は応接間のようで座り心地の良さげな椅子が数脚と脚の短い卓があり、とてもこのようなことをする人物がいるような内装ではない。
「……お招きいただき光栄にございます。クラスター公爵様」
そこにいたのは先ほど四男リュックと共に王宮を辞したクラスター公爵だった。
馬車が動き出すとアレクシアは思案にくれた。
これまでずっと王太子妃教育を受け、ユクトルの妃となることだけを目指してきたし、それ以外の選択肢などつい最近まで現れなかったのだ。
『婚約破棄をして俺と婚約してほしい』
ユージーンの顔が脳裏に浮かんだアレクシアは頬が熱くなるのを感じ、慌てて首を振った。
まだそうなるかも分からないのに。
だが幾らオリビアが改心したとは言ってもこのまま婚約を継続するには躊躇うものがあり、それは今夜の舞踏会で決定的なものになった。
ユクトルの婚約破棄宣言は王族としても有り得ないものであり、王太子の地位から降ろされるのは目に見えている。
そうなると必然的にアレクシアとの婚約も解消となるのだが。
まさかオリビアが王弟サンダルフォン様と聖女様の御子だなんて。
あの珍しい髪色からもしかして聖女様の血をひくのでは、と思ったことはあったが本当だったとは。
このコントワーズ王国では血筋は絶対的なものがある。
今の王が王太子だった頃、次期王妃となる者が伯爵令嬢では示しがつかないのでは、と反対意見が出たことがあった。
王弟のサンダルフォン様が優秀な方であるていど人気もあったことから、サンダルフォン様を推す勢力もあったのだが、それはいつの間にか立ち消えになっていた。
いつだったかしら?
確かサンダルフォン様が流行り病を患った頃だったかしら、とアレクシアが記憶を爪繰っていると、馬車の車体が大きく揺れ、そこでようやくアレクシアは異変に気付いた。
振動は一度では終わらず、いつもより揺れがひどい。
こんな道なんてあったかしら?
思わずヨハンに確認しようとしてアレクシアははっとした。
ヨハンはこんな荒い馬の御しかたをしていただろうか?
そう言えば、と思い返すとアレクシアは乗り込む際にヨハンの顔を確認していなかったことに気付いた。
確かめようと小窓から御者の姿を見ようとしたとき、蹄の音が耳に届く。
思わず外を窺うと、そこにはマントを頭からすっぽり被った男達を乗せた騎馬が数頭、馬車を囲むように並走しているのが分かった。
男達は鍛え上げられた体躯をしているものの、騎士団のような清廉さは感じられずどこか無頼者を思わせる雰囲気を持っている。
――誘拐。
考えたくない単語が脳裏に浮かび、アレクシアの体が硬直したとき、馬車が更に速度を上げる。
それはまるで何も考えるな、とでも言っているようだった。
馬車が停まり、扉が開けられたときアレクシアは半ば覚悟を決めていた。
こうした場合犯人は身代金のみを受け取り、被害者が無事に戻ることは少ないと聞く。
どうしてこうなったかは分からないが、せっかく二度目の人生を与えられたのに、とアレクシアが諦観の念を抱いていると侍従らしい人物が古びた館から現れた。
「こちらへ」
邸内は外観とは違い、手入れがされているようで誇りなどが積もっている様子はみられない。
廊下の装飾も地味な印象を受けるがそれとなく質のいい物を使っているようだった。
少なくとも伯爵家以上の家格がないと立てられない規模の邸のように思える。
従僕の所作も品があり、これだけの材料で推測するのは拙速だが、金目当ての誘拐ではないのでは、とアレクシアが思案を巡らせていると奥まった一室へ従僕に案内された。
扉を軽く叩き、従僕が告げる。
「フォンデル公爵令嬢がお見えです」
従僕の言葉を思わず否定しそうになってアレクシアは慌てて口を閉じた。
自ら望んで来た訳ではないが、相手を怒らせるのはよくない。
「入れ」
その声にアレクシアは既視感を覚えた。
それは先ほど舞踏会が開かれた大広間で聞いたものであり、有り得ない者の声だった。
まさか。
室内は応接間のようで座り心地の良さげな椅子が数脚と脚の短い卓があり、とてもこのようなことをする人物がいるような内装ではない。
「……お招きいただき光栄にございます。クラスター公爵様」
そこにいたのは先ほど四男リュックと共に王宮を辞したクラスター公爵だった。
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