世間知らずの王子様を教育していたら、嫁として誘拐されました

ぺきぺき

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本編・裏

前編

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飛世視点です。話を聞いた兄王子・爽一のツッコミ付きでお楽しみください。

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この国の王家である紫苑しおん家には今、王子二人に姫二人の4人の子供がいた。

男子相続が基本であるこの国では、次期帝の座を狙って二人の王子のしのぎを削っていた。

第一王子の母方の実家は国一番の大貴族であり、その当主は現宰相。第一王子の立太子は確実視されていたが、宰相と仲の悪い帝はいつまでたっても第一王子を東宮には認めなかった。

そんな状況下で第一王子の地位を脅かす存在である第二王子は、ここ数年、第一王子を推す勢力にしつこくその命を狙われていた。何人もの暗殺者が毎日のように送り込まれるが、誰一人としてその首を取ることはできず、ついに確実性を重視して妖の暗殺者を送り込んだ。

失敗すれば帝にこちらを攻撃するネタを与えることになる、ハイリスクな手段でもあった。しかし、さすがの第二王子も妖からは逃れられまい、と。

誰もがそう思っていた。


しかし、第二王子の飛世たかせは素手で妖の暗殺者を叩きのめしてしまったのだ。

ここに帝は政敵を追い払う絶好のチャンスを得た。



ーーーー



飛世はなぜか父である帝に呼び出され、竜使いの屋敷である蒼ノ宮あおのみや家へ行き、しばらく滞在するようにと命令を受けた。

流されるままに連れられて、到着した蒼ノ宮家で同い年の竜使いの少女と知り合った。その名前をあいといい、蒼ノ宮家当主の娘なのだそうだ。

それにしても蒼ノ宮藍とは、とても青々した名前だ。仲良くなった藍をそう言ってからかえば、「わかりやすくていいじゃないか。」とどこがからかうポイントなのかわかってない様子だった。彼女からすると私の名前は「すぐに読めないからよくない。」らしい。



藍は頭が良かった。とんでもなく。


まず、持っている知識量が尋常じゃない。私が世間知らずなのはいいさ、認めよう。歴史の家庭教師が暗殺者だった時に授業を受けるのをやめてしまったから。

私が物を知らなければ知らないだけ、藍は躍起になって私に知識を詰め込んだ。

「そんなに教養がなくては、どんなに強くても。」

藍の口癖だが、どういう意味だか全く分からない。まあいいか。

【いや、全然よくはない。】

しかし、さすがに兵法を読んだり、法律の条文を集めたり、異国語を解読したり、これはできすぎではないだろうか?竜使いになるのは大変なんだな…。

【いや、竜使いにそんな知識はいらない。他の竜使いと話して不思議に思え。】

「どうやってそんなに覚えたの?」

「一度読めば覚えられるだろう?」

え、そうなの?私の脳みそが一般人よりも劣っているのか…。

【それはそうかもしれないが、私もさすがに一度では覚えれれない。】


そして、頭の回転が速い。飛世が蒼ノ宮家に預けられたという事件と貴族間の勢力図から何が起きているのかを推測してみせた。

後日、それがほぼ正解だったことが判明する。

「どうやったら、藍みたいに考えられるようになる?」

「毎日考える!まずはそれから!」

藍のスパルタ教育はそこから始まった。

「異国の船が異人街でしか受け入れられていないのはなぜだと思う?」

「米が値上がりしてたら何が起きたんだと思う?」

「一般の優秀な市民が官吏を目指すようになるにはどうすればいいと思う?」

毎日色んな質問をされた。

【あ、これ私が藍姫にやったことだな…。】

「愛着があるから?」

「お金が欲しいから?」

「…お給料を上げる?」

飛世なりの頑張った答えに対し、藍はいつも、視点を変えろと言ってくる。

「陛下の視点になってみろ。何が乗ってるかわからない船が知らない場所で上陸してたらどう思う?」

「逆に考えて。高いものはどんなものか考えるんだ。」

「高い給料は魅力的だが、それは市民にとってだけじゃないだろう?まず市民が国試を受けない理由を考えるんだ。」

飛世の考える力がめきめきと上がったことは言うまでもない。



そんな藍にはこれまた頭のいい相棒がいた。綺麗な青色の竜でその名も瑠璃るり。日に当たると体がきらきらとして見えるため、青じゃなくて瑠璃なのかな。


藍と瑠璃の連携は、恐ろしいことにアイコンタクトを超える。

藍は瑠璃の方を見てもいないのに、瑠璃が投げた物を藍がつかむ、みたいな光景は日常茶飯事だった。また、瑠璃は人の言葉がわかるのか、私と藍の会話を聞いて頷いたり、怒って翼をバタバタさせたりする。

今は幼いため小さい竜だが、これが成体となり、藍と連携して襲ってきたら、きっと飛世でも勝てないだろう。

【いやいや、気にするところはそこじゃないだろう?というか、幼体の頃なら勝てるのか?】




そうしてあっという間に楽しい四か月が過ぎ、帝から城へ帰ってくるようにと命令がくだった。

「藍、いろいろ教えてくれてありがとう。町とかにも連れて行ってくれて、初めてのことがいっぱいでとても楽しかったよ。」

「ああ。教えたことを生かして立太子を回避するように動くんだぞ。まずは、と話すこと。」

藍との対話で父上が飛世の東宮への立太子を検討している可能性を知った。…やだ。絶対になりたくない。あんな腹の内の探り合い、私には無理だ。

第一王子、兄上の顔を頭の片隅に思い出して憂鬱な気持ちにもなる。飛世は昔から第一王子が苦手だった。四つ年上の兄はあまり飛世に接触しては来ず、ただ遠巻きに自分のことを観察していた。

それがまるで悪いところを探されているようで、とても緊張した。

…せめて藍がいるときに兄上と話したい。

「これからも仲良くしてくれる?その…友達として?」

「もちろん。手紙を書くから返事を待ってる。」

飛世はそれを聞いて顔を輝かせた。飛世にとっては初めての友達である。藍も友達だと思ってくれていたことが嬉しい。

「かならず返事を書くよ!すぐに手紙送って!」


そうして飛世はるんるんで帰っていくのだが、一月待っても藍からの手紙が来ず、手紙が届く前にアポなしで蒼ノ宮家に遊びに来て、藍に怒られることとなる。

【ああ、そうか。】



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