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本編・裏
後編1
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「父上。私が東宮になるからこいつに高峯の跡地をやってくれ。」
爽一に命じられて手足としてあくせくと働いていたある18歳の秋の終わり、ついに飛世は東宮ルートを完全に外れることになった。
「飛世、お前は姓を賜って臣下におりろ。高峯の跡地には屋敷が整備されている。私が設計に口をだしたから出来栄えは最高だ。そこをお前の安心できる場所にするといい。」
兄上は約束を覚えていてくださったのだ!【この頃には完全に飛世は私に懐いて犬みたいだったな。藍姫も言っていたが。】
「ありがとうございます!兄上!」
「まずは信頼できる使用人を雇わなくてはな。藍姫にきくといい。」
この頃の兄上は、何でもかんでも『藍姫にきくといい』と言っていた。まあ、飛世は言われなくても藍にきいただろうが。
【この頃の藍姫は飛世の頼みはまず断らなかったからな…。案外好きな人には尽くすタイプだったんだな。】
「あとは嫁だ。」
爽一の言葉に、飛世はめずらしくひらめいた。
ーーーー
「…アドバイスはしたけど、私はこの屋敷に住むわけじゃないんだから、面接まで一緒にやる必要はないんじゃないか?」
「…藍がいないと、私、悪い人に騙されるかも。」
なぜか藍に納得された。…私的には苦しい言い訳だと思ったのだが。
「藍はどの人が良いと思った?」
秘書の候補には良家の次男や三男が10人ほどがいた。一人一人と屋敷で面接をし、話をきいた。中には仲がいい兄弟であると噂の飛世を足掛かりに爽一とかかわりを持ちたい者もいた。
…仲がいい兄弟だなんて、嬉しい。
【もう何も言うまい。】
「私はこの三人がいいかなと。」
飛世は藍に三枚の書類を渡す。
「…なんで、あからさまに爽一様目当ての候補を選ぶんだ?まあ、他よりはましだけど。絶対これだ。」
藍は三枚の中から一枚を抜き取り、飛世に渡す。そこには貧乏貴族・高遠家の次男・鳴海の名前があった。
次に侍女頭候補者の面接を行った。そこには飛世の見知った顔があった。
「朝子?姉上の侍女だったよね?あれ、寿退社したんじゃなかったっけ?未婚ってあるけど?」
飛世は藍のように一読で本の内容を覚えられるようなことはないが、人の顔と名前はよく覚えていた。藍も一度会ったことがあるが、覚えていなかったらしく驚いた顔だ。
「朝子さん?王女様の輿入れの時にお会いした?いや、全然顔が違うじゃないか?いや、でも飛世が言うなら…。」
藍は朝子の経歴を眺めて、朝子を眺めて、ニンマリした。
「東雲だな?」
【すべての情報から東雲を見破る藍姫もさすがだが、東雲の変装を見破る飛世も…こいつは人じゃなかったな。】
東雲とは帝直属の暗殺集団のことである。その後、藍と朝子は二人でごにょごにょと話しだし、終わったころには意気投合していた。
「藍姫…いえ、奥様のためなら侍女頭、喜んで引き受けますわ!」
「あ、いや、私は奥様じゃなくて…。」
「え、それならお断りです。」
ここからは飛世の出番だった。小声で朝子に、とっておきの情報をささやき、無事に侍女頭が決まった。
「…飛世って、誰のことでもよく見てるんだな。」
後で藍が少し残念そうな顔でそう言っていたのが妙に印象に残った。
ーーーー
そして、すべての準備が整って、飛世は藍のいる蒼ノ宮家を訪れた。藍の相棒の瑠璃は今一人前昇任試験のために旅に出ている。瑠璃がいないと藍は蒼ノ宮家を留守にしたいようだが、今日は無理を言って家にいてもらっている。
「あ、藍を、嫁に?」
藍の父であり、蒼ノ宮家の当主兼竜使い頭領である翔が驚いた顔で飛世を見つめている。
「はい。こちらが父上からの正式な書状です。」
翔は書状に目を通し、困ったような顔をしている。蒼ノ宮家の長老たちが藍を身内で結婚させたがっているためだろう。板挟みのような状態にして申し訳ないが…。
「王家からの正式な打診を、まさか断られるんですか?」
こうして父親の許可が出た。
藍の父との会談の後、飛世は藍のところに来てその手を取った。周囲には竜使いたちが修行をしていて、聴衆は十分だ。兄上にも『公開プロポーズして来い』と言われている。
「藍にそばにいてほしい。私の嫁に来てくれませんか?」
藍が目を瞠って、固まった。…珍しい表情だ。もしかして、嫌だった?驚かそうと思って、何の相談もしなかったのがまずかったかな?兄上は問題ないって言ってたけど、兄上も人だからな…間違うこともあるかも。
【本当にこの時のお前は藍姫の気持ちに気づいてないんだな…。こんな簡単なこと、私は間違えんわ。】
「もちろん、竜使いはやめなくていいよ。王子の妻だったら難しいかもしれないけど、一臣下の妻なんだ。むしろ父上も兄上も仕事を続けてくれるのに賛成だって言ってたし。
一人前になったら結婚して、私の屋敷に住んで、そこから任務に通えばいい。馬だと遠いけど、瑠璃なら30分もあれば蒼ノ宮邸に来られるだろう?
瑠璃の住処も作ってもいいよ。庭に畑があるんだ。竜の小屋があったって問題ないよ。広いし。」
思わず、藍にとっての好条件を畳みかけてしまう。
…ダメだったかな?でも、私の嫁は藍しか考えられないし、安心できる場所には藍もいてほしいし。
藍ははっとしたように口を開いた。
「う、嬉しい!結婚する!嫁に行く!」
藍は大きい声で了承してくれた。思わず声をあげて笑って藍のことを抱きしめた。
藍を婚約者として紹介するため、その日は二人で鳴海と朝子が待つ屋敷へと向かった。朝子がめちゃくちゃ喜んだ。
しかし、正式な書状を躱したにも関わらず、蒼ノ宮家は婚約の儀の日取りをなかなか決めようとしなかった。
そして、二週間後、突然藍が死んだという連絡が来た。
爽一に命じられて手足としてあくせくと働いていたある18歳の秋の終わり、ついに飛世は東宮ルートを完全に外れることになった。
「飛世、お前は姓を賜って臣下におりろ。高峯の跡地には屋敷が整備されている。私が設計に口をだしたから出来栄えは最高だ。そこをお前の安心できる場所にするといい。」
兄上は約束を覚えていてくださったのだ!【この頃には完全に飛世は私に懐いて犬みたいだったな。藍姫も言っていたが。】
「ありがとうございます!兄上!」
「まずは信頼できる使用人を雇わなくてはな。藍姫にきくといい。」
この頃の兄上は、何でもかんでも『藍姫にきくといい』と言っていた。まあ、飛世は言われなくても藍にきいただろうが。
【この頃の藍姫は飛世の頼みはまず断らなかったからな…。案外好きな人には尽くすタイプだったんだな。】
「あとは嫁だ。」
爽一の言葉に、飛世はめずらしくひらめいた。
ーーーー
「…アドバイスはしたけど、私はこの屋敷に住むわけじゃないんだから、面接まで一緒にやる必要はないんじゃないか?」
「…藍がいないと、私、悪い人に騙されるかも。」
なぜか藍に納得された。…私的には苦しい言い訳だと思ったのだが。
「藍はどの人が良いと思った?」
秘書の候補には良家の次男や三男が10人ほどがいた。一人一人と屋敷で面接をし、話をきいた。中には仲がいい兄弟であると噂の飛世を足掛かりに爽一とかかわりを持ちたい者もいた。
…仲がいい兄弟だなんて、嬉しい。
【もう何も言うまい。】
「私はこの三人がいいかなと。」
飛世は藍に三枚の書類を渡す。
「…なんで、あからさまに爽一様目当ての候補を選ぶんだ?まあ、他よりはましだけど。絶対これだ。」
藍は三枚の中から一枚を抜き取り、飛世に渡す。そこには貧乏貴族・高遠家の次男・鳴海の名前があった。
次に侍女頭候補者の面接を行った。そこには飛世の見知った顔があった。
「朝子?姉上の侍女だったよね?あれ、寿退社したんじゃなかったっけ?未婚ってあるけど?」
飛世は藍のように一読で本の内容を覚えられるようなことはないが、人の顔と名前はよく覚えていた。藍も一度会ったことがあるが、覚えていなかったらしく驚いた顔だ。
「朝子さん?王女様の輿入れの時にお会いした?いや、全然顔が違うじゃないか?いや、でも飛世が言うなら…。」
藍は朝子の経歴を眺めて、朝子を眺めて、ニンマリした。
「東雲だな?」
【すべての情報から東雲を見破る藍姫もさすがだが、東雲の変装を見破る飛世も…こいつは人じゃなかったな。】
東雲とは帝直属の暗殺集団のことである。その後、藍と朝子は二人でごにょごにょと話しだし、終わったころには意気投合していた。
「藍姫…いえ、奥様のためなら侍女頭、喜んで引き受けますわ!」
「あ、いや、私は奥様じゃなくて…。」
「え、それならお断りです。」
ここからは飛世の出番だった。小声で朝子に、とっておきの情報をささやき、無事に侍女頭が決まった。
「…飛世って、誰のことでもよく見てるんだな。」
後で藍が少し残念そうな顔でそう言っていたのが妙に印象に残った。
ーーーー
そして、すべての準備が整って、飛世は藍のいる蒼ノ宮家を訪れた。藍の相棒の瑠璃は今一人前昇任試験のために旅に出ている。瑠璃がいないと藍は蒼ノ宮家を留守にしたいようだが、今日は無理を言って家にいてもらっている。
「あ、藍を、嫁に?」
藍の父であり、蒼ノ宮家の当主兼竜使い頭領である翔が驚いた顔で飛世を見つめている。
「はい。こちらが父上からの正式な書状です。」
翔は書状に目を通し、困ったような顔をしている。蒼ノ宮家の長老たちが藍を身内で結婚させたがっているためだろう。板挟みのような状態にして申し訳ないが…。
「王家からの正式な打診を、まさか断られるんですか?」
こうして父親の許可が出た。
藍の父との会談の後、飛世は藍のところに来てその手を取った。周囲には竜使いたちが修行をしていて、聴衆は十分だ。兄上にも『公開プロポーズして来い』と言われている。
「藍にそばにいてほしい。私の嫁に来てくれませんか?」
藍が目を瞠って、固まった。…珍しい表情だ。もしかして、嫌だった?驚かそうと思って、何の相談もしなかったのがまずかったかな?兄上は問題ないって言ってたけど、兄上も人だからな…間違うこともあるかも。
【本当にこの時のお前は藍姫の気持ちに気づいてないんだな…。こんな簡単なこと、私は間違えんわ。】
「もちろん、竜使いはやめなくていいよ。王子の妻だったら難しいかもしれないけど、一臣下の妻なんだ。むしろ父上も兄上も仕事を続けてくれるのに賛成だって言ってたし。
一人前になったら結婚して、私の屋敷に住んで、そこから任務に通えばいい。馬だと遠いけど、瑠璃なら30分もあれば蒼ノ宮邸に来られるだろう?
瑠璃の住処も作ってもいいよ。庭に畑があるんだ。竜の小屋があったって問題ないよ。広いし。」
思わず、藍にとっての好条件を畳みかけてしまう。
…ダメだったかな?でも、私の嫁は藍しか考えられないし、安心できる場所には藍もいてほしいし。
藍ははっとしたように口を開いた。
「う、嬉しい!結婚する!嫁に行く!」
藍は大きい声で了承してくれた。思わず声をあげて笑って藍のことを抱きしめた。
藍を婚約者として紹介するため、その日は二人で鳴海と朝子が待つ屋敷へと向かった。朝子がめちゃくちゃ喜んだ。
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