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本編・裏
後編2
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「あ、兄上…。」
飛世は急に藍と会えなくなり、さらに突然に藍は死んだと言われて、飛世は毎日のように蒼ノ宮家に抗議に行っているが、何の成果も得られずに帰ってきて、毎日のように爽一に涙目で助けを求めていた。
事態が動かないのを見て、爽一が作戦会議を開いてくれたのは藍の死亡連絡から5日が過ぎていた。
「朝子の偵察の報告を頼む。」
爽一は従者を一人だけ連れて、飛世の屋敷に来てくれていた。会議室では朝子が作った蒼ノ宮家の全体図を広げていた。
「蒼ノ宮家の全体像はつかみました。竜の生息地である森を除いてくまなく奥様を探しましたが、見つけることはできませんでした。竜を飼育している森は、竜による監視が厳しく、私も入ることができませんでした。
でも、人間用の食事の準備をして入っていく者を確認しました。奥様はそちらにいらっしゃる可能性があります。」
「蒼ノ宮家で飼育されている竜は、蒼ノ宮家の直系と世話係しか受け付けないんだ。私も一度、藍と行ったけど威嚇された。」
爽一は腕を組んで話を聞いている。
「藍姫が生きていることは確認できなかったんだな?」
「…はい。」
「生死不明な藍姫のために、竜が襲ってくるような危険を冒して救出作戦はさせられない。」
「藍が死んだなんてありえません!一週間前までぴんぴんしてたのに、心臓の病なんて!」
「突然死するのが心臓の病だ。」
「で、でも…。」
「なぜ蒼ノ宮家は藍姫の死を偽造してまで、藍姫を蒼ノ宮家にとどめたいんだ?理由によっては手を出さない方がいいかもしれない。」
「そ、そんな!…あ、藍は蒼ノ宮家では蒼ノ宮の血が濃くなれば、始祖のような竜と心通わす存在が生まれると考えられていると言っていました。」
「では、蒼ノ宮家300年ぶりの姫は絶対に身内と縁付かせたいと。そうしないと竜使いの数が減るのか?それはそこそこ問題だぞ?」
「でも、蒼ノ宮姓にこだわらなければ、竜使いの数は減っていません。むしろ蒼ノ宮姓の竜使いは頭が固いし、プライドは高いし、直系以外は使えないと…兄上もご存じのはずです。」
「まあ、そうだな。では、ここで危険を冒して藍姫を救うとして、お前が率先して助けに行くんだろう?」
「はい、もちろんです!」
「さすがのお前も竜には勝てないだろう?お前を失う危険を冒してまで、藍姫を救わねばならない理由はなんだ?」
飛世は目を瞠った。藍を救わなければならない理由?兄上は藍を見捨てる気なのか?じゃあ、もう、藍には会えない?
結婚の約束をして、この先もずっと一緒にいられるんだと疑うことはなかった。出会ったときから、今日までずっと藍に助けてもらってきた。…もしかして藍はこうなる可能性があることを知っていたんじゃないか?知っていたなら相談してくれれば…いや、今まで藍に頼りっぱなしだったから、大事な時に頼りにしてもらえないんだ。
藍に頼りにしてもらていなかったことが、何より辛かった。
ーいや、悲しむのは後だ。今は兄上に藍を助けたいと思ってもらわなければ。
「藍がいないなら、私は、兄上の部下をやめます!」
「は!?」
その時、会議室の扉を誰かが勢いよくたたいた。消去法で鳴海しかいない。
「飛世殿!奥様の竜の瑠璃様がいらっしゃいました!」
ーーーー
「瑠璃?」
美しい青色の竜が庭に下り立っていた。大変だったというように首を振っている。
「昇進試験は?終わったのかな?」
瑠璃は飛世を見て大きく頷き、指先のかぎ爪で地面をつつき始めた。
「る、瑠璃?何やってるの?」
「…お前、竜と話せるのか?」
爽一がきいてくる。
「いや、もちろん話せませんけど、瑠璃はすごく頭がいいんです。私たちの言葉も理解していると思います。試験が終わって、藍がいなくて、蒼ノ宮の連中では話にならなくて、こっちに来たのかも。」
【ついに連中にまでなりさがったか…。親戚になる予定だったのに。】
「では、瑠璃からも情報をもらうのは難しいか…。」
「でも、藍はいつも瑠璃と頭で会話しているみたいだったので、私たちよりは情報を持っているかも。はいといいえで答えられる質問なら新情報が得られるかも。」
「…待て、竜と頭で会話している?」
「はい。竜使いの技なのではないのですか?」
「そんなことできるのは、蒼ノ宮家でも始祖だけだ。竜使いの技なんかじゃない。…これは、藍姫は血を濃くするため以外の理由で家にとどめようとしているのかもしれないな。
ところで、瑠璃はさっきから何をやっているんだ?」
瑠璃は、これ難しいわね、みたいな感じで地面に何かを、書いている?
飛世が近寄って瑠璃の手元を覗き込むと、そこには文字らしきものがあった。全て平仮名で”あいをたすけて”と読める。
「『あいをたすけて』?藍は生きてるの?」
瑠璃は大きく頷く。
「どこかに閉じ込められてるの?」
また大きく頷く。
朝子が先ほどの蒼ノ宮家の地図を持ってきて、瑠璃に見せると、瑠璃は鼻先で一点を示した。
それは、さきほど推測した通り、竜の生息地である森であった。
飛世は急に藍と会えなくなり、さらに突然に藍は死んだと言われて、飛世は毎日のように蒼ノ宮家に抗議に行っているが、何の成果も得られずに帰ってきて、毎日のように爽一に涙目で助けを求めていた。
事態が動かないのを見て、爽一が作戦会議を開いてくれたのは藍の死亡連絡から5日が過ぎていた。
「朝子の偵察の報告を頼む。」
爽一は従者を一人だけ連れて、飛世の屋敷に来てくれていた。会議室では朝子が作った蒼ノ宮家の全体図を広げていた。
「蒼ノ宮家の全体像はつかみました。竜の生息地である森を除いてくまなく奥様を探しましたが、見つけることはできませんでした。竜を飼育している森は、竜による監視が厳しく、私も入ることができませんでした。
でも、人間用の食事の準備をして入っていく者を確認しました。奥様はそちらにいらっしゃる可能性があります。」
「蒼ノ宮家で飼育されている竜は、蒼ノ宮家の直系と世話係しか受け付けないんだ。私も一度、藍と行ったけど威嚇された。」
爽一は腕を組んで話を聞いている。
「藍姫が生きていることは確認できなかったんだな?」
「…はい。」
「生死不明な藍姫のために、竜が襲ってくるような危険を冒して救出作戦はさせられない。」
「藍が死んだなんてありえません!一週間前までぴんぴんしてたのに、心臓の病なんて!」
「突然死するのが心臓の病だ。」
「で、でも…。」
「なぜ蒼ノ宮家は藍姫の死を偽造してまで、藍姫を蒼ノ宮家にとどめたいんだ?理由によっては手を出さない方がいいかもしれない。」
「そ、そんな!…あ、藍は蒼ノ宮家では蒼ノ宮の血が濃くなれば、始祖のような竜と心通わす存在が生まれると考えられていると言っていました。」
「では、蒼ノ宮家300年ぶりの姫は絶対に身内と縁付かせたいと。そうしないと竜使いの数が減るのか?それはそこそこ問題だぞ?」
「でも、蒼ノ宮姓にこだわらなければ、竜使いの数は減っていません。むしろ蒼ノ宮姓の竜使いは頭が固いし、プライドは高いし、直系以外は使えないと…兄上もご存じのはずです。」
「まあ、そうだな。では、ここで危険を冒して藍姫を救うとして、お前が率先して助けに行くんだろう?」
「はい、もちろんです!」
「さすがのお前も竜には勝てないだろう?お前を失う危険を冒してまで、藍姫を救わねばならない理由はなんだ?」
飛世は目を瞠った。藍を救わなければならない理由?兄上は藍を見捨てる気なのか?じゃあ、もう、藍には会えない?
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藍に頼りにしてもらていなかったことが、何より辛かった。
ーいや、悲しむのは後だ。今は兄上に藍を助けたいと思ってもらわなければ。
「藍がいないなら、私は、兄上の部下をやめます!」
「は!?」
その時、会議室の扉を誰かが勢いよくたたいた。消去法で鳴海しかいない。
「飛世殿!奥様の竜の瑠璃様がいらっしゃいました!」
ーーーー
「瑠璃?」
美しい青色の竜が庭に下り立っていた。大変だったというように首を振っている。
「昇進試験は?終わったのかな?」
瑠璃は飛世を見て大きく頷き、指先のかぎ爪で地面をつつき始めた。
「る、瑠璃?何やってるの?」
「…お前、竜と話せるのか?」
爽一がきいてくる。
「いや、もちろん話せませんけど、瑠璃はすごく頭がいいんです。私たちの言葉も理解していると思います。試験が終わって、藍がいなくて、蒼ノ宮の連中では話にならなくて、こっちに来たのかも。」
【ついに連中にまでなりさがったか…。親戚になる予定だったのに。】
「では、瑠璃からも情報をもらうのは難しいか…。」
「でも、藍はいつも瑠璃と頭で会話しているみたいだったので、私たちよりは情報を持っているかも。はいといいえで答えられる質問なら新情報が得られるかも。」
「…待て、竜と頭で会話している?」
「はい。竜使いの技なのではないのですか?」
「そんなことできるのは、蒼ノ宮家でも始祖だけだ。竜使いの技なんかじゃない。…これは、藍姫は血を濃くするため以外の理由で家にとどめようとしているのかもしれないな。
ところで、瑠璃はさっきから何をやっているんだ?」
瑠璃は、これ難しいわね、みたいな感じで地面に何かを、書いている?
飛世が近寄って瑠璃の手元を覗き込むと、そこには文字らしきものがあった。全て平仮名で”あいをたすけて”と読める。
「『あいをたすけて』?藍は生きてるの?」
瑠璃は大きく頷く。
「どこかに閉じ込められてるの?」
また大きく頷く。
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