31 / 85
サウス帝国の皇子に捕まっているところに怒った宰相の娘が又現れました
しおりを挟む
私の所にころちゃんが帰ってきた。あれだけ探しても見つからなかったのに、帰ってきてくれて私はとてもうれしかった。その点ではあの破落戸達に感謝していた。
朝になって目を覚ますところちゃんが私の腕の中にいる。
私はその事を確認してぎゅっところちゃんを抱きしめる。
「クウーーーン」
ころちゃんが鳴いてくれて、私はころちゃんに頬ずりしてもふもふを堪能した。本当にころちゃんは可愛い。
そして、朝食の時間だ。
私はころちゃんと一緒に久々に朝食を食べる。ころちゃんのご飯とは中身は別だけど。お皿に首を突っ込んでいるころちゃんを見て安心するのだ。ころちゃんはガツガツ食べている。
あれ、今までと違う。
「ころちゃん。ご飯はもう少しゆっくり食べようよ」
私が思わず言ってしまった。
その言葉に
「まあ、姫様。ころちゃんは破落戸どもに飼われていたんですから、作法のなっていない食べ方をするのも仕方ありませんよ」
サーヤの言葉に何故かころちゃんは固まっていた。それからはゆっくりと一口一口噛みしめるように食べ出したんだけど。ころちゃんも私達の話す言葉が判るんだろうか?
私を攫った男達はどうやら誰かに命令されていたらしい。それが誰かはお父様達はあえて教えてくれなかったが、相当上の役職の者らしかった。相当上の役職者と言えば宰相しか思い浮かばないのだけど……でも、宰相が私を攫って何の得があるんだろう?
今でも王宮で我が物顔で歩いているのだ。私を攫う理由がよく判らなかった。
そういえばここ2、3日宰相の顔は見なかった。
怪しいと言えば怪しかった。
私は朝食の後は王宮内をころちゃんを連れて散歩した。
基本ころちゃんは放し飼いだ。まあ、宰相が王宮に来なくなったのならば問題ないはずだ。
「わんわん!」
ころちゃんが吠えた。何だろうと顔を上げると向こうからフェルディナント皇子がお付きの者を従えて歩いてくるところだった。私はアレイダとの件があるので、出来る限りフェルディナントとは顔を合わせないようにしていたのに、逃げる暇も無く捕まってしまった。
「カーラ様。ご無事で何よりでしたね」
フェルディナントは私が誘拐されたことを知っていた。
「はい、ありがとうございます。白い騎士様に助けて頂いたのです」
私は仕方なしにそう答えた。
「その白い騎士って誰だったのですか?」
「さあ、私を助けるだけ助けると、あっという間に去って行かれましたので」
フェルディナントの問いに私が首を振ると、
「なんとも変わった話ですね。身分を明かさないで逃げるように去って行くなんてその騎士も何か後ろ暗いところがあるんじゃないですか?」
「わんわん」
フェルディナントの言葉に急にころちゃんが大きな声で吠えだした。噛みついたら大変だと私は慌ててころちゃんを抱き上げた。
「そんなことありません。白い騎士様はとても高潔な方で、名乗られなかっただけです」
私がむきになって言うと、
「えっ、ああ、申し訳ありません。私がその場に居合わせていたらカーラ様を助けられたのにと少し悔しかったから、言っただけです。カーラ様が機嫌を損ねられたのならお詫びします」
あっさりとフェルディナントは私に謝ってきたのだ。悪い人ではないようだ。
「申し訳ありません。私も助けて頂いた肩を悪く言われたと思ってつい言葉が過ぎました」
私も謝った。
「いやいや、悪いのは私だ。あなたが赤くなるその白い騎士に思わず嫉妬してしまったのです」
フェルディナントの言葉に私は驚いた。
「まあ、フェルディナント様が嫉妬なさるなんてあり得ませんわ。いつも王宮の侍女達の話題を独占していらっしゃるフェルディナント様なんですから」
私が言うと
「そんなことはないですよ。現に私が一番心をひきたいと思う方は中々私の方を向いてくれませんし……」
そう言うと意味ありげにフェルディナントは私を見てくれたのだ。
「えっ」
私は思わず固まった。
そのようなことを男性に言われたことがなかったのだ。私は顔が赤くなるのを感じた。
「わんわん!」
ころちゃんが吠えてくれて私は正気に返った。
「もう、フェルディナント様はお上手ですね。思わず本気になってしまうところでした」
「本気になってもらって全然問題ないんだけど」
いたずらっ子のような顔をしてフェルディナントが言ってくれたが、やばいやばい。男の人に免疫のない私はすぐに赤くなってしまうのだ。さすが大国の皇子様。フェルディナントはこのように甘い言葉をいろんな女に言っているんだろうと私は思った。
「それよりもカーラ様。今度孤児院に行くときは必ず私も誘ってほしいのです。また、あなたが襲われるかもしれないと思うといても立ってもいられないので」
フェルディナントが言ってくれるが、
「フェルディナント様。さすがにサウス帝国の王族の方をそのような危険に合わせるわけにはいきません」
「いや、それはそうだが、我がサウス帝国を敵に回そうとなどするものはそう簡単にいないでしょう。私が傍にいるだけで、あなたも安全になると思うのですが」
フェルディナントがそう言うが、我が国のことに他国の王族を巻き込むわけにはいかなかった。
「あああら、カーラ様。このようなところでフェルディナント様と何をしていらっしゃるのかしら」
そこに一番会いたくないアレイダが現れたのだった。
まただ。私はうんざりした。
******************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
サウス帝国の皇子と話しているところに悪役令嬢の登場です。
朝になって目を覚ますところちゃんが私の腕の中にいる。
私はその事を確認してぎゅっところちゃんを抱きしめる。
「クウーーーン」
ころちゃんが鳴いてくれて、私はころちゃんに頬ずりしてもふもふを堪能した。本当にころちゃんは可愛い。
そして、朝食の時間だ。
私はころちゃんと一緒に久々に朝食を食べる。ころちゃんのご飯とは中身は別だけど。お皿に首を突っ込んでいるころちゃんを見て安心するのだ。ころちゃんはガツガツ食べている。
あれ、今までと違う。
「ころちゃん。ご飯はもう少しゆっくり食べようよ」
私が思わず言ってしまった。
その言葉に
「まあ、姫様。ころちゃんは破落戸どもに飼われていたんですから、作法のなっていない食べ方をするのも仕方ありませんよ」
サーヤの言葉に何故かころちゃんは固まっていた。それからはゆっくりと一口一口噛みしめるように食べ出したんだけど。ころちゃんも私達の話す言葉が判るんだろうか?
私を攫った男達はどうやら誰かに命令されていたらしい。それが誰かはお父様達はあえて教えてくれなかったが、相当上の役職の者らしかった。相当上の役職者と言えば宰相しか思い浮かばないのだけど……でも、宰相が私を攫って何の得があるんだろう?
今でも王宮で我が物顔で歩いているのだ。私を攫う理由がよく判らなかった。
そういえばここ2、3日宰相の顔は見なかった。
怪しいと言えば怪しかった。
私は朝食の後は王宮内をころちゃんを連れて散歩した。
基本ころちゃんは放し飼いだ。まあ、宰相が王宮に来なくなったのならば問題ないはずだ。
「わんわん!」
ころちゃんが吠えた。何だろうと顔を上げると向こうからフェルディナント皇子がお付きの者を従えて歩いてくるところだった。私はアレイダとの件があるので、出来る限りフェルディナントとは顔を合わせないようにしていたのに、逃げる暇も無く捕まってしまった。
「カーラ様。ご無事で何よりでしたね」
フェルディナントは私が誘拐されたことを知っていた。
「はい、ありがとうございます。白い騎士様に助けて頂いたのです」
私は仕方なしにそう答えた。
「その白い騎士って誰だったのですか?」
「さあ、私を助けるだけ助けると、あっという間に去って行かれましたので」
フェルディナントの問いに私が首を振ると、
「なんとも変わった話ですね。身分を明かさないで逃げるように去って行くなんてその騎士も何か後ろ暗いところがあるんじゃないですか?」
「わんわん」
フェルディナントの言葉に急にころちゃんが大きな声で吠えだした。噛みついたら大変だと私は慌ててころちゃんを抱き上げた。
「そんなことありません。白い騎士様はとても高潔な方で、名乗られなかっただけです」
私がむきになって言うと、
「えっ、ああ、申し訳ありません。私がその場に居合わせていたらカーラ様を助けられたのにと少し悔しかったから、言っただけです。カーラ様が機嫌を損ねられたのならお詫びします」
あっさりとフェルディナントは私に謝ってきたのだ。悪い人ではないようだ。
「申し訳ありません。私も助けて頂いた肩を悪く言われたと思ってつい言葉が過ぎました」
私も謝った。
「いやいや、悪いのは私だ。あなたが赤くなるその白い騎士に思わず嫉妬してしまったのです」
フェルディナントの言葉に私は驚いた。
「まあ、フェルディナント様が嫉妬なさるなんてあり得ませんわ。いつも王宮の侍女達の話題を独占していらっしゃるフェルディナント様なんですから」
私が言うと
「そんなことはないですよ。現に私が一番心をひきたいと思う方は中々私の方を向いてくれませんし……」
そう言うと意味ありげにフェルディナントは私を見てくれたのだ。
「えっ」
私は思わず固まった。
そのようなことを男性に言われたことがなかったのだ。私は顔が赤くなるのを感じた。
「わんわん!」
ころちゃんが吠えてくれて私は正気に返った。
「もう、フェルディナント様はお上手ですね。思わず本気になってしまうところでした」
「本気になってもらって全然問題ないんだけど」
いたずらっ子のような顔をしてフェルディナントが言ってくれたが、やばいやばい。男の人に免疫のない私はすぐに赤くなってしまうのだ。さすが大国の皇子様。フェルディナントはこのように甘い言葉をいろんな女に言っているんだろうと私は思った。
「それよりもカーラ様。今度孤児院に行くときは必ず私も誘ってほしいのです。また、あなたが襲われるかもしれないと思うといても立ってもいられないので」
フェルディナントが言ってくれるが、
「フェルディナント様。さすがにサウス帝国の王族の方をそのような危険に合わせるわけにはいきません」
「いや、それはそうだが、我がサウス帝国を敵に回そうとなどするものはそう簡単にいないでしょう。私が傍にいるだけで、あなたも安全になると思うのですが」
フェルディナントがそう言うが、我が国のことに他国の王族を巻き込むわけにはいかなかった。
「あああら、カーラ様。このようなところでフェルディナント様と何をしていらっしゃるのかしら」
そこに一番会いたくないアレイダが現れたのだった。
まただ。私はうんざりした。
******************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
サウス帝国の皇子と話しているところに悪役令嬢の登場です。
30
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は反省しない!
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。
性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。
折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!
たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。
なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!!
幸せすぎる~~~♡
たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!!
※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。
※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。
短めのお話なので毎日更新
※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。
※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。
《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》
※他サイト様にも公開始めました!
【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない
金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ!
小説家になろうにも書いてます。
【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました
藤原遊
恋愛
【溺愛・成長・政略・糖度高め】
※ヒーロー目線で進んでいきます。
王位継承権を放棄し、外交を司る第六王子ユーリ・サファイア・アレスト。
ある日、後宮の片隅でひっそりと暮らす少女――カティア・アゲート・アレストに出会う。
不遇の生まれながらも聡明で健気な少女を、ユーリは自らの正妃候補として引き取る決断を下す。
才能を開花させ成長していくカティア。
そして、次第に彼女を「妹」としてではなく「たった一人の妃」として深く愛していくユーリ。
立場も政略も超えた二人の絆が、やがて王宮の静かな波紋を生んでいく──。
「私はもう一人ではありませんわ、ユーリ」
「これからも、私の隣には君がいる」
甘く静かな後宮成長溺愛物語、ここに開幕。
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる