もふもふ子犬の恩返し・獣人王子は子犬になっても愛しの王女を助けたい

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
55 / 85

ころちゃん視点 今後の方針を悩んでいたら、フェルデイナントが王女を訪ねてきました

しおりを挟む
 その後、俺はカーラの部屋に帰ってきた。

 天井から見下ろしたカーラはとてもきれいだった。
 カーラは何も知らないですやすやと寝ていた。
 俺はそのカーラの胸元の俺の特等席に潜り込んだ。
 カーラはとても柔らかかったし、暖かかった。
 この美しいカーラを兇刃に倒させる訳にはいかなかった。
 でも、このままでは宰相派が反乱を起こして、カーラは捕まるか処刑されるかされてしまう。
 宰相の企てにその後ろ盾にノース帝国とサウス帝国がついていれば鬼に金棒だ。更にはレイのように近衞も裏切るかもしれない。
 何としてもそれを防がねばならなかった。

 でも、どうする?
 俺は自問自答した。

 今のまま、宰相側にノース帝国とサウス帝国がついていたら、国王軍に勝ち目はなかった。
 なら、前もって宰相の反乱を国王に知らせるか? 
 でも知らせてどうなる?
 信じてくれるかという問題もあるし、近衞の中にも既に宰相側に寝返っている奴もいるだろう。
 そいつらが国王が反乱を知ったと宰相に知らせれば、宰相が事を起こすのを早めるかもしれない。
 それはまずい。
 まあ、知らせるに越した事は無いが、十分に考えてやらないといけないだろう。
 しかし、この件は、宰相側にノース帝国だけでなく、サウス帝国までついているのが問題なのだ。せめてサウス帝国でも国王側についてくれればまだなんとかなるはずだ。

 そのためにはフェルディナントがカーラと婚約するのが一番なのだ。
 でも、それは俺が嫌だった。
 何故、カーラをフェルディナントに譲らないといけないのだ!
 カーラのこの美しく整った顔、きれいな青い瞳、笑うとえくぼが現れてとても可愛かった。そして、俺を抱いてくれる胸。この胸をフェルディナントにだけは絶対に渡したくなかった。

 しかし、翻って考えるに、俺がカーラを娶ったとして果たしてカーラを守れるのか?
 少なくとも獣人王国を追放された俺としては、後ろ盾に獣人王国がつくなんて事はあり得なかった。
 後ろ盾どころか、俺の身を捕まえるためなら、獣人国までこの国に攻め込みかねなかった。
 出来ることと言えば、この剣術だが、1人だけ強い剣士がいても仕方がなかった。
 俺一人が新たに加入しても攻め込む宰相軍を全て斬り捨てるなんて事は出来ないだろう。
 そう考えると俺に出来ることと言えば、落城して落ち延びるカーラを守ることくらいだ。他国に渡って平民カーラと貧しい暮らしをする位しか出来なかった。
 でも、そんなことがカーラに出来るのだろうか?
 今でもカーラは王宮の侍女達に世話されているのだ。自分で料理や洗濯などの家事をするなんて無理だろう。
 俺は他国に行っても獣人国に追われている身だ。この剣で生きていくのは目立つから中々難しいだろう。とすると庶民の間に潜伏して暮らしていくしかない。カーラにそんな生活を送らせるのは無理だし、カーラ自身耐えられないだろう。
 そう考えると俺とカーラが婚約するなんてあり得ないのだ。

 残された選択肢はカーラがあのガマガエルの宰相の息子と婚約するか、女たらしのフェルディナントと婚約するかどちらかだ。
 どう考えてもガマガエルよりはフェルディナントの方がましだろう。

「ふう」
 俺はため息をついた。
 でも、この俺のカーラをフェルディナントに譲りたくはなかった。
 それにたとえ俺が諦めたとしても、既にサウス帝国がフェルディナントをアレイダと婚約させる方針を決定しているのなら意味がないことだ。
 そうだ。もう一度、フェルディナントを探ってみよう。その上でどうするか対処を考えても良いだろう。
 俺は決断を先延ばしにいたのだった。


 翌日、俺は寝不足だった。
「ワウン」
 俺は大きなあくびをしたのだ。

「まあ、ころちゃん。どうしたの? 昨日はあまり寝られなかったの?」
 抱き上げてカーラが聞いてくれた。

「わんわん」
 俺はそう吠えるしか出来なかった。
 そう、君のことが心配で、寝られなかったんだよ。
 余程そう言いたかった。
 結局あの後もああでもないこうでもないといろんな事を考えて寝れなかったのだ。
 このままカーラの胸の中で眠りたい。
 俺は思わずそう思ってしまった。
 そんな時だ。

「カーラ様。フェルディナント様がいらっしゃいました」
 サーヤが部屋に入ってきてフェルディナントの訪れを告げたのだ。

「えっ、何も先触れも何もなしに?」
 カーラが思わず非難する口調でサーヤを見た。
「私もそう思いましたから、『昨日お伺いしておりましたでしょうか?』と嫌みを言いましたら、何でもすぐ傍に来たから寄ってみたと申されるのです。これは姫様、フェルディナント様はアレイダ様よりも姫様に気がある証拠でございますよ」
 サーヤは嬉しそうに言ってくれた。

「そんなのは判らないわよ」
 カーラは首を振ってサーヤに反論したが、その気満々のサーヤは急いでカーラを着飾らせたのだった。
 俺も渦中のフェルディナントが何をしに来たかとても興味があった。
 ここに来たと言うことは宰相のところのマドックがもう二度とフェルディナントはカーラのところに来ないと言っていたことと違うのだ。まだ、サウス帝国の方針が決まっていない可能性もあった。
 俺はカーラの腕に抱かれてフェルディナントとの面会に挑んだのだ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は反省しない!

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。 性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない

金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ! 小説家になろうにも書いてます。

折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!

たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。 なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!! 幸せすぎる~~~♡ たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!! ※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。 ※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。 短めのお話なので毎日更新 ※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。 ※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。 《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》 ※他サイト様にも公開始めました!

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!

永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手 ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。 だがしかし フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。 貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

処理中です...