ひみつのモデルくん

おにぎり

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8.俺が守る

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外に出ると、俺が蘭さんと暮らしていた部屋は、どでかいマンションの1階だったようだ。
俺は歩いた。ひたすら歩いた。2時間くらい歩いて、やっと見つけた交番に駆け込んだ。


そっからは大騒ぎで、取り調べを受けたり、家族と再開したり。
家族の様子なんか半端じゃなかったもん。とくに兄弟が。

「あぁ!!翠、どんなに心配したか!」

「うっ、もぅ、会えないかと思った...!!」

「怪我してない?!!早くおうち帰ろ?」

みんな寝不足だったのか、クマが酷いし、肌ツヤも悪い。せっかくの美形たちが台無しだ。俺のせいなんだけど。


「急にいなくなってごめんなさい」

涙目でぽつっとつぶやくと、兄さんたちも泣いていた。

「翠はなにも悪くない。これからはずっと一緒だよ?」

1番上の兄さんである蒼兄がそう言った。


俺は大きい男の人と接すること、狭くて暗い場所が怖くなった。いわゆる恐怖症だ。高校生になった今は男の人と話しても平気になったが、圧を感じると怖くなる。閉所暗所恐怖症は未だ治らず、パニックになってしまう。

その事件の後から、過保護だった兄さんたちがさらに過保護になった。それはもう過剰なほど。ちょっとコンビニに行くだけでも誰かしらついてくるし、GPSを忘れるとこっぴどく怒られる。学校へは毎日送迎もしてくれる。いたり尽くせりだったが、ちょっとめんどくさい。1回無断で遠くの本屋さんに行った時なんか、酷かった。
マナーモードにしてたから気づかなかったが電話の通知が30件、メッセージが150件ほど。
わずか15分ほどでこの量だ。




まぁ、こんなわけで、俺がこの学園で変装してるのも、兄達に言われたからだ。

「変装しないなら学校には通わせないし、モデルの仕事も辞めさせる。毎日ビデオ電話をすること。」


仕事をやめさせられるのはとても困るので、仕方なく変装しているのだ。ちなみに変装がバレてしまった場合、退学させられてしまう。




ちなみに、その後蘭さんがどうなったのかは知らない。家族に聞いても、悲しい顔で、「翠はそんなこと気にしないで。忘れなさい。」としか言われない。



俺は蘭さんのこと、結構好きだったんだけどな。あの部屋を見るまでは。今はもう怖いとしか思ってないけど





「俺がシェルってバレたら退学しなちゃ行けなくなるの。だから、誰にも言わないで欲しい」

話を聞き終えた夕は、悲しい顔をしていた。
俺のために怒ってくれてるんだ。優しい人だなとつくづく思う。夕は、琥珀色の瞳をまっすぐ俺に向けてきた。泣きそうに見える。

「誰にも言わないさ。俺が、翠のこと守るから。だから、、安心してよ」


「...夕さ、真面目すぎだよ。会ってちょっとしか経ってない俺のこと守るとか、優しすぎる」


「...誰にでも優しいわけじゃないよ」


どういう意味だろう?同室だからかな。同室ってだけの俺のことをこんなに心配してくれるのは、優しい人しかしないと思うのだけど。


夕は手を俺に向けて伸ばしてきた。そして、背中にその手が回った。抱きしめられている。しばらく頭が真っ白になって、固まっていると、耳元で囁かれた。


「なんかあったら俺に連絡して。すぐそば駆けつけるから」


何だこのイケメン。この顔でこの性格とか、イケメンにも程がある。勘弁してくれ。

そのままの体勢で頭を撫でられると、なんかふわふわしてくる。撫で方が上手い。俺はそのまま、眠りについてしまった。







すーすーと寝息を立て始めた翠を眺めて、俺はあたまを撫で続ける。翠が話したのは、想像していたよりもずっと重い話だった。翠の美しさ、優しさは、人を狂わせる。


俺が守ってあげたい。


ふわふわの髪を撫でていると、翠があたまをスリスリ、と手に擦り付けてきた。かわいい。心がほかほかと暖められる。こんな感情、俺には無いんだと思っていた。


翠を起こさないように、慎重にお姫様抱っこをすると、翠の部屋まで運び、ベットにおろしてあげた。布団をかけて、少し迷っておでこにキスをおとした。


「...おやすみ、翠」


すーすー、と可愛らしい寝息が聞こえるばかりだ。翠の部屋を後にして、自室に戻った。


翠のかわいい姿は、俺しか見ちゃダメだ。他の人には触れさせない。俺が守る。


だから。いつか俺のものに...。


真っ黒な想いが渦巻いていく。
それを自覚した夕は、自嘲気味な笑みを浮かべた。こんなことを思っているなんて、翠に嫌われてしまうかもしれない。でも、もう関係ない。必ず手に入れてみせるから。



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