借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~

わんた

文字の大きさ
43 / 64

第43話 お揃いがいいもんね

しおりを挟む
 出発前に必要な道具を買うため、渋谷を歩いている。ミスラムは転移門を盗まれないよう警備してもらっているため、今回はお留守番をしてもらっている。

 俺たちは夏の陽差しを受けながら畑仕事に向いた物を選ぶため、何でも売っているんじゃないかというお店のビルに入った。

「マスター、アウトドア系は地下にあるみたいですよ! 早く行きましょう! 売り切れちゃいます!」

 テンションがいつもより高いユミに手を引かれて、エスカレーターに乗り、地下一階のフロアに来た。

 展示用の小さいテントやタープがフロアの中心に設置されていて、棚の中にはキャンプに使うバーナー、折りたたみの椅子、電気ランタン、マット、焚き火台、料理道具などが並べられている。

 薪割り用のナイフや斧といったのもあって、魔物討伐にも使えそうだ。

「畑仕事用の道具が欲しいんだよね?」
「はい! 買いたいのは長靴と軍手、帽子、あとは……作業用のつなぎですね」

 全部畑仕事に使うものだ。放置ダンジョンの調査には必要ないんだけど、ユミにとっては最優先事項らしい。

 俺から手を離すと、長靴が置いてあるエリアで立ち止まり、商品を吟味している。

 気に入ったデザインは複数あるみたいで、ベースがピンクの白い水玉模様が付いた長靴、真っ黒で地味な長靴、水色とカエルの絵が描かれた長靴を見比べていた。

「気に入ったなら全部買うよ?」
「そんなお金、どこにあるんですか! 一つに絞るので、マスターは待ってください」

 これは時間がかかりそうだ。

 近くに寄りかかれそうな柱があったので、腕を組みながら体重を預けて視線を上げると、ちょうどユミの死角に緑色の長靴があった。クワガタとカブトムシのシルエットが描かれていて、虫好きにはピッタリだ。

 高いところにあるので、ユミは届かない。

 柱から離れてテントウムシの長靴を取ると、ユミの前に置いた。

「これはどうだ?」
「マスター、可愛いです!! 最高のデザインですねっ!」

 手に取って値札を見ると五千円もした。ユミの笑顔が凍り付く。

 次の言葉は予想できたので、勝手に奪い取ってレジに向かう。

「高いですよ?」
「必要経費だからギルドに請求する。問題ないよ」

 長靴が経費になるかは分からないけど、何としてもギルドに支払ってもらおう。

 知晴さんに土下座をすれば、許可は出そうな気がする。

 ダメだったら最悪借金をして解決だ。うん、完璧なプランである。

「マスターの長靴は、これでどうですか?」

 届かない場所にあるらしく、ユミが指をさした場所を見ると、おそろいの長靴が置いてあった。男性用らしく、サイズは大きい。

「同じのでいいの?」
「え……マスターは嫌なんですか…………」

 確認しただけなのに、絶望したような顔をされてしまった。

 信じられない、みたいな言葉をつぶやいていて、酷い勘違いをされている。

「確認しただけだから! お揃いにしよう!」
「マスター、無理してません?」
「してない! してないって!」

 必死に言ったら、ようやく気持ちが伝わったようだ。

 ほっと一安心していると、ユミが近くに置いてあった帽子を手に持った。花のあしらいが付いた、つばの広いサファリハットだ。色は薄いピンクで、店は女性向けのデザインとして置いている。

 ユミには似合いそうだ。どうやって褒めようかな。

「でしたら、全部お揃いにしましょう! いいですよね?」

 ええ! 俺もその帽子をつけるの?

 悪気なんて一切なさそうだから恐ろしい。

 断ったら、「私とのお揃いは嫌なんですね」って、悲しむのは目に見えている。でも俺はピンクの帽子なんて似合わないぞ。

「後はですね。作業用のつなぎは帽子に合わせた色で、軍手は普通の白が良いですね。それと帽子には虫のワッペンを付けて、可愛く仕上げたいんですけど、全部経費でいけそうでしょうか?」

 問題はそこじゃない! なんて、口が裂けてもいえない。

 俺はこの笑顔を守るため、羞恥心を捨てるんだ!

「全部経費でいけるよ。知晴さんにごり押しするから、ユミは気にせずお揃いの物を買っちゃおう」
「マスター! ありがとうございます!」

 手に持っていた商品を俺に預けると、ユミは小走りで他のエリアに行って、軍手や作業用つなぎまで持ってきてしまった。

 しかも狙い通りのデザインが置いてあったので、完全に女性向けの物ばかり。

 最後に見つけたワッペンがカマキリだったのは、俺への配慮だったのだろうか。

「マスター、いい買い物ができましたね」
「そうだね」

 ビルを出て買った商品を抱えているユミを見ていたら、女性向けのデザインを着ることなんて、どうでも良く思えた。

 ユミが幸せなら俺は文句ないからね。

 同行する探索者に笑われるぐらい、甘んじて受け入れよう。

「この後はどうします?」
「ブルーボルド草の種を買いたいんだけど、その前に家へ帰る?」

 盗難防止のため、一般の店だとマジックバッグの持ち込みは禁止されている。

 大荷物になったら一度帰った方がよいかもと思って提案した。

「いえ。このまま行きましょう」
「疲れない?」
「これでも精霊です。問題ありませんよ」

 魔物と戦えるぐらい頑丈だもんね。

 そこら辺にいる探索者よりも強いんだから、気にするほうが失礼ってやつか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...