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第44話 錬金術師専用の店
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服を買い終わった後は、畑にまく種を買うため錬金術師だけが利用できる店に来た。
ここは錬金術で使う素材全般を扱っていて、ギルド会員じゃないと入れない。
一階には回復ポーションの素材となるブルーボルド草や、マナポーションの素材になるイエローボルド草などを置いてある。
ただ店に置いてある商品はエーテルの含有量が低いため、俺は買ったことないんだけどね。
「マスター、植物がいっぱいありますね。種も置いてあるのでしょうか」
店内には植木鉢に植えられた草花があって、それらを見ながらユミは種を探している。
中には触れれば手が腫れる毒草も置いてあるんだけど、注意書きなんて書いてない。客は全員、錬金術師だから、そういった細かいことは自己判断しろってことなんだろう。
「店員さんに聞いてみようか」
探してみたけど接客していて、声をかけられる雰囲気ではなかった。
他の店員さんが奥にいるんじゃないかなと探してみたけど、誰もいなかった。タイミングが悪い。
もう少し待とうと思ってユミがいた場所を見るけど、いなかった。
「え?」
脳裏に誘拐の文字がよぎったけど、そこら辺の男に負けるユミじゃない。相手が錬金術師でも、逃げ切れるスペックはある。大丈夫だ。焦るなと言い聞かせ、ゆっくりと店内を見渡してみるが発見できなかった。
人工精霊は食事はしても排泄はしない。トイレじゃないだろう。
どこに行ったんだ。
もしかして何も言わず、二階へ行ってしまったのだろうか。
はやる気持ちを抑えて階段を登った。
上のフロアは生き物が多数いた。犬や猫じゃない。ダンジョンに住まう魔物だ。
世間的には褒められた行為じゃないんだろうけど、錬金術は生き血や死体を素材として活用することもある。
しかも新鮮な方が質の良いものが錬成できるとあって、直前まで殺さないこともあり、そういった事情でお店でも生きたまま販売しているのだ。
檻に入ったコウモリやスライムを通り抜け、奥の方を進んで行く。
「あなたが呼んでいたの?」
ユミの声がした。
よかった誘拐じゃなかったみたいだ。
近寄ってみると、ユミは小さくしゃがんでいた。檻の中に指を突っ込んでいて、話をしているようだ。
「うん。そうなんだ。寂しかったね」
錬金術師御用達の店とはいえ、人間は販売していない。一体、誰と話しているんだろう。
気になって、静かに近寄り檻の中を見る。
黒い蜘蛛だった。サイズは一メートルぐらいだろうか。結構大きいな。
説明プレートには、福岡ダンジョンで捕獲した黒死蜘蛛という名前らしい。物騒な名前に恥じない毒を持っているようで、噛みつかれると一瞬にして筋肉が弛緩し、心臓が止まってしまうらしい。
そんな危険な魔物の檻に、指を突っ込んでいるの!?
「ゆ、ユミ? 危ないよ……」
勝手に移動したことを注意するのではなく、心配が先に出てしまった。
声で俺が近くにいると気づいたユミは後ろを向く。
「マスター、どうしたんですか?」
「その蜘蛛は猛毒を持っているんだけど、噛まれたりしてないかな」
「この子は優しいので、そんなことしませんよ」
前を向いて「ねー」とユミが言うにあわせて、黒死蜘蛛は前足を上げて同意するような動きをした。
まるでコミュニケーションが取れているようである。
「ユミは蜘蛛と話せたっけ」
「マスターは何を言っているんですか? できませんよ。そんなこと」
「だよね……」
もしそうなら、家の中にゴキブリが出ないよう、交渉してもらっていた。
「昆虫や節足動物ならお互いの意志が、なんとなく通じるぐらいはできますけどね」
「それで二階に来たの?」
「違います。魔物の場合は言葉が分かるようです」
すごい! そんなことできるんだ!!
虫が好きだとは思っていたけど、まさかそんな特殊能力が備わっていたとは思わなかった。しかも本人も自覚しないレベル。
元となった精霊の影響なんだろうけど、人間と混ざることで能力に変化が出ていたのか。
「上から助けを求める声が聞こえて、勝手に動いてしまいました。マスター、ごめんなさい」
「ユミが無事だったならいいよ」
気にしてないと伝えるため、頭を軽く撫でておいた。
「それで、なんて言っているの?」
「死にたくない。私の配下になるから助けてと言っています。マスター、どうしましょう?」
「買おう!!」
悩むまでもない。黒死蜘蛛を部下のように使えるのであれば、山小屋に出てくる害虫を食べてくれるだろう。特にゴキブリなんて、俺が見る前にパクッと食べて欲しい。
「マスター、いいのですか?」
「うん。山小屋の護衛にピッタリだよ」
「畑も守ると言っているので、使いどころは大きいかと! ですから、錬金術の実験には使わないでくださいね」
冗談ではなく、真顔で言われてしまった。
「ユミのペットを勝手に使うわけないじゃないか。ちゃんと許可を取って素材として……」
「マスター……それがダメなんですよ……。クロちゃんは絶対、素材にしないと約束してください」
もし特殊な個体だったら、足の一本か二本ぐらいもらおうと思っていたのがバレてしまったみたいだ。
仕方がない。必死になって何かを欲しがるってことをしなかったユミだ。名前を付けて愛着を持ってしまっているみたいだし、今回は本当に手を出すのを止めておこう。
「約束する。クロちゃんは素材として使わない」
「信じますからね! 嘘ついたら嫌いになりますよ」
「本当に守るから!」
何でこんなに信頼度が低いんだろう。
約束を破ったことはない……はずなのに。
普段の行いが悪いとか?
いや、まさか、そんなことは……。
クロちゃんとユミが遊んでいる間、少しだけ普段の行いを反省することにした。
ここは錬金術で使う素材全般を扱っていて、ギルド会員じゃないと入れない。
一階には回復ポーションの素材となるブルーボルド草や、マナポーションの素材になるイエローボルド草などを置いてある。
ただ店に置いてある商品はエーテルの含有量が低いため、俺は買ったことないんだけどね。
「マスター、植物がいっぱいありますね。種も置いてあるのでしょうか」
店内には植木鉢に植えられた草花があって、それらを見ながらユミは種を探している。
中には触れれば手が腫れる毒草も置いてあるんだけど、注意書きなんて書いてない。客は全員、錬金術師だから、そういった細かいことは自己判断しろってことなんだろう。
「店員さんに聞いてみようか」
探してみたけど接客していて、声をかけられる雰囲気ではなかった。
他の店員さんが奥にいるんじゃないかなと探してみたけど、誰もいなかった。タイミングが悪い。
もう少し待とうと思ってユミがいた場所を見るけど、いなかった。
「え?」
脳裏に誘拐の文字がよぎったけど、そこら辺の男に負けるユミじゃない。相手が錬金術師でも、逃げ切れるスペックはある。大丈夫だ。焦るなと言い聞かせ、ゆっくりと店内を見渡してみるが発見できなかった。
人工精霊は食事はしても排泄はしない。トイレじゃないだろう。
どこに行ったんだ。
もしかして何も言わず、二階へ行ってしまったのだろうか。
はやる気持ちを抑えて階段を登った。
上のフロアは生き物が多数いた。犬や猫じゃない。ダンジョンに住まう魔物だ。
世間的には褒められた行為じゃないんだろうけど、錬金術は生き血や死体を素材として活用することもある。
しかも新鮮な方が質の良いものが錬成できるとあって、直前まで殺さないこともあり、そういった事情でお店でも生きたまま販売しているのだ。
檻に入ったコウモリやスライムを通り抜け、奥の方を進んで行く。
「あなたが呼んでいたの?」
ユミの声がした。
よかった誘拐じゃなかったみたいだ。
近寄ってみると、ユミは小さくしゃがんでいた。檻の中に指を突っ込んでいて、話をしているようだ。
「うん。そうなんだ。寂しかったね」
錬金術師御用達の店とはいえ、人間は販売していない。一体、誰と話しているんだろう。
気になって、静かに近寄り檻の中を見る。
黒い蜘蛛だった。サイズは一メートルぐらいだろうか。結構大きいな。
説明プレートには、福岡ダンジョンで捕獲した黒死蜘蛛という名前らしい。物騒な名前に恥じない毒を持っているようで、噛みつかれると一瞬にして筋肉が弛緩し、心臓が止まってしまうらしい。
そんな危険な魔物の檻に、指を突っ込んでいるの!?
「ゆ、ユミ? 危ないよ……」
勝手に移動したことを注意するのではなく、心配が先に出てしまった。
声で俺が近くにいると気づいたユミは後ろを向く。
「マスター、どうしたんですか?」
「その蜘蛛は猛毒を持っているんだけど、噛まれたりしてないかな」
「この子は優しいので、そんなことしませんよ」
前を向いて「ねー」とユミが言うにあわせて、黒死蜘蛛は前足を上げて同意するような動きをした。
まるでコミュニケーションが取れているようである。
「ユミは蜘蛛と話せたっけ」
「マスターは何を言っているんですか? できませんよ。そんなこと」
「だよね……」
もしそうなら、家の中にゴキブリが出ないよう、交渉してもらっていた。
「昆虫や節足動物ならお互いの意志が、なんとなく通じるぐらいはできますけどね」
「それで二階に来たの?」
「違います。魔物の場合は言葉が分かるようです」
すごい! そんなことできるんだ!!
虫が好きだとは思っていたけど、まさかそんな特殊能力が備わっていたとは思わなかった。しかも本人も自覚しないレベル。
元となった精霊の影響なんだろうけど、人間と混ざることで能力に変化が出ていたのか。
「上から助けを求める声が聞こえて、勝手に動いてしまいました。マスター、ごめんなさい」
「ユミが無事だったならいいよ」
気にしてないと伝えるため、頭を軽く撫でておいた。
「それで、なんて言っているの?」
「死にたくない。私の配下になるから助けてと言っています。マスター、どうしましょう?」
「買おう!!」
悩むまでもない。黒死蜘蛛を部下のように使えるのであれば、山小屋に出てくる害虫を食べてくれるだろう。特にゴキブリなんて、俺が見る前にパクッと食べて欲しい。
「マスター、いいのですか?」
「うん。山小屋の護衛にピッタリだよ」
「畑も守ると言っているので、使いどころは大きいかと! ですから、錬金術の実験には使わないでくださいね」
冗談ではなく、真顔で言われてしまった。
「ユミのペットを勝手に使うわけないじゃないか。ちゃんと許可を取って素材として……」
「マスター……それがダメなんですよ……。クロちゃんは絶対、素材にしないと約束してください」
もし特殊な個体だったら、足の一本か二本ぐらいもらおうと思っていたのがバレてしまったみたいだ。
仕方がない。必死になって何かを欲しがるってことをしなかったユミだ。名前を付けて愛着を持ってしまっているみたいだし、今回は本当に手を出すのを止めておこう。
「約束する。クロちゃんは素材として使わない」
「信じますからね! 嘘ついたら嫌いになりますよ」
「本当に守るから!」
何でこんなに信頼度が低いんだろう。
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