性悪のお義母様をどうしても許せないので、ざまぁします。

Hibah

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私は伯爵令息のオーギュスト様と婚約しました。オーギュスト様は温厚な人柄で、貴族界の評判が高い方です。実際にお会いしたときの印象も良くて、いい方と巡り会えたなと思いました。

唯一の懸念といえばオーギュスト様のお母様にあたるジョアンナ様です。ジョアンナ様は"花の狂人"と呼ばれるほどの変わり者で、気難しいと言われていました。ただ、一緒に生活をするわけでもないため、気になりませんでした。

この婚約は私にとってほぼほぼ満足できる結果だなと思っていたのですが、突如として暗雲が立ち込めます。


「えっ! 噓でしょ! 工事が中止された!?」


私がつい叫んでしまったのは、父と夕食を囲んでいるときです。外は冬の寒さが厳しく、凍てつくような北風に枯葉が舞っています。父は食事の手を止め、真剣な面持ちになりました。


「古代の遺跡が出てきたそうだ。陛下は無類の遺跡マニアだからな。発掘調査をするらしい。大した遺跡でなければ調査したあと解放されるのだが……陛下の興奮が尋常でない。つまり、もうあそこに住むことは不可能だ。せっかく慎重に土地を選んだはずだったのに……また新しい土地を探さねばならん」


父は低い調子でこのように説明し、続けて面倒くさそうに言いました。


「アンナ、屋敷の建設の件は改めて考え直すとして、オーギュスト様と結婚するという契約はそのままだ。つまりお前には……向こうの実家にひとまず嫁いでもらう」


いやいやいやいや、ありえないありえないありえないって!

春に完成予定の屋敷でオーギュスト様と穏やかに暮らそうと思っていたのに、向こうの実家で暮らすなんて……肩身が狭すぎます。オーギュスト様のお母様は婚約の顔合わせの際、異常な剣幕で睨んできました。私の顔や全身をなめまわすように見てくるし、教養があるかどうか、息子にふさわしいか値踏みしてくる感じで……。思い出すだけでもぞっとします。ましてや一緒に暮らすなんて……地獄だ!


「嫌ですよそんなの! 土地なんていくらでもあるでしょ? どこでもいいです。立派な屋敷じゃなくたっていい。贅沢は言いませんから……お願い、お父様。夫婦の屋敷ができるまでここに住まわせて」


「おいおい、わがままを言わないでくれ。向こうにもこっちにも、家としての体面がある。変な土地にみすぼらしい屋敷を建てるわけにもいかんのだ。そして結婚する以上、夫婦は同じ屋根の下に住まねばならん」


「オーギュスト様のご家族に気を遣いながら生活しなくてはならないのでしょ? 憂鬱です……」


「いや、そうでもないと思うぞ。オーギュスト様の兄弟姉妹は皆結婚していて、いるのは父母と使用人だけだ。お前も大切にしてくれるさ」


「正直……ジョアンナ様のことがわかりません。顔合わせでは、ほとんど笑顔を見られませんでしたし……不安です。"花の狂人"という噂も聞いてます。一緒に暮らせるでしょうか?」


「心配しすぎるな。みんな噂話が好きなだけだ。人なんて会ってみないとわからんもんだよ。案外、ただのお花が好きな貴婦人かもしれん」


「お父様はジョアンナ様と話したことないのですか?」


「ほとんどない。ジョアンナ様はあまり社交場に出てくるタイプではないしな。アンナ、お前の結婚は家の繁栄のために必要なことなんだ。先延ばしにすればするほど良縁を逃す。俺が行ってくれといったところに嫁いでくれるのが最大の親孝行だよ。それ以外の孝行はいらん」


なにそれ……。私に選択肢はないのね……。




こうして抵抗むなしく、私は結果的にオーギュスト様の実家に嫁ぎました。オーギュスト様のお父様は寡黙な人で、あまり私に関心がないようでした。まあ……関心がありすぎるよりかは、ないくらいのほうが気楽です。

一方、オーギュスト様のお母様は……私の義母になったわけですが、嫁いだその日から面白くなさそうな顔をしています。私だって親に決められて結婚しただけです。ましてやオーギュスト様の実家で暮らすなんてことは予定にもなかったことです。少しくらいは私の気持ちを考えてくれてもいいはずなのに、冷たい視線を感じます……。

おかしい!

歓迎しないなら、そもそも結婚の許可なんて出さなかったらよかったのに。まともな大人であれば、心の奥底では思うことがあったとしても、表面上は取り繕います。それすらやってくれないなんて……ああ! 生活していけるのかしら!




嫁いだ日の翌日、お義母様は私を自室に呼び出して命令しました。

「あんたはもううちの娘になったんだから、言うことを聞いてもらいますよ。わかったら返事しなさい」
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