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四章 散らばった真実をかき集めて
24-2 幕間②
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俺はいつの間にか止めていた足を動かす。
ザク、ザク、と凍った地面が音を立てた。
『あ、もしかして今外? 帰り?』
「はい。近くの駅まで歩いてるところです」
『え、車は?』
「帰りは断ってるんです」
アイツらに家に来て欲しくなくて、とは言わなかった。
何となく、蜜希さんなら察してくれるだろうと思ったから。
『へぇ、そっか。それじゃあ、電車で帰って来るの? 電車、やってるの?』
「はい。地下鉄なので雪は関係ないですし、普通に運航してますよ」
『そうなんだ』
『都会ってすごいね』と蜜希さんが口を零す。
俺はつい笑ってしまった。そうですね、といえば、むすっとした声で『馬鹿にしてる?』と問われる。
馬鹿に何かしてない。ただ、愛しいなと思っただけで。
「してませんよ。それより、さっきの写真」
『うん? ああ、雪だるま? あれ、結構上手く出来てると思うんだけど、どう?』
「いいと思いますよ。俺も一緒に作りたかったです」
『帰って来たら作る? まだちょっと残ってる』
カラカラ、と電話の向こうで窓を引く音がする。
ベランダを見ているのだろう。それが凄く嬉しかった。
「そうですね。作ろうかな」
『寒いけどね』
「でも、蜜希さんが作ってくれた雪だるまも見たいので、そのままでお願いします」
『はーい。ところで、僕結構前からお腹空いてるんだけど、この辺スーパーとかコンビニとか見当たらなくてさ』
「ああ、まあ。高級住宅ですからね」
コンビニやスーパーなんてものはない。
大体の家が宅配か、基本的に外食の家が多いから、需要がないのだ。
そう言えば、蜜希さんは『ボンボンめ……』と恨めしそうに呟いた。気持ち的には違うと言いたいが、状況がそうなので、何とも言えない。
『まあいいや。で、冷蔵庫漁っていい?』
「もちろん、いいですよ。何か足りない物があれば、言ってください。帰りに買って行きます」
『はーい』
「それじゃあ、駅に着いたので……また、連絡します」
『うん。気を付けて帰って来るんだよ~』
ピロン、と音がして、通話が終わる。
俺は駅の改札を前にして、その場にへたり込んだ。
「気を付けて帰って来て、って……」
まさか、そんなことを言われることがあるなんて。
俺は口元に両手を当てた。嬉しすぎて口元がにやけてしまいそうだ。
(離れに居た時は直接の見送りばっかりだったから、何だか新鮮)
ゆっくりと立ち上がって、改札を潜る。
足元がふわふわと覚束ない。
やっぱり今日俺は死ぬんじゃないだろうか。
死因は幸せによる周囲への不注意。
でも、そんなダサい死に方したら、蜜希さんに怒られてしまいそうだ。呆れられてしまうかもしれない。それは絶対に嫌だ。
(蜜希さんに、悲しい思いは二度とさせたくないし)
あんな思い、一回で十分だろう。
俺はタカさんから聞いた蜜希さんの過去を思い出す。うん、今までの思考、よくなかったな。
これからはもうちょっと違う表現にしよう。
例えば、幸せ過ぎて爆発しそうとか。そういうので。
「戻って来い、危機感……戻って来い……」
電車を待つ間、俺は呪文のように唱えた。
近くに来たサラリーマンが、まるで変なものを見るかのような目で俺を見て、そそくさとどこかに行ってしまったが、そんなのどうでもいい。
俺は平常心を保つため、必死に自分に呪いをかけ続けた。
そのお陰か、俺は特に事故もなく家の最寄り駅までたどり着くことが出来た。
外に出ると震えるスマートフォン。
地下鉄だったから、通信が思うようにいかなかったのだろう。
画面を見れば、蜜希さんから怒りのお言葉が来ていた。
『冷蔵庫の中、何にもないんだけど!! 暁月くん普段何食べてるの!?』
「やっば」
忘れてた。
俺は慌てて駅中のデパートに舞い戻ると、売れ残りの総菜を買い込んだ。
翌朝の分も買ってしまったからか、そこそこの荷物になってしまった。
必死に帰路を走ること、数分。
家のチャイムを押せば、蜜希さんの声が聞こえる。
扉を開けた蜜希さんに、俺は袋を差し出した。
「っ、すみません! 夕飯、買ってきました!」
「ぷ……く……あ、ははは……!」
「えっ?」
腹を抱え、笑い転げる蜜希さん。
俺はその姿を呆然と見つめている事しかできなかった。
ザク、ザク、と凍った地面が音を立てた。
『あ、もしかして今外? 帰り?』
「はい。近くの駅まで歩いてるところです」
『え、車は?』
「帰りは断ってるんです」
アイツらに家に来て欲しくなくて、とは言わなかった。
何となく、蜜希さんなら察してくれるだろうと思ったから。
『へぇ、そっか。それじゃあ、電車で帰って来るの? 電車、やってるの?』
「はい。地下鉄なので雪は関係ないですし、普通に運航してますよ」
『そうなんだ』
『都会ってすごいね』と蜜希さんが口を零す。
俺はつい笑ってしまった。そうですね、といえば、むすっとした声で『馬鹿にしてる?』と問われる。
馬鹿に何かしてない。ただ、愛しいなと思っただけで。
「してませんよ。それより、さっきの写真」
『うん? ああ、雪だるま? あれ、結構上手く出来てると思うんだけど、どう?』
「いいと思いますよ。俺も一緒に作りたかったです」
『帰って来たら作る? まだちょっと残ってる』
カラカラ、と電話の向こうで窓を引く音がする。
ベランダを見ているのだろう。それが凄く嬉しかった。
「そうですね。作ろうかな」
『寒いけどね』
「でも、蜜希さんが作ってくれた雪だるまも見たいので、そのままでお願いします」
『はーい。ところで、僕結構前からお腹空いてるんだけど、この辺スーパーとかコンビニとか見当たらなくてさ』
「ああ、まあ。高級住宅ですからね」
コンビニやスーパーなんてものはない。
大体の家が宅配か、基本的に外食の家が多いから、需要がないのだ。
そう言えば、蜜希さんは『ボンボンめ……』と恨めしそうに呟いた。気持ち的には違うと言いたいが、状況がそうなので、何とも言えない。
『まあいいや。で、冷蔵庫漁っていい?』
「もちろん、いいですよ。何か足りない物があれば、言ってください。帰りに買って行きます」
『はーい』
「それじゃあ、駅に着いたので……また、連絡します」
『うん。気を付けて帰って来るんだよ~』
ピロン、と音がして、通話が終わる。
俺は駅の改札を前にして、その場にへたり込んだ。
「気を付けて帰って来て、って……」
まさか、そんなことを言われることがあるなんて。
俺は口元に両手を当てた。嬉しすぎて口元がにやけてしまいそうだ。
(離れに居た時は直接の見送りばっかりだったから、何だか新鮮)
ゆっくりと立ち上がって、改札を潜る。
足元がふわふわと覚束ない。
やっぱり今日俺は死ぬんじゃないだろうか。
死因は幸せによる周囲への不注意。
でも、そんなダサい死に方したら、蜜希さんに怒られてしまいそうだ。呆れられてしまうかもしれない。それは絶対に嫌だ。
(蜜希さんに、悲しい思いは二度とさせたくないし)
あんな思い、一回で十分だろう。
俺はタカさんから聞いた蜜希さんの過去を思い出す。うん、今までの思考、よくなかったな。
これからはもうちょっと違う表現にしよう。
例えば、幸せ過ぎて爆発しそうとか。そういうので。
「戻って来い、危機感……戻って来い……」
電車を待つ間、俺は呪文のように唱えた。
近くに来たサラリーマンが、まるで変なものを見るかのような目で俺を見て、そそくさとどこかに行ってしまったが、そんなのどうでもいい。
俺は平常心を保つため、必死に自分に呪いをかけ続けた。
そのお陰か、俺は特に事故もなく家の最寄り駅までたどり着くことが出来た。
外に出ると震えるスマートフォン。
地下鉄だったから、通信が思うようにいかなかったのだろう。
画面を見れば、蜜希さんから怒りのお言葉が来ていた。
『冷蔵庫の中、何にもないんだけど!! 暁月くん普段何食べてるの!?』
「やっば」
忘れてた。
俺は慌てて駅中のデパートに舞い戻ると、売れ残りの総菜を買い込んだ。
翌朝の分も買ってしまったからか、そこそこの荷物になってしまった。
必死に帰路を走ること、数分。
家のチャイムを押せば、蜜希さんの声が聞こえる。
扉を開けた蜜希さんに、俺は袋を差し出した。
「っ、すみません! 夕飯、買ってきました!」
「ぷ……く……あ、ははは……!」
「えっ?」
腹を抱え、笑い転げる蜜希さん。
俺はその姿を呆然と見つめている事しかできなかった。
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