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大戦1
英雄の凱旋
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「英雄の凱旋だ」
隣に並ぶ母上と側室達。それに、本当はまだ拘束中の身の上なのだが、義理の兄弟である徳川家の面々。あとついでに全国の諸大名。日の本で最も豪勢な出迎えだろう。それも大阪城前なんてケチなことは言わずに堺の港。それだけ偉業を為したと言う事のアピールであり、同時に赦免と言う形で功に報いることが出来ない償い、かもしれない。だが、まぁそんな事はどうでも良い。
ただ、出来るだけ早く会いたかった。それだけだ。
ふと、後ろを振り返る。本当ならそこにいて欲しい桜とお梅はいない。未だ伊賀の里で修行しているのだろう。そこだけは残念だが、それは未来につながっている。決して悲しむべきことではない。
そして、安宅船・大和はその威容を見せ付けるかのようにゆっくりと入港してくる。このために堺の港の船は一度全て追い出したので、その威容が一層引き立つ。
「また、随分と派手になされましたな」
久しぶりに牢の外に出た解放感もそこそこに秀忠がぼやく。確かにこの状態では家族の再会を喜びきれない、もしかしたらそう言う嫌味かもしれない。
「まぁ、政治的な駆け引きだよ。これで徳川家をどうこう言う奴はいなくなるぞ?」
「それにつきましては度重なるご恩情誠に――
「あのさ、一応秀忠は俺にとっても義父なんだよ? 父のために息子が頑張るのはそんなに大したことじゃないだろ?」
「殿・・・・・・」
「ま、実際に頑張ったのはお前のためじゃないけどな!」
ハッと笑ってやれば、皆も笑う。
明るいお千を出迎えるなら笑顔が一番。せっかく助かったんだ笑顔でいないとね。
「さぁ、来たぞ皆で出迎えよう」
大和の錨が下り、渡し板が立てられる。そして、真っ先に降りてきたのは、晴れやかな美しい着物ではなく、凛々しい女武者。
「・・・・・・お千」
「あなた」
立てられた渡し板は船の高さのため、向こうが相当に高く。見上げる様に見つめればまるで後光が眩く差し、戦女神の様に――
「兄上!」
泣きながらお千が駆け寄ってくる。
「兄上!」
人前では陛下と呼べと言ったのに、二人きりなら陛下と呼べと・・・・・・いや、呼びやすいように呼べば良い。俺は受け入れるだけ。
両手を拡げる。お千が帰ってくる場所が此処だと示すために。
それを見れば、お千も走って飛び込んでくる。幼い頃のその姿と変わらない元気に、そして、嬉しそうに。
「兄上」
「お千」
久しぶりに触れた小さい身体。でも、変わらない愛しい香り、愛しい温もり。ああ、本当にお千だ。
「・・・・・・フフ、ドーンじゃないんだな?」
「もう、私は子供じゃないんですよ?」
日ノ本の全ての大名が見ている中で抱き合う。人の目なんて気にしていたら天下人もその妻もやっていけない。そうだろう?
「子供だってそうじゃ無くたってどうでも良い。お千であれば、それで良い」
「はい。ただいま帰りました」
力一杯に抱きしめる。本当に久しぶりの感触。
「う、痛いです」
「何だ? 甲冑を着ているんだから大丈夫だろう?」
「あ、あと、その皆さんが見てます」
今更気づいたのか、周囲を見回し、恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋ずめる。
「どうでも良い。見せ付けてやれ」
お千の顎を持ち上げ、口づけしてやる。
「ん、ふぅ」
少し驚いた顔をするが、ゆっくりと受けいれ首に手を回してくる。
柔らかい唇を存分に愉しみ――
「へ、陛下。その、ただ今皇后様を連行いたしました」
押し倒しそうになったところで、同じくお久しぶりの信繁が絶妙に邪魔してくる。
「信繁。今、それを言う必要があったか?」
「正直、あったと思います」
まぁ、確かに止められなければ絶対このままやっていたけどさ。
「ふぅ、信繁。ありがとうな。よくぞお千を無事に連れ戻してくれた」
「いえ、もったいなきお言葉」
信繁が臣下の礼を取り、口を歪める。必死に笑みを抑えようとしているのは、俺が照れ隠しで褒めたのを分っているのだろう。信繁とも随分長い付き合いだ。それこそ俺が産まれた時からだから十八年?
「さ、家に帰ろう。お千」
「はい!」
そして、大阪城に向かって歩く。隣にはお千が、俺達の後ろには皆が続く。このまま戦功褒賞やら何やらを評定の間で・・・・・・。はぁ、そのまま裏内に行きたいなぁ。
隣に並ぶ母上と側室達。それに、本当はまだ拘束中の身の上なのだが、義理の兄弟である徳川家の面々。あとついでに全国の諸大名。日の本で最も豪勢な出迎えだろう。それも大阪城前なんてケチなことは言わずに堺の港。それだけ偉業を為したと言う事のアピールであり、同時に赦免と言う形で功に報いることが出来ない償い、かもしれない。だが、まぁそんな事はどうでも良い。
ただ、出来るだけ早く会いたかった。それだけだ。
ふと、後ろを振り返る。本当ならそこにいて欲しい桜とお梅はいない。未だ伊賀の里で修行しているのだろう。そこだけは残念だが、それは未来につながっている。決して悲しむべきことではない。
そして、安宅船・大和はその威容を見せ付けるかのようにゆっくりと入港してくる。このために堺の港の船は一度全て追い出したので、その威容が一層引き立つ。
「また、随分と派手になされましたな」
久しぶりに牢の外に出た解放感もそこそこに秀忠がぼやく。確かにこの状態では家族の再会を喜びきれない、もしかしたらそう言う嫌味かもしれない。
「まぁ、政治的な駆け引きだよ。これで徳川家をどうこう言う奴はいなくなるぞ?」
「それにつきましては度重なるご恩情誠に――
「あのさ、一応秀忠は俺にとっても義父なんだよ? 父のために息子が頑張るのはそんなに大したことじゃないだろ?」
「殿・・・・・・」
「ま、実際に頑張ったのはお前のためじゃないけどな!」
ハッと笑ってやれば、皆も笑う。
明るいお千を出迎えるなら笑顔が一番。せっかく助かったんだ笑顔でいないとね。
「さぁ、来たぞ皆で出迎えよう」
大和の錨が下り、渡し板が立てられる。そして、真っ先に降りてきたのは、晴れやかな美しい着物ではなく、凛々しい女武者。
「・・・・・・お千」
「あなた」
立てられた渡し板は船の高さのため、向こうが相当に高く。見上げる様に見つめればまるで後光が眩く差し、戦女神の様に――
「兄上!」
泣きながらお千が駆け寄ってくる。
「兄上!」
人前では陛下と呼べと言ったのに、二人きりなら陛下と呼べと・・・・・・いや、呼びやすいように呼べば良い。俺は受け入れるだけ。
両手を拡げる。お千が帰ってくる場所が此処だと示すために。
それを見れば、お千も走って飛び込んでくる。幼い頃のその姿と変わらない元気に、そして、嬉しそうに。
「兄上」
「お千」
久しぶりに触れた小さい身体。でも、変わらない愛しい香り、愛しい温もり。ああ、本当にお千だ。
「・・・・・・フフ、ドーンじゃないんだな?」
「もう、私は子供じゃないんですよ?」
日ノ本の全ての大名が見ている中で抱き合う。人の目なんて気にしていたら天下人もその妻もやっていけない。そうだろう?
「子供だってそうじゃ無くたってどうでも良い。お千であれば、それで良い」
「はい。ただいま帰りました」
力一杯に抱きしめる。本当に久しぶりの感触。
「う、痛いです」
「何だ? 甲冑を着ているんだから大丈夫だろう?」
「あ、あと、その皆さんが見てます」
今更気づいたのか、周囲を見回し、恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋ずめる。
「どうでも良い。見せ付けてやれ」
お千の顎を持ち上げ、口づけしてやる。
「ん、ふぅ」
少し驚いた顔をするが、ゆっくりと受けいれ首に手を回してくる。
柔らかい唇を存分に愉しみ――
「へ、陛下。その、ただ今皇后様を連行いたしました」
押し倒しそうになったところで、同じくお久しぶりの信繁が絶妙に邪魔してくる。
「信繁。今、それを言う必要があったか?」
「正直、あったと思います」
まぁ、確かに止められなければ絶対このままやっていたけどさ。
「ふぅ、信繁。ありがとうな。よくぞお千を無事に連れ戻してくれた」
「いえ、もったいなきお言葉」
信繁が臣下の礼を取り、口を歪める。必死に笑みを抑えようとしているのは、俺が照れ隠しで褒めたのを分っているのだろう。信繁とも随分長い付き合いだ。それこそ俺が産まれた時からだから十八年?
「さ、家に帰ろう。お千」
「はい!」
そして、大阪城に向かって歩く。隣にはお千が、俺達の後ろには皆が続く。このまま戦功褒賞やら何やらを評定の間で・・・・・・。はぁ、そのまま裏内に行きたいなぁ。
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