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クリスマスプレゼント
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ロイデマン 嵐で各所に浸透した海水が凍っている。
キルヒアイス 気圧計は上昇の気配を見せちゃいるが、今度は温度計が下がる一方だ。
クリンチ 太陽が、午前11時に昇って午前11時半には沈んでしまった。北極圏だから、当然だが。
エルトマンが飛び込んでくる
エルトマン ダメです。アセチレン・トーチでも解凍できません。
ルックナー ダメか?
エルトマン あぶっている間は溶けますが、やめるとたちまち溶けた水が凍ります。意味がありません。
ルックナー 風向きが変わるのを待つしかないか。
パーミェン 甲板が氷結しました。ハッチも氷結し、艦内と行き来ができません。
ルックナー 斧を使え。叩き割るしかない。
クリンチ すでにやっています。叩き割っても、波しぶきをかぶれば元の木阿弥です。
ルックナー 上手くいかんな。
クリンチ 艦長、北極に近寄り過ぎです。機関を起動させ、南に向かいましょう。機関を起動させれば、その熱で船体の氷が解凍することも期待できます。
ルックナー ダメだ、帆やマストが凍り付いてしまった。そのせいで「ゼーアドラー」はトップヘビーの状態にある。
クリンチ トップヘビーの状態でしょうか?艦体も凍り付いています。
ルックナー いや、危険だ。帆が海水を吸った状態で凍っているからな。見張り台も海水がたまって凍り付いている。もし艦の氷だけが解けたら、よりトップヘビーになる。その状態で横風を受ければ、どうなるかわかるだろう。
クリンチ ……横倒しになった際、復元力が不足して転覆する可能性がありますな。
ルックナー 帆が下ろせないからな。機関を動かしても北極へ向かう速度を速めるだけだ。
クリンチ 風向きが変わるのを待つしかありませんか。
ルックナー 今日はクリスマス・イブだ。夜にサンタが贈り物を持ってくるのを待つとしよう。風向きが変わるという贈り物をな。
クリンチ 持ってこなければ?
ルックナー 北極の氷に閉じ込められるかもしれん。その時は、アラスカのエスキモー同様氷で家を建造しよう。越冬できるくらいの食糧はあるだろう。
クリンチ ぞっとしない話ですな。
ルックナー 肝が冷えたか。こいつで温めろ
ルックナー スキットルをクリンチに放る
クリンチ これはありがたい。
ロイデマン 副長、独り占めはなしですぜ
クリンチ あぁ
クリンチ ロイデマンに放る
パーミェン ロイデマン、貴官こそ独り占めは無しだぜ
ロイデマン おうよ
ロイデマン スキットルをパーミェンに放る
ルックナー 伝声管にとりつく
ルックナー 厨房、聞こえるか?艦内の総員にラムを配給しろ!全員凍り付いているだろうから、溶かして置け
ナレーション そして、未明に風向きは変わる
パーミェン 風向きが変わった。弱いが北北東の風だ
クリンチ 艦長!
ルックナー 取り舵一杯、進路を南南東に向けろ!
ロイデマン 取り舵一杯了解!
ルックナー 伝声管に取り付く
ルックナー 進路、南南東!機関始動!全力で北極から遠ざかるぞ!
クラウス 機関始動了解!
クリンチ これで、まっとうに操艦できる。
クラウス 副長、機関はちょいとぐずり気味だ。それだけは頭に置いておいてくれ
クリンチ 貴重な燃料を帆船ごときにやれるか、という声があったからな
ルックナー 硫黄分の多い粗悪な油を回されたか。それでもいい。クラウス、お前が頼りだ。よく面倒を見てやってくれ
クラウス 了解、ちょくちょくバラして整備するよう心掛けます
ルックナー 頼む。ただ、しばらくはシュミットの手を油で汚さないでくれ。多分長い事じゃないが。
クラウス 難しい命令ですな。あいつは機関助手なんですぜ
ルックナー わかっている。二,三日中には、解除できると思うから頼む。あいつが切り札なんだ。油で爪が汚れていたらおかしいからな。
エルトマン 艦長!進行方向に煙が見えます。船が航行しています
ルックナー 即座に解除できるかもしれんな。クラウス、シュミットをこちらに寄こせ。プライス、艦内からの甲板への通路は確保できたか?
プライス 今、甲板への最後のドアを体当たりで破らせてます。
ルックナー 手荒な手段を使って構わん。むしろ奨励する。ドアでも壁でもブチ壊せ。
プライス 了解。
クリンチ 例の台本を使う時がきましたか。
ルックナー あぁ、こんな所をうろついてる船なんて、通商破壊戦に従事する仮装巡洋艦でなければ、哨戒している仮想巡洋艦に決まっているんだ。
プライス ドアを破壊しました。シュミットを向かわせます。
ルックナー よくやってくれた。後は台本に従って待機してくれ。
プライス 正体がバレた時の自沈処置ですな。了解しました。
ルックナー エルトマン、艦長室の物陰に隠れろ。もしバレたら「万事終わった」と言って艦内に合図しろ
エルトマン 了解!
ルックナー パーミェン!ノルウェー国旗を掲げろ!今からこの船は「イルマ」だ!
パーミェン 了解、艦長殿の愛しき人の名を冠した船になるのですな。
ルックナー そうだ!
ルックナーはブリッジを出る
暗転 船のセットは上手に仕舞われる。
キルヒアイス 気圧計は上昇の気配を見せちゃいるが、今度は温度計が下がる一方だ。
クリンチ 太陽が、午前11時に昇って午前11時半には沈んでしまった。北極圏だから、当然だが。
エルトマンが飛び込んでくる
エルトマン ダメです。アセチレン・トーチでも解凍できません。
ルックナー ダメか?
エルトマン あぶっている間は溶けますが、やめるとたちまち溶けた水が凍ります。意味がありません。
ルックナー 風向きが変わるのを待つしかないか。
パーミェン 甲板が氷結しました。ハッチも氷結し、艦内と行き来ができません。
ルックナー 斧を使え。叩き割るしかない。
クリンチ すでにやっています。叩き割っても、波しぶきをかぶれば元の木阿弥です。
ルックナー 上手くいかんな。
クリンチ 艦長、北極に近寄り過ぎです。機関を起動させ、南に向かいましょう。機関を起動させれば、その熱で船体の氷が解凍することも期待できます。
ルックナー ダメだ、帆やマストが凍り付いてしまった。そのせいで「ゼーアドラー」はトップヘビーの状態にある。
クリンチ トップヘビーの状態でしょうか?艦体も凍り付いています。
ルックナー いや、危険だ。帆が海水を吸った状態で凍っているからな。見張り台も海水がたまって凍り付いている。もし艦の氷だけが解けたら、よりトップヘビーになる。その状態で横風を受ければ、どうなるかわかるだろう。
クリンチ ……横倒しになった際、復元力が不足して転覆する可能性がありますな。
ルックナー 帆が下ろせないからな。機関を動かしても北極へ向かう速度を速めるだけだ。
クリンチ 風向きが変わるのを待つしかありませんか。
ルックナー 今日はクリスマス・イブだ。夜にサンタが贈り物を持ってくるのを待つとしよう。風向きが変わるという贈り物をな。
クリンチ 持ってこなければ?
ルックナー 北極の氷に閉じ込められるかもしれん。その時は、アラスカのエスキモー同様氷で家を建造しよう。越冬できるくらいの食糧はあるだろう。
クリンチ ぞっとしない話ですな。
ルックナー 肝が冷えたか。こいつで温めろ
ルックナー スキットルをクリンチに放る
クリンチ これはありがたい。
ロイデマン 副長、独り占めはなしですぜ
クリンチ あぁ
クリンチ ロイデマンに放る
パーミェン ロイデマン、貴官こそ独り占めは無しだぜ
ロイデマン おうよ
ロイデマン スキットルをパーミェンに放る
ルックナー 伝声管にとりつく
ルックナー 厨房、聞こえるか?艦内の総員にラムを配給しろ!全員凍り付いているだろうから、溶かして置け
ナレーション そして、未明に風向きは変わる
パーミェン 風向きが変わった。弱いが北北東の風だ
クリンチ 艦長!
ルックナー 取り舵一杯、進路を南南東に向けろ!
ロイデマン 取り舵一杯了解!
ルックナー 伝声管に取り付く
ルックナー 進路、南南東!機関始動!全力で北極から遠ざかるぞ!
クラウス 機関始動了解!
クリンチ これで、まっとうに操艦できる。
クラウス 副長、機関はちょいとぐずり気味だ。それだけは頭に置いておいてくれ
クリンチ 貴重な燃料を帆船ごときにやれるか、という声があったからな
ルックナー 硫黄分の多い粗悪な油を回されたか。それでもいい。クラウス、お前が頼りだ。よく面倒を見てやってくれ
クラウス 了解、ちょくちょくバラして整備するよう心掛けます
ルックナー 頼む。ただ、しばらくはシュミットの手を油で汚さないでくれ。多分長い事じゃないが。
クラウス 難しい命令ですな。あいつは機関助手なんですぜ
ルックナー わかっている。二,三日中には、解除できると思うから頼む。あいつが切り札なんだ。油で爪が汚れていたらおかしいからな。
エルトマン 艦長!進行方向に煙が見えます。船が航行しています
ルックナー 即座に解除できるかもしれんな。クラウス、シュミットをこちらに寄こせ。プライス、艦内からの甲板への通路は確保できたか?
プライス 今、甲板への最後のドアを体当たりで破らせてます。
ルックナー 手荒な手段を使って構わん。むしろ奨励する。ドアでも壁でもブチ壊せ。
プライス 了解。
クリンチ 例の台本を使う時がきましたか。
ルックナー あぁ、こんな所をうろついてる船なんて、通商破壊戦に従事する仮装巡洋艦でなければ、哨戒している仮想巡洋艦に決まっているんだ。
プライス ドアを破壊しました。シュミットを向かわせます。
ルックナー よくやってくれた。後は台本に従って待機してくれ。
プライス 正体がバレた時の自沈処置ですな。了解しました。
ルックナー エルトマン、艦長室の物陰に隠れろ。もしバレたら「万事終わった」と言って艦内に合図しろ
エルトマン 了解!
ルックナー パーミェン!ノルウェー国旗を掲げろ!今からこの船は「イルマ」だ!
パーミェン 了解、艦長殿の愛しき人の名を冠した船になるのですな。
ルックナー そうだ!
ルックナーはブリッジを出る
暗転 船のセットは上手に仕舞われる。
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