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29.なんであんなに
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それから、領主様は護衛たちを連れて、オフィガタス様と一緒に魔物退治に出かけて行った。
今はそんなに魔物は増えていない。すぐに退治しなきゃならない状態じゃないし、数日後に、森を見回る予定もある。それなのに二人で出かけて行ったってことは、多分、森の中で各々話があるんだろう。
領主様…………大丈夫かな……
護衛の魔法使いはいるけど、オフィガタス様の方も、部隊の魔法使いたちを連れている。不意をつかれたら危ないんじゃ……
やっぱり、行かせるべきじゃなかったような気がするっ……!
護衛の魔法使いたちには、気をつけてくださいって念を押しておいた。領主様にも、絶対に一人にならないでくださいって言っておいたけど……
それでも不安だ。
無理にでも一緒に行けばよかったかな……
だけど、ろくに戦えない僕がいたところで、足手纏いだ。
庭で会った時のオフィガタス様は、確実に手加減していた。だけど、これからもそうするとは限らない。もしかしたら、今度は本気で領主様を狙うかもしれない。あの時のオフィガタス様は、領主様への敵意を露わにしていたし、なぜか、ひどく領主様の事が気に入らないようだった。
領主様も、見ていて怖くなるくらい腹を立ててたし…………
なんでオフィガタス様はあんなに領主様を嫌うんだろう……
オフィガタス様と領主様が以前から仲が悪かったなんて、知らなかった。
何かあったのかな……
ゲームの中では、そんなこと語られていなかった。僕が忘れているだけなのか? まだ色々思い出したばかりだし、本当は知っていたのかな? なんだか、自分の記憶にも自信がなくなってきた……!!
だけど領主様と領地は僕が守らなきゃ……! バッドエンドも、みんなが断罪されるのも嫌だ!!
そのためには、できるだけ領主様のそばにいたいけど…………
もともと、僕が色々思い出すまでは、ほとんど顔を合わせる機会すらなかった僕らだ。
僕が反逆を疑われて、ベリレフェク様の正体が明らかになったあの日から、領主様はよく僕に魔法の道具のことを教えてくれる。
一緒にベリレフェク様がいるから、心配しているのかな……
ベリレフェク様は、領主様のことは諦めてはいないみたいだけど、使者でなくなった今は、魔法の道具や武器の調整を手伝ってくれたり、城を守るための結界を点検したりしてくれている。僕にも色々教えてくれて、今では頼りにしていることの方が多い。
最近は、倉庫で僕と領主様とベリレフェク様で雑談しながら、魔法の道具の整理をすることも増えたし、もう領主様を狙ってたりなんて、しないよね…………
領主様には、ずっと領主様でいて欲しい。
さっき、オフィガタス様に会った時の領主様……やけに僕を引き寄せたりするから、びっくりした……
驚きすぎたのか、何度もそれを思い出してしまう。
領主様の従者なのにオフィガタス様を守るようなことをして、不快な思いをさせて怒らせたくせに、何で何度も思い出しては、こんな風に落ち着かなくなるんだ……
考え事をしながら倉庫を整理していたら、一人の魔法使いが入ってきた。領主様と一緒に魔物退治に行ったはずの魔法使いじゃないか!
「あっ……あのっ…………! お帰りなさいませ!! 魔物退治はもう終わったんですか?」
飛びつくような勢いで聞いた僕に、魔法使いは少しびっくりしたみたいだ。
「……あ、ああ……今終わったところだ…………使い終わった武器を整備しておけ」
「領主様はっ!!??」
「は?!!」
「領主様は今どちらにいらっしゃるのですか!? ご、ご無事なんですよね!?」
「も、もちろんだ…………今、会議室で魔物の状況をまとめる会議の途中だ」
「…………そうですか……」
よかった……無事なんだ……武器の整理が終わったら、会いに行こう!!
僕は、魔法使いに「ありがとうございます! すぐやります!」と言って、倉庫を出た。
よかった……領主様、無事なんだ!!
けれども、喜んだのも束の間、僕の方に、廊下の反対側からオフィガタス様が歩いてくる。
彼も、すぐに僕に気づいて、歩く速度を早めて近づいてきた。
「……お前は……領主の横にくっついていたチビだな?」
「キャトラズイルです…………お帰りなさいませ……」
「そう睨むな。領主を狙ったことを怒っているのか?」
「…………はい」
誤魔化そうかと思ったけど、つい正直に答えていた。怒るだろ、普通。
今はそんなに魔物は増えていない。すぐに退治しなきゃならない状態じゃないし、数日後に、森を見回る予定もある。それなのに二人で出かけて行ったってことは、多分、森の中で各々話があるんだろう。
領主様…………大丈夫かな……
護衛の魔法使いはいるけど、オフィガタス様の方も、部隊の魔法使いたちを連れている。不意をつかれたら危ないんじゃ……
やっぱり、行かせるべきじゃなかったような気がするっ……!
護衛の魔法使いたちには、気をつけてくださいって念を押しておいた。領主様にも、絶対に一人にならないでくださいって言っておいたけど……
それでも不安だ。
無理にでも一緒に行けばよかったかな……
だけど、ろくに戦えない僕がいたところで、足手纏いだ。
庭で会った時のオフィガタス様は、確実に手加減していた。だけど、これからもそうするとは限らない。もしかしたら、今度は本気で領主様を狙うかもしれない。あの時のオフィガタス様は、領主様への敵意を露わにしていたし、なぜか、ひどく領主様の事が気に入らないようだった。
領主様も、見ていて怖くなるくらい腹を立ててたし…………
なんでオフィガタス様はあんなに領主様を嫌うんだろう……
オフィガタス様と領主様が以前から仲が悪かったなんて、知らなかった。
何かあったのかな……
ゲームの中では、そんなこと語られていなかった。僕が忘れているだけなのか? まだ色々思い出したばかりだし、本当は知っていたのかな? なんだか、自分の記憶にも自信がなくなってきた……!!
だけど領主様と領地は僕が守らなきゃ……! バッドエンドも、みんなが断罪されるのも嫌だ!!
そのためには、できるだけ領主様のそばにいたいけど…………
もともと、僕が色々思い出すまでは、ほとんど顔を合わせる機会すらなかった僕らだ。
僕が反逆を疑われて、ベリレフェク様の正体が明らかになったあの日から、領主様はよく僕に魔法の道具のことを教えてくれる。
一緒にベリレフェク様がいるから、心配しているのかな……
ベリレフェク様は、領主様のことは諦めてはいないみたいだけど、使者でなくなった今は、魔法の道具や武器の調整を手伝ってくれたり、城を守るための結界を点検したりしてくれている。僕にも色々教えてくれて、今では頼りにしていることの方が多い。
最近は、倉庫で僕と領主様とベリレフェク様で雑談しながら、魔法の道具の整理をすることも増えたし、もう領主様を狙ってたりなんて、しないよね…………
領主様には、ずっと領主様でいて欲しい。
さっき、オフィガタス様に会った時の領主様……やけに僕を引き寄せたりするから、びっくりした……
驚きすぎたのか、何度もそれを思い出してしまう。
領主様の従者なのにオフィガタス様を守るようなことをして、不快な思いをさせて怒らせたくせに、何で何度も思い出しては、こんな風に落ち着かなくなるんだ……
考え事をしながら倉庫を整理していたら、一人の魔法使いが入ってきた。領主様と一緒に魔物退治に行ったはずの魔法使いじゃないか!
「あっ……あのっ…………! お帰りなさいませ!! 魔物退治はもう終わったんですか?」
飛びつくような勢いで聞いた僕に、魔法使いは少しびっくりしたみたいだ。
「……あ、ああ……今終わったところだ…………使い終わった武器を整備しておけ」
「領主様はっ!!??」
「は?!!」
「領主様は今どちらにいらっしゃるのですか!? ご、ご無事なんですよね!?」
「も、もちろんだ…………今、会議室で魔物の状況をまとめる会議の途中だ」
「…………そうですか……」
よかった……無事なんだ……武器の整理が終わったら、会いに行こう!!
僕は、魔法使いに「ありがとうございます! すぐやります!」と言って、倉庫を出た。
よかった……領主様、無事なんだ!!
けれども、喜んだのも束の間、僕の方に、廊下の反対側からオフィガタス様が歩いてくる。
彼も、すぐに僕に気づいて、歩く速度を早めて近づいてきた。
「……お前は……領主の横にくっついていたチビだな?」
「キャトラズイルです…………お帰りなさいませ……」
「そう睨むな。領主を狙ったことを怒っているのか?」
「…………はい」
誤魔化そうかと思ったけど、つい正直に答えていた。怒るだろ、普通。
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