ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

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34.そうだといいな

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 売り言葉に買い言葉で、ベリレフェク様まで巻き込んでしまった……自分でも、反省している。

 それでも、このままにしておきたくない。

 オフィガタス様は、領主様がベリレフェク様に酷いことをしていると思っている。領主様は、散々ドジを踏んで迷惑をかけた僕をここに迎えてくれたし、ベリレフェク様のことだって、悪いようにはしていないのに。むしろ最近、ベリレフェク様は伸び伸びしているように見える。

 それなのに、あの言い方はひどい!! あれじゃ、領主様が一方的に悪いみたいじゃないか!

 領主様はそんなことしないって、証明するんだ!!

 だけど……なんて言って確かめればいいんだ?

 そんな僕の動揺が伝わるのか、オフィガタス様が僕の後ろを歩きながら、腕を組んで言う。

「どこへ行くつもりだ? あてはあるのか?」

 なんだか、勝ち誇った顔をされている気がするっ……!!

「あ、当てなんかありません!!」
「なんだ。ないのか。だろうな。あるはずがない」
「あ、あてなんかないですけどっ……でも、領主様はそんなことをしたりしません!! み、見ていてください! 僕が、領主様がひどくないことを証明します!」

 言って、顔を上げた。

 もう、悩んだって仕方ない!! 要はオフィガタス様が、ベリレフェク様がひどいことをされてないって、信じてくれればいいんだ!!

 ここに来るまでにすれ違った魔法使いによれば、ベリレフェク様は医務室の方にいるらしい。回復の魔法の薬の残量を確認してくれているみたい。

 ベリレフェク様に、領主様には酷いことをされていないって言ってもらえば、オフィガタス様だって、納得してくれるはず!! もしかしたら、言わされているだけだと言われて、ますます疑われてしまうかも知れないけど、まずはベリレフェク様に否定してもらうのが一番だ!!

 決意しながら歩いていると、オフィガタス様が不思議そうに言う。

「それにしても……なぜそんなにあの領主を庇うんだ? 俺には、なんのメリットもないように思えるが……」
「僕は領主様にお世話になりました!! 領主様が疑われるなんて、嫌なんです!! 領主様の冤罪は、僕が晴らします!!」
「……無駄だと思うが……お前のように熱心にあれを守る奴は、初めてだ」
「そっちこそっ……!! たとえベリレフェク様がなんて言っても、これが原因で領主様を逆恨みなんて、やめてくださいね!! 領主様は、あなたが思うような、暴虐な方ではありません!!」

 断言するけど、オフィガタス様は不思議そうに言う。

「……よくお前がそんなことを言えるな……」
「僕が? どう言うことですか?」
「……庭では、あの男にずいぶん強引に迫られていたではないか」
「へっ……!?」

 あ……俺の従者なら、俺だけを守っていればいい……って言われて、引き寄せられた時のことか……

 ……あの時の領主様、怒ってるみたいだったし、もしかして、今でも怒っていたりするのかな……

 やっぱり僕は悪役になるのか? そんなの、嫌だっ…………! 今からだって、遅くないはずだっ……!! なんとか悪役を回避するんだ!!

「せ、迫られていたわけではありません! あ、あの時は…………えっと……領主様は、少し……機嫌が悪かっただけです!」
「……どうだろうなぁ……何か、酷いことをされているんじゃないか?」
「しつこいですよ…………」
「それに、お前……毒の魔法の威力を試すために連れてこられたそうじゃないか」
「なんですかそれ……誰に聞いたんですか?」
「城内で、そう言う噂があると聞いた。そうなんだろう?」
「ただの噂です。領主様はそんなことをしません。現に、今ここに僕はこうしているじゃないですか」
「それは……そうだが……」
「そ、そちらこそ、ベリレフェク様に相手にされないのを、領主様のせいにしないでください!」
「あ、相手にされないだとっっ!!!? な、何を言っているんだ! 相手にされていないなど……そ、そんなことは、絶対にない!!」
「…………」

 あるんだな……ひどく焦り始めた……

 そうでなかったら、こんなところで僕に絡んだりしてない。すぐにベリレフェク様のところに行くはずだ。

 ベリレフェク様に相手にされないからって、領主様のせいにされたら困る!! 誤解を解いて、対立させないようにしないと。

 ……領主様がベリレフェク様に気があるって言うのも、オフィガタス様の気のせい……だといいな……
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