ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
43 / 45

43.また俺の前で

しおりを挟む
 僕が少し強く言うと、領主様の目がまた少し、凶悪なものを含む。

「……オフィガタスめ……あの男が何か…………妙なことを吹き込んだだろう?」

 そう言った領主様の手が、僕の両足の間に入ってくる。

「あっ……!!」

 微かに触れられただけなのに、怖いくらいの快感だった。領主様にそんなことをされて、争う術なんて当然持たない僕は、無意識にその手を求め、追うように腰を振っていた。

 気持ちいい……もっとされたい……

 それなのに、浸っていた快楽は唐突にお預けされてしまう。領主様が、手を止めてしまったんだ。

「あっ……やだっ…………な、なんでっ…………っ!!」
「…………そう言えば……妙な話をしていたな? 俺とベリレフェクがどうとか……」
「そ、それは………………」

 だって、絶対にそうだと思った。最後までグズの僕が、愛される訳ない。
 それなのに……吊るされてこんなことされるなんて、聞いてないぞ!!

 焦るばかりの僕に、領主様は今にも噛み付いてきそうな顔を近づけてくる。

 顎に触れられて、顔を無理やり上げられて、首筋を差し出すように領主様の前に晒されて、怖くなりそうだった。だってこのまま首を食いちぎられてしまいそう。

「……ぁ…………」

 唇が、微かに震えている。そんな僕に、領主様はニヤリと笑って言った。

「聞き出しておくか……」

 本物の領主様は……妄想の領主様より……ずっと迫力がある。

「あっ…………や、やだっ……領主様っ…………!!」

 喘いでも、領主様はもう、僕にさっきの快楽をくれなかった。お預けするみたいに手を離されて、中途半端に放置されたら、もどかしくてたまらない。せめて自分で触りたいのに、僕の両手を鎖が止めてしまう。

「領主様っ……!! あ、あのっ…………」

 また、ほんの少しだけ僕に触れて逃げていく手に向かって、腰を振る。だけど、領主様はその手を僕の届かないところに上げて、もがく僕を、ニヤニヤ笑って見下ろしていた。

「領主様っ…………あ……く、鎖を外してください!!」
「鎖を? そんなことをされたいのか?」
「…………」

 もちろん、一番されたいのはそれじゃない。もっと触れてほしい。そうしてもらえるなら、鎖なんてこのままでいい。

 だけど、そんなこと言えるかっっ…………!!

 恥ずかしすぎる!! もうすっかり触れられることに夢中になってるみたいじゃないかっ……!!

 そんなんじゃないのに……

 こんな風にお預けされているのに気持ちよくて、嬉しくて堪らない。だって、領主様が僕に触れてくれてるんだ。だけど、初めての快楽を感じることを、僕はもう覚えてしまっている。それが欲しくて我慢できない。このままじゃ、放り出された僕自身が、ずっと満たされない。

「領主っ……さまっ…………あ、あのっ……」
「……何を吹き込まれた?」
「へっ……!? ひゃぁっ…………!!」

 待ち望んだ感触を、一瞬だけ与えてもらえて、腰が激しく揺れた。ほんの少しなのに、怖いくらい気持ちいい。それなのに、すぐにまたお預け。あんまりだ。

「…………ぁっ……! あっ……領主様っ……あのっ……や、やめたら嫌です!」
「……オフィガタスに、何を吹き込まれた?」
「…………」

 それは言いたくない…………というか、絶対に言えない!! こんなこと知られたら、僕、死にたくなる!!

 僕は、こっそり顔を背けた。

「…………な、なにもぉ? な、なんでもないですよ…………」
「……おい、まさか、それは誤魔化しているつもりなのか?」
「…………」

 や、やっぱり無理があったかな…………だけど言えないものは言えないのに!!

 それなのに、領主様は怖い目をして、僕を睨みつけた。

「…………いい度胸だ……」
「え…………あぁぁっっっ!!」

 さっきまでずっとお預けされていたところを、強く握られた。

 ひどい……もうすっかり敏感になっているところなのに!!

 それどころか、領主様は僕のそろそろ限界を迎えそうなそれを、強く揉んでくる。なのにイこうとするとお預けなんて、あんまりだ。

「やっ……やだっ…………!! 領主様っ……お預け、嫌ですっ……!」
「だったらさっさと吐け」
「…………んあぁ…………ち、ちょっと、か、勘違いしただけですっっ!! 領主様がっ……ベリレフェク様に気があるんじゃないかって………………」
「ふん。そんなことだろうと思った。オフィガタスめ…………ベリレフェクが殺し損ねたら、俺が殺してやる」
「ダメですっっ……!! そんなことしたら、絶対に後で後悔しますっっ!!」
「……また俺の前で、別の男を庇ったな?」
「あ…………」

 庇ったって…………そんなつもりないのにっ!!
 だって、そうしなかったら領地が盗られてしまうかもしれないんだ。そんなことになったら大変だろ!! だからこう言ってるだけなのにっ……!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

推し変したら婚約者の様子がおかしくなりました。ついでに周りの様子もおかしくなりました。

オルロ
BL
ゲームの世界に転生したコルシャ。 ある日、推しを見て前世の記憶を取り戻したコルシャは、すっかり推しを追うのに夢中になってしまう。すると、ずっと冷たかった婚約者の様子が可笑しくなってきて、そして何故か周りの様子も?! 主人公総愛されで進んでいきます。それでも大丈夫という方はお読みください。

聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!

竜鳴躍
BL
密かに匿われていた王子×偽物として迫害され『聖女』の力を搾取されてきた侯爵令息。 侯爵令息リリー=ホワイトは、真っ白な髪と白い肌、赤い目の美しい天使のような少年で、類まれなる癒しの力を持っている。温和な父と厳しくも優しい女侯爵の母、そして母が養子にと引き取ってきた凛々しい少年、チャーリーと4人で幸せに暮らしていた。 母が亡くなるまでは。 母が亡くなると、父は二人を血の繋がらない子として閉じ込め、使用人のように扱い始めた。 すぐに父の愛人が後妻となり娘を連れて現れ、我が物顔に侯爵家で暮らし始め、リリーの力を娘の力と偽って娘は王子の婚約者に登り詰める。 実は隣国の王子だったチャーリーを助けるために侯爵家に忍び込んでいた騎士に助けられ、二人は家から逃げて隣国へ…。 2人の幸せの始まりであり、侯爵家にいた者たちの破滅の始まりだった。

姫の護衛が閨での男の武器の調査をした件

久乃り
BL
BLは耽美 たとえ内容が頓知気であっても耽美なのです。 この話は、姫の護衛として輿入れについてきた騎士が、姫のために皇帝陛下の男の武器を身体をはって調査するというお話です。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

耳が聞こえない公爵令息と子爵令息の幸せな結婚

竜鳴躍
BL
マナ=クレイソンは公爵家の末っ子だが、耳が聞こえない。幼い頃、自分に文字を教え、絵の道を開いてくれた、母の友達の子爵令息のことを、ずっと大好きだ。 だが、自分は母親が乱暴されたときに出来た子どもで……。 耳が聞こえない、体も弱い。 そんな僕。 爵位が低いから、結婚を断れないだけなの? 結婚式を前に、マナは疑心暗鬼になっていた。

【完結】愛され少年と嫌われ少年

BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。 顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。 元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。 【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】 ※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。

冷徹茨の騎士団長は心に乙女を飼っているが僕たちだけの秘密である

竜鳴躍
BL
第二王子のジニアル=カイン=グレイシャスと騎士団長のフォート=ソルジャーは同級生の23歳だ。 みんなが狙ってる金髪碧眼で笑顔がさわやかなスラリとした好青年の第二王子は、幼い頃から女の子に狙われすぎて辟易している。のらりくらりと縁談を躱し、同い年ながら類まれなる剣才で父を継いで騎士団長を拝命した公爵家で幼馴染のフォート=ソルジャーには、劣等感を感じていた。完ぺき超人。僕はあんな風にはなれない…。 しかし、クールで茨と歌われる銀髪にアイスブルーの瞳の麗人の素顔を、ある日知ってしまうことになるのだった。 「私が……可愛いものを好きなのは…おかしいですか…?」 かわいい!かわいい!かわいい!!!

処理中です...