32 / 105
32.目立つ!
しおりを挟む鎖を解いてもらった警備隊の人は、むすっとして床に座っている。
「ちっ……やっぱり乱暴じゃないか……」
「お前は警備隊らしいが……俺をつけて来たのか?」
「つけてなんかない。たまたまここに入ったら、お前たちを見つけただけだ。城のことも、真偽がわからなかったし、その……街中で魔法使われる前に仲間を呼ぼうかと思ってただけだ。これっ……見てみろ!! こんなもん読んだら不安になるだろ!」
警備隊の人がレヴェリルインに渡したのは、だいぶボロボロの新聞。
レヴェリルインはそれを広げた。後ろにいたら、僕にも見えた。
一面を飾っているのは、悪逆非道を尽くした伯爵を王子が糾弾したら、伯爵の弟が錯乱して、集めた貴族ごと城を爆破したという酷い記事。こんなの読んで、それを全部信じちゃったら、レヴェリルインはまるで異常な殺人鬼じゃないか……あんまりだ。
レヴェリルインも、さすがに顔を顰めていた。
「なんだこの新聞は……」
「レヴェリルイン様もそう思いますか!!」
声を上げたのは、狸耳の人。
「そんなの、インチキ新聞です!! 王子の息がかかった新聞なんですよ!! そんなの、眉唾物です!! そんなのより、僕らが出してるタブロイドの方がよっぽど信用できます!」
「タブロイド……? お前が書いているのか?」
「はい! あ、僕、ラックトラートって言います! 僕らのたぬきさん新聞がリュックに入っているので、どうぞ!!」
「……たぬきさん??」
レヴェリルインが、怪しいものを見るような目をしながら、ラックトラートさんのリュックを開くと、確かにくしゃくしゃに丸められた新聞が出てくる。
「なんでこんなにぐちゃぐちゃなんだ?」
「丸めて捨てられてたのを見つけて持って来たんです! 酷いですよね!! 絶対、魔法使いギルドの子ウサギの仕業ですよ!!」
「子ウサギ?」
「王族の息がかかった新聞屋です!! 僕らのこと、目の敵にしてるんです!! わざわざ僕らの新聞買って、丸めて捨てちゃうんです! 酷いですよね!!」
「知らん。お前、そいつがそうしてるのを見たわけじゃないだろう?」
「でもそうなんです!! 王族から色々もらってるから、いい気になってるんです!! 情報操作ですよ! こんなの!!」
喚くラックトラートさんのリュックから取り出した新聞を、レヴェリルインが広げる。可愛らしい狸の印が描かれた新聞だ。だけど記事には、レヴェリルインが城を爆破するのが大好きみたいに書いてあって、正しいとは思えない……
じっとそれを読んでいたら、いつのまにか、すぐそばにラックトラートさんがいた。彼は、わざわざしゃがんで新聞の影から僕のことを見上げていて、びっくりした僕は飛び退いてしまう。
「っ……!!」
な、なにっ!? なんでこんなに近づいてくるの!?
後ろに下がる僕に、なぜかラックトラートさんはずっと近づいてくる。
「僕、ラックトラートって言います! あなたは?」
「え!? ぼ、僕っ……!??」
な、なんで僕なんかに声をかけるんだ!?
震える僕に、ラックトラートさんはどんどん近づいてくる。
「はい! あなたです!! さっきから、ずーーーーっと、レヴェリルイン様のそばにいますよね!? 誰なんですか!? なんでボロボロの格好してるんですか!? さっき僕らに話しかけてくれましたよね!? 何か言いたいことがあったんですか!?」
「え、え、えっと……」
だ、誰って聞かれても……あと、そんなにたくさん一気に聞かれてもっ……! 答える能力が僕にはない!!
慌てる僕を、レヴェリルインが抱き寄せてくれる。
「こいつの服を買いに来たんだ。あまり近づくな」
「えー、本気ですかー? 僕の情報網によると、レヴェリルイン様って、めちゃくちゃ趣味悪いって聞きましたよ? 服なら、伯爵様に選んでもらった方がいいんじゃないんですか?」
「あいつに聞くことなどない。だったら、お前たちもここに残れ。俺が選ぶものを見ていればいい」
「本当ですか!? 今日はラッキーな日だ……ついでに取材させてください!!」
嬉しそうなラックトラートさんを置いて、レヴェリルインは僕に振り向く。
「いいものを選んでやる」
「……はい……」
レヴェリルインが、僕に?? 服を……?
だけど僕、いいものより、できるだけ目立たないものがいい。
そんなことを話していたら、ラウティさんが、たくさん服を持って入ってくる。
「ごめんなさい……在庫探すのに手間取っちゃって……いつものところになくて、探し回ってました。あれ……?」
彼はラックトラートさんに気づいて、首を傾げた。
「あれ……? ラックト? 来てたの?」
「うん!! それ……」
「その方の新しい服。持ってきてって言われたので……」
そう言ったラウティさんはいくつかの服を重ねて持っている。一番上の服が、めちゃくちゃいろんな色を使った不思議な柄で、狼の柄が混じった服なんだけど……それ、僕が着るの!?? 趣味がどうこういう前に、めちゃくちゃ目立つ!!
「どうですか? これ」
ラウティさんが、にっこり笑って言う。どうって……それを着て目立つのは嫌……
固まる僕に、彼は慌てて言った。
「あ! こ、この派手なのは……レヴェリルイン様がどうしてもって言うから持ってきただけです!! あなたは、目立つようなものは嫌かなーと思ったんですが……」
「……」
そうなんだ……どうしてもって……それを着るのは嫌だな……
131
あなたにおすすめの小説
前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
◆お友達の花々緒さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。
◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。
家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる