僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

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11.ご飯に夢中です。何か問題ありますか?

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 ど、どうしよう……や、焼きたてお肉の虜になっていて、宰相様の話、全く聞いてなかった!

「…………も……申し訳ございません…………」
「いや……構わないよ。それより食事の……いや、物資のことと枷のことは、王城に戻ったらすぐに確認して、改善できるようにする」
「あ、はい……ありがとうございます…………」

 話している間、肉を口元から離していたら、肉のことばかり気になる。

 これ、本当に美味しい。このスパイスで、僕のきのこも焼いてほしいなぁ……スパイス、分けてもらえないかな??

 思い切って言ってみるか? もしかしたら、いいよって言ってくれるかもしれない。大事に使うから、ほんの少しでいいんだ。

 だけど……幽閉されている僕のわがままなんて聞いていられないかな……
 ロステウィス様は、これから王都に戻って、今回の暴走についての調査や部隊の再編成、必要があればこの周辺の調査をしなくてはならないんだ。スパイス一つでも手続きはいるだろうし、宰相様の迷惑になるかもしれない。幽閉が終わった後の楽しみにするか……

 そんなことばかり考えて、串焼きの肉を見下ろす。

 すると見かねたのか、ロステウィス様は僕に、食べながらでいいよと言ってくれた。

 そして、どこか難しい顔をして言う。

「その前に……」
「え? あっ……!」

 彼は、僕の手首を握り、魔法をかけた。すると手枷はひどく軽くなって、鎖はそのままあるのに自由に手を動かせるようになった。まるで、両手を繋ぐ鎖がなくなってしまったかのようだ。壊れた足枷も、もうそこにはないように感じる。

「え…………あ、あの……宰相様? い、いいんですか?」
「……もともと、砦についたら外すはずだった。デペンフィトたちにはそう言いつけたんだけど、聞いていなかったようだ……恐らく、手枷を外すための手続きもされていないだろう」
「…………」

 多分、されていないんじゃなくて、誰も外す気がないんじゃないかな? 外す気だったのは宰相様だけで、誰も最初から、僕を解放する気なんてまるでなくて、僕の言葉を信じる気もなかったんだろう。

「あ、ありがとうございます……あの…………」
「なに?」
「そんなに追い詰められたような顔をなさらないでください……公爵家として、動きたくても動けないこともあるでしょうから」
「フィルロファル……」

 彼はそう僕の名前を呟いて、どこか苦しいように笑う。

「……君はいつもそうやって、俺や公爵家のことを考えてくれていたな……」
「え……? そうでしたか?」
「うん……思い出した」
「…………」

 そうだったかな……あんまり覚えてない。
 公爵家のために、公爵家に気に入られてこい、僕は自分の一族からそう言いつけられながら生きてきたんだ。そうでなければ、価値のなくなった僕は、恐らく用なしと見限られて捨てられていたし、普段からそう怒鳴られ続けていた。

 もう僕には利用価値がないどころか一族の面汚しになってしまったし、一族のところには帰れないなーー。

 帰りたくないからいいけど!!

 幽閉が終わったら、僕は好きに生きるんだから!!

 もうそろそろ砦に帰って、今日夜食べるご飯のことを考えないと……明日もこなさなきゃならない任務があるし……

「……さ、宰相様……僕、そろそろ失礼してもよろしいですか?」
「あの砦に帰らなくても、もう少しここにいればいい。部隊のことだって、助けてくれたんだから」
「ほ、本当に、いいんです! 王国のために集められた部隊がいて、彼らが危機に陥っていれば、貴族として、手を貸すのは当然のことです! 宰相様だって、それはご存じですよね?」
「それは……」
「あ……えっと、か、帰ったら、あの暴走に関する報告書を作って送ります!」
「ありがとう…………助かるよ」
「いえ…………そんな……僕だって、お肉をもらいましたし……」
「……食事や待遇のことは、手枷の件も含めて、俺の方から手続きをしておく。ごめん……しばらく不自由を強いることになるけど、その間、考えられる限りのフォローはする」
「あ、ありがとうございます……」
「……君には、本当に悪いことをしてしまった。今度は俺が確認に来るよ」
「……え…………?」

 ここに?

 砦にってことか?

 宰相様が来るなんて、緊張する……だけど、宰相様がすることに、僕が口を出すこともできないし……

 それに、砦の状態を確認することは、この地域の安全を確保するために必要なことだ。それなのに、僕の感情で返事はできない。

 戸惑っていると、宰相様は微笑んだ。

「……そうだ。お弁当も持ってくるよ。たくさん肉を詰めて」
「お、お弁当っ……!?? い、いいんですか!?」
「もちろん……今回のことは、俺のミスだ。こんなことになるはずじゃ、なかったのに…………」
「……宰相様……?」
「……なんでもない。またね」

 そう言った彼の様子は、いつもと違って、ずっと朗らかで柔らかい。こんな顔をすることもあるんだ……またね、なんて……そんな気軽な挨拶をされたのは初めてだ。

 疑われなくて済んだし、食事もできたし……! ホッとしたし、嬉しかった。
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