僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
15 / 41

15.僕にも夢ができたんです!

しおりを挟む
 あの、部隊での魔法の道具の暴走から、十数日経った。部隊は無事に城に着いたらしく、宰相様も無事だったらしい。

 砦からは、それまでここを管理していた人たちがいなくなり、しばらくはオフィセイール様と彼の部下の方が護衛としていてくれることになり、僕の監視をしながら砦の管理も手伝ってくれることになった。

 それからも、僕は美味しいご飯を食べながら、毎日任務についている。以前の、川辺に現れる光と水が固まって魔獣みたいにも見えるようなものを調べろっていう任務は、川の辺りにもう一度行ってみたら、暴走した魔力で毛が光っている魔獣がいて、魔力を抑える魔法をかけて逃してやった。警備隊のみんなもホッとしていたって、僕のところに報告に来てくれたレオトウェルラレット様が話してくれた。

 ラグトジャスと再会しちゃった時はどうなるかと思ったけど、またのんびりした毎日が帰って来てくれて、僕は嬉しい。

 今日も、朝から砦の外で焚き火をして、最近修復したフライパンで朝食作り。パンがあるから、チーズをたくさん乗せて焼く! それに、僕が大好きなきのこのスープ!! 最近、料理も上手くなってきた気がするんだ。

 えーっと……今日やる任務は…………なんだっけ?

 パンを焼きながら、リストを読み返す。

 今日は……

 大きすぎて旅人を押しつぶしそうな植物を見た気がする、それを山で見て怖かった、最近噂の竜が連れてきた魔物の植物に違いない!! 街が滅ぼされてしまう!! と、街の住人の間で噂になっている、正体を探れ、か……また、わけの分からない任務が来たな……

 巨大な魔物が出た! とか、見たこともない魔獣に襲われた!! って、よく王都でも噂になっていたなー……でも、実際はよくある噂話で、街の周辺は結界が張られていて、そんなものが街に入ることはまずない。森でも、そんな巨大な魔物は見たことがない。

 植物のような姿の魔物なら、たまにいるけど、この森はしょっちゅう僕がうろついて、魔物がいないか確認している。そんなに強力な魔物は現れていないはず。これは、確かだ。

 だとしたら、やっぱり何かを見間違えたのかな?? それとも、もしかしたら、この前の魔法の道具の暴走の影響で、この辺りの植物にそんなことが起こったのかもしれない。あるいは、魔法の暴走による影響が続いているのか……

 どんな理由にしろ、放ってはおけない。

 今日から調査してみるか……

 とにかく、まずは朝ごはんだ!!

 今日は、パンがたくさんあるんだ。

 砦に新しい人が来てから、食事はこっちで用意するって言われたけど、僕はすっかり、食材を調達して食べる生活が気に入ってしまった。

 だってここには美味しいものがたくさんあるし、鉢植えの野菜だって、もうすぐ育つんだ。これを食べるのだって、楽しみにしているし、美味しいものが手に入った時は、最高に気分がいい!

 こんなに楽しく暮らせているんだし、僕には、いずれ幽閉が終わったら、冒険者になって自由気ままに暮らすっていう夢があるんだ!! その時のためにも、任務の途中でも美味しいご飯を作れるようになりたいし、武器や道具の手入れ、破れた服の補修もできるようにならなきゃ!

 焚き火のそばに、ゆったり座れる椅子を置いて、深く腰掛けてコーヒーを一口。コーヒー豆も、僕が頼んで王都から送ってもらったものだ。

 フライパンに乗せたパンを火で炙ってチーズはたくさんのせたし、あつあつでとろとろの朝ごはんだ!

 昨日も、たくさんきのこが取れた。それは全部鍋に入れてスープにしている。

 この鍋は、砦の奥のいろんな壊れたものが山積みになったところで見つけた、唯一あんまり壊れていないもの。

 僕が見つけた時はだいぶ汚れていたけど、時間をかけて磨いたら、なんとか使えそうなものになった。修復の魔法も使って、わざわざ直した鍋だ。ちょっとまだへこんでいたりするけど、僕の愛用の、大切な料理道具のうちの一つ!

 いつもは取れたきのこを串に刺して炙る僕だけど、今日は野菜があるから、それも入れてスープだ! 美味しい野草も取れたから、具もたくさん入ってる。食べられるものを見分けられるようになっておいてよかった。そうでなかったら、食べるものがなくて詰んでいたかもしれない。

 お腹も空いたし、やっと食事ができると思うと、嬉しくてたまらない。

 この前、宰相様がここに来てくれて、美味しい肉の串焼きを食べさせてくれて、僕にはまた一つ目標ができた。

 美味いご飯が食べたい!! そのために、スパイスも欲しいし、他の調味料も欲しい!

 そのためにも、ここで取れる素材や食材と、必要なものの交換がしたい! どんどんやりたいことが増えていくなあ……

 あんまり一気に言うと、絶対にいいって言ってもらえない。交渉って苦手なんだよなー。僕にそんなことができるとも、思えない。

 とりあえず、スパイスからだ!!

 そして、今よりさらに美味しい焼きキノコを作るんだ!!

 そんな風に決意していたら、すぐそばで声がした。

「……何してるんだ? お前……」

 驚いて、顔を上げる。

 すると、すぐそばにレオトウェルラレット様が立っていた。今日は誰もくる予定じゃなかったのに!!

「お、おはようございます!! レオトウェルラレット様っ……!!」

 慌てて立ち上がり、頭を下げて挨拶をする僕。

 レオトウェルラレット様は、今し方ここについたのか、美しい公爵家の紋章のあるマントを身につけていた。今日は報告のある日ではないし、彼も王国の魔法使いの部隊の一員として来たわけではなさそう。いつもなら、物資を置いて内容を確認してすぐに帰っていくのに、今日は小さな袋を持って、随分とのんびりした様子だ。

「お前……いつもこんなところで食事しているのか?」
「は、はい……僕のお気に入りの場所なんです! で、でも……な、なんで、ここに……」
「なんでって……頼まれていたもの、持ってきたんだよ」
「え!? も、もうですか!?」
「ああ。お前は幽閉されているが、王国の一部であるここを守る任務にもついてるんだ。必要なものは支給されて当然だろう。それにこれからは、ここの管理もお前に頼むことになるからな……だが、いいのか? 王都の方から、砦の管理と護衛を担う魔法使いを送るって、宰相様が話していたのに……」
「今だって、護衛の方ならいます。それなのに、これ以上なんて、申し訳ないです。王都の方も、あの日の部隊の件もあって、大変でしょうし……僕の方は、ただのんびりやっているだけなので、本当に、気にしないでください」
「……あ、ああ……」

 レオトウェルラレット様が頷いてくれて、僕はほっとした。

 この砦を支配していた奴らがいなくなって、確かに掃除をする部屋は増えたけど、ここがますます静かになって、僕は嬉しいんだ。あんまり人数が増えたら、僕だって緊張しちゃうし……
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。 しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。 全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。 クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

お前が結婚した日、俺も結婚した。

jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。 新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。 年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。 *現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。 *初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。

侯爵令息は婚約者の王太子を弟に奪われました。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...