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14*ロステウィス視点*必ず
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あの、フィルロファルと出会った日から数日が経った。
「デペンフィト! いるのか!?」
怒鳴りつけて俺は、王城の中の一室、魔法の研究が行われている部屋のドアを乱暴に開いた。
そこにいた連中が、俺に振り向く。
突然俺が怒鳴り込んで来たんだ。誰もが驚いて目を丸くしている。
だが、構わない。
そんなことより、今はフィルロファルに何があったのか、問いただしたい。
俺は、そこにいたデペンフィトに詰め寄った。
「貴様……どういうつもりだ?」
「なんのことです? 公爵家といえども、このような真似は……!!」
俺に胸ぐらを掴まれ、その男の表情に怯えが混じった。
だが、俺は余計に苛立った。
「よくそんなことが言えたな……貴様の部下どもから聞いたぞ。フィルロファルの処遇に関する指示は無視しろと……俺が送ったものも、そんなものは彼に与えるな、手続きが行われたことはもみ消せと言われたと、すでにいくつも証言が取れている……」
「はっ……!?」
あからさまに、顔色が変わった。単純な奴だ。
しかし、そんな仕草ですら、俺の怒りを駆り立てる。それだけ驚くということは、まさか俺が気づくとは思っていなかったのだろう。
馬鹿にするにも程がある……俺のことを舐めているのか。
いや、むしろ公爵家が馬鹿にされているのかも知れない。どちらでもいい。許しておけない。
「貴様に従うことで、それ相応の報酬を受け取れたと、貴様の取り巻きどもから証言が取れている。砦に送るはずのものの横領を許可したのは、貴様だな?」
「ま、待ってください!! 一体なんのことだか……お、俺は本当に、何もっ……何も知りませんっっ!!」
「今更とぼけても、俺が納得すると思うのか?」
この男の周りにいた取り巻きたちは、すでに捕らえてある。そして、そいつらに何をしたのか尋ねたら、簡単に吐いた。脆いものだ。
「得られた証言をもとに、指示の内容も、奪われたものがどこへ行ったのかも調査した。俺を舐めるなよ……貴様が指示を出すところも魔法で記録してある。今すぐにでも、俺はその映像を披露できるぞ」
「ひっ……!!」
敵わないと悟ったのか、その男の顔が青くなる。その上、ずいぶん震えていた。
どうせ、この男だけじゃない。こんな小物程度に、これほど大それたことができるはずがない。ふざけやがって……俺が必ず拘束してやる。
「貴様ら……公爵家を敵に回して、ただで済むと思うなよ……」
「ま、待ってくださいっっ!! 公爵家を敵に回すなどっ……俺たちは、ただっ……公爵家のことを思って……あの男の本性を暴きたかっただけです! あの男は、公爵家には相応しくないと思って…………」
「なに……?」
「だ、だって、考えてもみてください! そもそもあの男は、ルイルット子爵家が公爵家に無理矢理押し付けたような婚約者候補ではありませんか!! 子爵の屋敷でも、役に立たないどころかその悪辣な振る舞いを咎められ、ひどく虐げられていたと聞きました!! そんなものが、あなた様の一族にふさわしいはずがありません!! 誰もがそう噂していたではありませんか! 知っていたはずです! あなた様だって、そんなものとの婚姻を、なんとも思わないのですか!? ルイルット子爵家でなくとも、公爵家との婚姻を望む一族はいくつもあるのですよ!? あんな無能っ……!」
「黙れっっ彼を侮辱するなっっ!!」
カッとなった俺の拳が、そいつを殴り飛ばす。
周囲にいた奴らが悲鳴をあげたが、俺の耳には入ってこなかった。
知っていたか、だと? 知っていた……
俺も彼も、貴族だ。婚約は一族が決める。言うなれば、仕事上の契約と何も変わらない。彼もそれは理解していたはずだ。俺はそう思って、それ以上のことを考えようとしなかった。
彼はこんな理不尽な婚約のために、公爵家を立てるため、俺たちの名を汚すことがないように、いつも、そんなふうに振る舞ってくれていたのに。
ずっと、こんな噂を流されながらも、俺を支えようとしてくれていたのか……
俺と彼なら、どちらかと言えば、彼の方が不本意だっただろう。俺といれば、王城の陰謀に巻き込まれて、その身が危険に晒されるかもしれないのだから。一族のために嫁ぐにしても、もっといい相手がいたはずだろう。少なくとも、毎日安心して暮らせるような。
それなのに……俺と共にいてくれたのか……
あの砦で、あんな扱いを受けながら、俺のことを気に掛けてくれていた。それなのに……
俺が甘かった。俺との婚約の話が持ち上がった時点で、俺と公爵家を取り巻く陰謀に巻き込まれると分かっていたはずなのに、幽閉された彼がどうなっているのか、ろくに確認もしなかった。彼を蔑ろにしたのは、俺だ。
俺の甘さがしでかしたことなら、俺が処理するべきだ。
俺は、デペンフィトの襟元を強く掴んだ。
「…………これを企んだ連中は、全員必ず滅ぼす……覚悟しておけ」
「ひっ…………」
そいつは、恐れのあまりなのか、その場で怯えた目をして震えていた。
「デペンフィト! いるのか!?」
怒鳴りつけて俺は、王城の中の一室、魔法の研究が行われている部屋のドアを乱暴に開いた。
そこにいた連中が、俺に振り向く。
突然俺が怒鳴り込んで来たんだ。誰もが驚いて目を丸くしている。
だが、構わない。
そんなことより、今はフィルロファルに何があったのか、問いただしたい。
俺は、そこにいたデペンフィトに詰め寄った。
「貴様……どういうつもりだ?」
「なんのことです? 公爵家といえども、このような真似は……!!」
俺に胸ぐらを掴まれ、その男の表情に怯えが混じった。
だが、俺は余計に苛立った。
「よくそんなことが言えたな……貴様の部下どもから聞いたぞ。フィルロファルの処遇に関する指示は無視しろと……俺が送ったものも、そんなものは彼に与えるな、手続きが行われたことはもみ消せと言われたと、すでにいくつも証言が取れている……」
「はっ……!?」
あからさまに、顔色が変わった。単純な奴だ。
しかし、そんな仕草ですら、俺の怒りを駆り立てる。それだけ驚くということは、まさか俺が気づくとは思っていなかったのだろう。
馬鹿にするにも程がある……俺のことを舐めているのか。
いや、むしろ公爵家が馬鹿にされているのかも知れない。どちらでもいい。許しておけない。
「貴様に従うことで、それ相応の報酬を受け取れたと、貴様の取り巻きどもから証言が取れている。砦に送るはずのものの横領を許可したのは、貴様だな?」
「ま、待ってください!! 一体なんのことだか……お、俺は本当に、何もっ……何も知りませんっっ!!」
「今更とぼけても、俺が納得すると思うのか?」
この男の周りにいた取り巻きたちは、すでに捕らえてある。そして、そいつらに何をしたのか尋ねたら、簡単に吐いた。脆いものだ。
「得られた証言をもとに、指示の内容も、奪われたものがどこへ行ったのかも調査した。俺を舐めるなよ……貴様が指示を出すところも魔法で記録してある。今すぐにでも、俺はその映像を披露できるぞ」
「ひっ……!!」
敵わないと悟ったのか、その男の顔が青くなる。その上、ずいぶん震えていた。
どうせ、この男だけじゃない。こんな小物程度に、これほど大それたことができるはずがない。ふざけやがって……俺が必ず拘束してやる。
「貴様ら……公爵家を敵に回して、ただで済むと思うなよ……」
「ま、待ってくださいっっ!! 公爵家を敵に回すなどっ……俺たちは、ただっ……公爵家のことを思って……あの男の本性を暴きたかっただけです! あの男は、公爵家には相応しくないと思って…………」
「なに……?」
「だ、だって、考えてもみてください! そもそもあの男は、ルイルット子爵家が公爵家に無理矢理押し付けたような婚約者候補ではありませんか!! 子爵の屋敷でも、役に立たないどころかその悪辣な振る舞いを咎められ、ひどく虐げられていたと聞きました!! そんなものが、あなた様の一族にふさわしいはずがありません!! 誰もがそう噂していたではありませんか! 知っていたはずです! あなた様だって、そんなものとの婚姻を、なんとも思わないのですか!? ルイルット子爵家でなくとも、公爵家との婚姻を望む一族はいくつもあるのですよ!? あんな無能っ……!」
「黙れっっ彼を侮辱するなっっ!!」
カッとなった俺の拳が、そいつを殴り飛ばす。
周囲にいた奴らが悲鳴をあげたが、俺の耳には入ってこなかった。
知っていたか、だと? 知っていた……
俺も彼も、貴族だ。婚約は一族が決める。言うなれば、仕事上の契約と何も変わらない。彼もそれは理解していたはずだ。俺はそう思って、それ以上のことを考えようとしなかった。
彼はこんな理不尽な婚約のために、公爵家を立てるため、俺たちの名を汚すことがないように、いつも、そんなふうに振る舞ってくれていたのに。
ずっと、こんな噂を流されながらも、俺を支えようとしてくれていたのか……
俺と彼なら、どちらかと言えば、彼の方が不本意だっただろう。俺といれば、王城の陰謀に巻き込まれて、その身が危険に晒されるかもしれないのだから。一族のために嫁ぐにしても、もっといい相手がいたはずだろう。少なくとも、毎日安心して暮らせるような。
それなのに……俺と共にいてくれたのか……
あの砦で、あんな扱いを受けながら、俺のことを気に掛けてくれていた。それなのに……
俺が甘かった。俺との婚約の話が持ち上がった時点で、俺と公爵家を取り巻く陰謀に巻き込まれると分かっていたはずなのに、幽閉された彼がどうなっているのか、ろくに確認もしなかった。彼を蔑ろにしたのは、俺だ。
俺の甘さがしでかしたことなら、俺が処理するべきだ。
俺は、デペンフィトの襟元を強く掴んだ。
「…………これを企んだ連中は、全員必ず滅ぼす……覚悟しておけ」
「ひっ…………」
そいつは、恐れのあまりなのか、その場で怯えた目をして震えていた。
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