僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐

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18.お前を探していたんだ!

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 いくつもキノコを集めながら歩いていたら、あの陣地があったあたりが見えてくる。

 この辺に、依頼にあった、人を襲う魔物の植物、ないかなー…………

 周囲を警戒しながら歩いていく。そばにレオトウェルラレット様もいてくれて「注意しろよ」って言ってくれた。

 陣営はすでに引き払った後で、そこにはただの山の中の穏やかな風景が広がっている。

 木々の葉が風で揺れて、野草が花を咲かせていた。

 風が気持ちいい。

 暴走した魔力が生み出すものや、あの時暴走した魔法の道具の残りなんかは、何一つ見当たらない。他に怪しいものもないし……

 もしかして、当てが外れたかな?

 そんなことを考えながら、キョロキョロしつつ歩いていくと、木の影にきのこを見つけた。

 やったぁあ!! 今日はたくさん塩焼きを作れそう!!

 急いで駆け寄る。

 すると、担いだカゴから何か音がした気がした。

 キノコとか果物とか野草がたくさん詰まったカゴから、バサって、飛び込むような音。

 え……? え!?? な、なんの音!?? もしかしたら、小さな魔獣でも飛び込んできた!??

「わっ……! うわっっ……!!」

 びっくりした!

 かごをのぞいたら、僕がとったキノコの中から、小鳥くらいの大きさの小さな竜が、ぴょこっと顔を出した。

 え?? え!?? な、なんでっ……なんでこんなところに、竜が??

 レオトウェルラレット様も驚いている。

 この辺りに竜が住んでいることは知っている。近くの街にもたくさん住んでいるし、ここからは少し離れているけど、竜族が住むお屋敷があるらしい。

 だから、この辺を竜がうろついていても、おかしくはないんだけど……

 ……だけど、この竜……どこかで見たような気がする……

 レオトウェルラレット様も同じなようで、彼は、かごの中の竜を見下ろして言った。

「なあ……この竜、どっかで見たことないか?」
「……は、はい……」

 うーん……えーっと……

 あ、あれ??

 僕は、竜を見下ろしてたずねた。

「あなた……たしか…………あの晩、逃げて行った竜ですよね?」

 思い出した。ここに陣営があって、僕がレオトウェルラレット様を担いで、宰相様の部隊に助けを求めに来た日に会った竜だ。魔法の暴走に巻き込まれていたところを、僕が魔力を抑えて、その間に逃げて行ったはず。

 よかった……無事だったんだ。

 無事はいいんだけど、なんで逃げて行った竜がまたここにいて、しかも僕の大事なきのこのかごの中に入ってるの!?

「あの……ここで何をしているんですか?」

 カゴの中の竜に尋ねるけど、まるで聞いてないみたいで、きのこを一口かじってる。

 食うなよ……僕のきのこだぞ。

 そして竜は、僕に見つかったことにやっと気付いたようで、僕とレオトウェルラレット様を順番に見て、僕を指差した。

「あっ……お前っ……! お前だ!! あの晩、僕を助けた奴!」
「え…………?」
「お前、すごいね。あの時僕、魔力に囚われて動けなくなっていたんだ。お前のおかげで助かったよ」
「僕はただ……暴走した魔力を抑えただけです」
「それでも、助かったよ!」

 竜は僕に、すごく人懐こく笑う。

 可愛らしくて、元気そうだ。

「無事でよかったです。えっと…………」
「何?」
「えっと……ここで何をしていたんですか? あの日も……」

 たずねると、小さな竜は胸を張る。

「あの日は、この辺りに王国の魔法使いたちが集まっていただろ? だったら絶対、暴走を抑える魔法の道具も準備してるんじゃないかなーと思って、調べに行く途中だったんだ!」
「……え……調べに行くって…………」
「そしたら、酔った奴らが魔法を暴走させて、僕まで暴走した魔力に襲われてさ……びっくりしたよ! 僕、巻き込まれて動けなくなったんだよ! 気をつけてもらわないと!!」
「す、すみません……」

 つい、謝ってしまう。

 すると、レオトウェルラレット様に「何謝ってるんだ」と言われてしまった。

 な、なんでだろう…………僕が怒られたような気がしたんだ。

 竜が羽を広げ牙を剥く。その体の周りには、どす黒い魔力が煙のようにまとわりつき、ひどく不気味に見えた。

 竜の体の魔力が増幅していっている。おそらく、いつでも強力な魔法が放てるように。戦闘態勢ってやつだろう。

「やはり、王国は魔力を暴走させる……悪い奴らばっかりだね……」
「え…………? そ、そんなことはありません! こっ……この前の陣営での爆発の時は、そのっ……宰相様が留守でっ……! 隊長もいなかったんです!! だからっ……お、王国の部隊が、いつもそうしているわけじゃありません!!」

 つい、口調が強くなってしまった。

 部隊のみんなが頑張っていることを、僕は知っているし、この前は、確かにあんな風だったけど、だからって、何もかも全部否定されたみたいで嫌だったんだ。

 僕は王城が嫌いだし、そこでの生活には二度と戻りたくない。それでも、部隊のみんながここや王都の安全を守るために頑張ってくれていることは知っている。

「この前は、宰相様も隊長もいなかったんです! 隣国からの使者が急に来たらしくて、王都に帰らざるを得なかったみたいで……だからっ……!」
「……宰相様…………? あーー、ロステウィスかっっ!!」
「知ってるんですか?」
「うん……もちろん。口が悪くて態度悪い公爵家の次男だろ?」
「……えっと…………」

 口が悪くて態度悪い?

 そうだったかな??

 思い出そうとしても、僕の記憶にある宰相様って、僕となんてほとんど話さなくて、いつだって僕に背を向けているか、横を素通りしていくだけ。

 夜会のときも、そうだった。

 あの時も僕、宰相様に久しぶりに会うことになって、ひどく緊張していたんだ。いつも僕はそうで、宰相様に会う時は、すくみ上がっているようだった。どんな態度だったかなんて、あんまり覚えてない。ただ、僕とは目も合わせてくれなかったことくらいしか、思い出せない。

 竜は、僕を見て、首を傾げた。

「お前は何? あいつの知り合い?」
「え……? えっと……知り合いというか……宰相様は、この国の宰相で…………僕は王家に仕えていたので知っている…………ような感じです…………」

 僕ら二人の顛末は話したくなくて、そう言った。

 すると竜は、僕を睨みつけて言う。

「あの、魔法の道具が暴走した日に、お前は暴走した魔力を押さえ込んだ……それに、あの砦でたくさん魔法の道具を修理してるだろ?」
「へ!?? あ、はい……」
「あの砦、ずっと放置されていたのに……」
「それは…………確かにしていますが……」
「あの魔力を押さえ込むなんて、普通できない……きっとお前こそ、暴走した魔力を抑え込む、暴走魔力の使い手に違いない……!」
「え…………」

 なんか訳わからないことを言い出した……

 だけど竜は、せっかく僕がとったキノコの上に立って、胸を張る。

「お前に会いたかったんだよ! 暴走、いつでも抑えられるんだろ!? すごい魔法使いだ!」
「な、なにそれっ……! 僕っ……そんなの知りません!!」
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